1.課題の分類
2.場所名  農林水産省北海道農業試験場
3.系統名  ニホンナシ「67−17−22」

4.育成経過
 昭和42年に「新世紀」を母とし、「北甘」を父として交配した実生樹75個体から選抜された。昭和49年に初結実し、同50年に品質が優れていることから選抜された。同61年から地域適応性検定試験を実施し、今日に至っている。

5.特性の概要
(1)「北甘」に比べての主な長短所(○印長所、×印短所)
系統名 樹姿 樹の生育 裂果 さ  び 成熟期 収量 果重 糖度 リンゴ酸 食味
67-17-22 中間
良い

減少
×果梗周辺わずか有り 同じか3日遅い
多い

大きい

高い

高い

高い
備考)樹勢、耐寒性、外観、果芯の大きさ、肉質、貯蔵性はほぼ同じ

(2)樹の特性樹勢は強く、樹姿は直立と開張性の中間で、主枝はほぼ45度の角度で伸長し、整枝・せん定がしやすく、樹形の維持が容易である。枝の発生は密で、新悄の伸びが短く、枝全体が均一な伸びをする。新梢の太さは中程度。短果枝の着生は多く、中果枝(10〜20㎝)の着生も「北甘」に似てやや多い。腋花芽の着生は中程度。耐寒性はやや強で、「北甘」並である。樹の生育は「北甘」より優れている。

(3)葉及び花の特性嫩葉(若葉)は褐色に近い黄緑色になる。成葉は卵形に近く小さい。先端の角度は中程度で、基部は丸みを帯びている。葉縁状態、鋸歯の角度はともに中程度で、鋸歯の大きさは小さい。葉柄の長さは4.5㎝で「北甘」よりわずかに短いが、品種全体のなかでは中位である。蕾はほとんどが白色で1花叢の着花数は6.9個。花弁は円形で切り込み、大きさともに中位、枚数は5.1枚。葯は紅色で花粉は多い。発芽期は4月26日で「北甘」より1日早く、開花時期は「北甘」とほぼ同時期である。中央農試での発芽期が5月6日で「北甘」より2日早く、開花始、満開期は同時期か1日遅い。

(4)交配和合性交配和合性は「北甘」、「北星」、「北豊」、「身不知」、「バートレット」、「ブランディワイン」で認められたが、「長十郎」の組合せと「北星」及び「身不知」を母とした場合は本年は結実率が低く、再検討する必要がある。自然結実歩合は39.2%で他の主要品種より高い。

(5)成熟期(収穫時期)果皮が黄色を帯びて、離層が形成され、もぎやすくなったときが収穫適期で、その時期は9月下旬〜10月上旬であり、「北甘」とほぼ同時期か3日くらい遅れ、早生種の晩に属する。あまり遅すぎると水浸状になることがある。

(6)収量早生種の晩としては多収性であり、「身不知」より少ないが「北甘」より多い。

(7)果実の特性及び品質調査果実の大きさは平均326gで「北甘」より大きく、揃いも良好である。果形は扁円形で成熟すると黄緑色になる。果面のさびは少で、果点は小さく、外観良好。裂果は「北甘」より極めて少ない。果芯の大きさは「北甘」に似て小さい。果肉硬度は「北甘」よりわずか硬い。肉質はやや密で、品質良く、糖度、リンゴ酸ともに「北甘」より高い。また、両者の調和が良く、食味は良好である。「身不知」に比較すると香気は少ないが、肉質、果汁、糖度、リンゴ酸など品質が著しく勝り、食味は良好である。中央農試、現地でもほぼ同様の結果であるが、中央農試ではさびが多となっている。さびは「新世紀」に似て果梗の周辺に外観を損なわないさびが発生することもある。

(8)貯蔵性普通貯蔵で11月2日(収穫後35日間)ころまで保蔵ができ、9月下旬〜10月上旬に収穫される品種の中では長い方である。収穫後ただちに冷蔵すると12月から翌年の1月ごろまで保蔵できる。

