成績概要書(平成7年1月)
1.課題の分類
2.場所名 北海道立中央農業試験場
3.新品種候補名 加工用トマト「NDM051」

4.来歴
 「NDM051」は、日本デルモンテ株式会社において、ジョイントレス果柄を有し、省力栽培に適し、多収で、加工用として果実品質に優れ、かつ萎ちょう病(J1)及び半身萎ちょう病に抵抗性を有することを目標に、1985年より育成を開始し1990年に育成を完了した単交配一代雑種である。両親系統は、種子親が「8358」、花粉親が「8778」である。本系統は、北海製罐株式会社によって本道に導入され、1992年から1994年の3年間、試験機関及び現地において適応性の検定を実施してきた。

5.特性の概要
 (標準品種:「ふりこま」;一斉収穫用品種。対照品種:「KRN2011」;手取り収穫用品種)
 特徴:機械化・一斉収穫に適し、規格内票率が高く、多収で、高品質。輸入適性が高い。
(1)植物体特性芯止り型で、収穫時の株の拡がりは130㎝〜140㎝と「ふリこま」よりやや大型で、「KRN2011」より小型。着果性は「ふりこま」より良好。熟期は「ふりこま」よりやや早く、「KRN2011」とほぼ同じ。
(2)果実特性1果重は「ふりこま」より大きく「KRN2011」より小さく50〜80gで、やや縦長の球形である。裂果の発生は「ふりこま」と同程度に少なく、実用上問題ない。
(3)収量性「ふりこま」に比べやや早生であるため、過熟による腐敗果の発生率がやや高くなる場合があるが、未熟果率は低く、規格内果率が高い。規格内収量は「ふりこま」に比べ極く多収で、多収品種である「KRN2011」とほぼ同程度。
(4)一斉収穫に対する適性4日毎収穫における規格内収量を100とした時の一斉収穫における同収量は74であり、「ふりこま」の48に比べて大きく、また、一斉収穫における規格内率が「ふりこま」より高いことから、一斉収穫に対する適性は「ふりこま」より高い。
(5)機械収穫に対する適性「ふりこま」に比べ、果実がやや硬いことから収穫機械による巣実の損傷をやや軽減できる。また、機械収穫作業時間は「ふりこま」の50%で、へた着き果率も「ふりこま」に比べてやや低い。したがって機械収穫に対する適性も「ふりこま」より高い。
(6)輸送適性収穫物の輸送による損傷の程度は「ふりこま」と同程度に極く少ないため、輸送適性は「ふりこま」と同程度に高い。
(7)加工ジュース特性「ふりこま」より色調がやや劣るが、成分的にやや優れるため、ジュース特性としては「ふりこま」と同程度の高品質である。また「KRN2011」と比較すると成分、色調ともに優れる。
(8)総台機械化・一斉収穫に適し、多収で高品質であるため、省力、低コスト、高品質生産が期待できる。また、輸送性にも優れるため、比較的遠距離の輸送も可能である。しかし一斉収穫時の腐敗果率がやや高くなる場合がある。

6.普及対象地域における試験成績概要

(1)一斉収穫における収量等
場所名 品種名 規格内収量(㎏/10a) 同左比(%) 規格別果数率(%) 平均
一果重
(g)
平成4 平成5 平成6 平均 平成4 平成5 平成6 平均 規格内果 未熟果 腐敗果
中央農試 NDM051 4529 4078 3704 4104 238 197 179 204 55 23 22 57
ふリこま 1901 2071 2074 2015 100 100 100 100 43 30 27 34
KRN2011 5383 3130 3111 3875 283 151 150 192 40 27 33 115
富良野市山部 NDM051 3917 1293 2215 2475 150 130 76 114 35 41 24 58
ふリこま 2604 994 2909 2169 100 100 100 100 36 48 16 38
KRN2011 4894 1867 3189 3317 188 188 110 153 39 36 25 93
美瑛町 NDM051 2650 2273 639 1854 264 167 167 203 15 55 30 75
ふリこま 1004 1359 383 915 100 100 100 100 9 63 29 46
KRN2011 3384 2114 436 1978 337 156 114 216 13 47 41 128
共和町 NDM051 5256 6361 6202 5940 158 332 220 221 60 22 18 79
ふリこま 3334 1917 2815 2689 100 100 100 100 39 48 13 51
KRN2011 5652 6872 6530 6351 170 358 232 236 48 27 26 166
北海製罐
研究所
NDM051 4849 7357 5097 5768 422 188 179 219 39 38 23 79
ふリこま 1150 3904 2847 2634 100 100 100 100 26 56 18 45
KRN2011 2738 3543 5212 3831 238 91 183 145 28 37 36 144
平 均 NDM051 4240 4272 3571 4028 212 208 162 193 41 36 23 70
ふリこま 1999 2049 2206 2084 100 100 100 100 31 49 21 43
KRN2011 4410 3505 3696 3870 221 171 168 186 33 35 32 129
注)規格別果数率、平均一果重は平成4〜6年の3カ年平均。

 

(2)機械化・一斉収穫適牲、輸送適性
品種名 果実
堅さ
圃場落果a
率(%)
へた着きa
果率(%)
規格内収量c
比(%)
機械収獲作業b
時間(/10a)
輸送により破裂a
した果実割合(%)
NDM051 1.6 2 2 74 6.1 2
ふリこま 2.0 1 7 48 12.2 2
KRN2011 2.8 18 85 46 44
注)果実堅さ:中央農試、平成4〜6年の3年間の平均値、1(堅い)−3(軟)。
  a:平成6年中央農試
  b:平成6年北海製罐
  c:一斉収穫/4日毎収穫、平成4〜6年北海製罐

 

(3)加エジュース特性
糖度Brix 酸度(%) pH 色調 Lb/a
6.4 0.41 4.36 13.0
6.1 0.38 4.37 12.6
6.0 0.41 4.30 14.5
注)値は、平成6年美瑛を除く平成4〜6年の現地試験、
  北海製罐及ぴ平成6年中央農試の平均値。

 

7.普及対象地域及び普及見込み面積
  加工用トマトの無支柱栽培が行なわれている地域に加え、新たな栽培の拡大が見込まれる地域。100ha。

8.保有種子量  30㎏(約375haに対応できる種子量)

9.栽培上の留意点
(1)一般の無支柱栽培における加工用トマト栽培に準ずる。
(2)一般に一斉収穫は、降雨等で収穫が遅れると、過熟による腐敗果の発生が懸念されるので、収穫は
 主枝第一花房の果実に腐敗が見えはじめたら行う。