(9)病虫害の発生胴枯病らしい症状がわずかにみられたことがあるが、それ以外の病虫害は発生していない。

 

6.試験成績概要

第1表  北海道農試(札幌市羊ケ丘)の成績
系統・品種名 樹勢 樹姿 耐寒性 発芽期
(月日)
満開期
(月日)
収穫期(月旬) 裂果率% 収量(kg) 果形 果皮の色
67-17-22 ヤヤ強 4.26 5.22 9下〜10上 4.9 97.4 扁円 黄緑
北甘(対照) ヤヤ開張 ヤヤ強 4.27 5.22 9下〜10上 35.8 39.4 扁円 黄緑
身不知 開張 4.21 5.20 10中〜下 1.9 146.3 紡錘 黄緑

系統・品種名 果面さび 果面粗滑 果実重(g) 果芯の大きさ 肉質 硬度 糖度 リンゴ酸
(g/100ml)
食味 貯蔵性
67-17-22 326 0.39 ヤヤ密 9.2 12 0.23 11月上旬
北甘(対照) 260 0.39 ヤヤ密 7.7 11.3 0.17 ヤヤ良 11月上旬
身不知 401 0.39 13.5 11.7 0.13 12月中旬
注(1)発芽期、満開期、収穫期、裂果率以外の果実特性は平成2〜6年の平均
  (2)硬度はマグネステーラー型果実硬度計7/16インチプランジャー使用の値
  (3)収量は4〜9年生の一樹当り累計
  (4)果芯の大きさは果芯の横径と果実の横径の比

 

第2表  道立中央農試(長沼町)の成績
系 統
品種名
発芽期
(月日)
満開期
(月日)
収穫
月日
一果
平均重(g)
硬度 糖度 リンゴ酸
(g/100ml)
概    評
67-17-22 5.6 5.24 9.27 269 5.4 11.3 0.22 果皮淡緑〜黄緑、さびやや多
甘味多、多汁で肉質良
北甘(対照) 5.8 5.23 9.27 253 4.6 10.9 0.12 果皮淡緑黄〜黄緑、さび中、裂果多
多汁、肉質良、食味やや良
注(1)生態的特性は平成3〜6年の4ケ年平均、果実特性は平成2〜6年の5ケ年平均
  (2)硬度はマグネステーラー型果実硬度計5/16インチプランジャー使用の値

 

第3表  現地試験における成績
場所 品 種
系統名
収穫
月日
調査果重
(g)
硬度
(lbs)
糖度
(%)
リンゴ酸
(g/100ml)
概    評
旭川 67-17-22 10.3 465 9.5 11.8 0.25 1樹の収量7年生で10.1kg、大きさ大
果汁多、甘味多く、酸味との調和良い
北甘(対照) 10.2 357 7.9 11.0 0.16 1樹の収量7年生で8.8kg、大きさ中、裂果中
甘味やや多、酸味中、食味やや良い
増毛 67-17-22 10.6 393 9.2 12.2 0.23 大きさ中、さびなし、果形及び果実の揃い良好
外観良、肉質良、果汁多、甘味多、酸味中、食味良い
北甘(対照) 10.10 345 8.2 11.3 0.16 大きさ中、果形及ぴ外観良、甘味やや多
酸味やや少〜中、食味やや良
注(1)旭川:旭川市神居古潭増毛:増毛町暑寒沢
  (2)平成5〜6年の2ケ年平均
  (3)硬度はマグネステーラー型果実硬度計7/16インチプランジャー使用の値

 

7.用途、普及対象地域及び見込み面積
  生食用。道内ナシ栽培地帯。観光果樹園などへの新植及び既存品種の代替約50ha。

8.保有種苗
  苗木9本。穂木約100本。

9.栽培上の留意点
 (1)収穫が早すぎると甘味が不足するので、果皮が黄緑色になってから収穫する。
 (2)着果過多は果実が小さくなるので、やや強めの摘果を行なう。