成績概要書(平成7年1月)

1.課題の分類  北海道 野菜 育種 プロッコリー 品種比較
2.研究課題名  夏秋どりブロッコリーの品種特性調査
3.予算区分  道単
4.研究機関  平成3年〜6年
5.担当  上川農試研究部園芸科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 ブロッコリーは、比較的冷涼な気候を好み北海道での夏秋期の栽培は適している。しかし、近年急速に普及した作物であり、北海道での品種特性は明らかでない。そこで夏秋どりブロッコリーの品種特性調査を調査した。

8.試験研究方法
(1)供試品種・系統数および供試作期
   平成3年:供試品種・系統数18×作期3(播種期:5.27、6.17、7.6)
     〃4年:供試品種・系統数19×作期4(播種期:5.14、6.5、6.16、6.26)
     〃5年:供試品種・系統数18×作期3(播種期:5.11、6.1、6.21)
     〃6年:供試品種・系統数18×作期2(播種期:5月下、6月中旬)
(2)試験区設計…1区20株(4.8㎡)、乱塊法2反復
(3)耕種概要①育苗方法:V4ペーパーポット、育苗日数20〜33日(葉数2〜3枚目途)
        ②栽植密度:417株/a、条間60㎝×株間40㎝
        ③施肥量・方法:道施肥標準準拠、全量元肥

9.結果の概要・要約
 平成3〜6年の4年間に作期2〜4で18〜19品種・系統を供試し品種特性を調査した。4年間とも供試した品種・系統の特性は以下のようであった。
【1〟生育、生育日数】
 収穫時の生育量では、「緑帝」が大きく、次いで「T-597」「トリスタン」であった。生育日数により早晩性で群分けを行うと、早生群は生育数83日以内で積算温度(日平均気温)1,500℃以内、中生群は生育日数84〜90日以内で積算温度1,500〜1,600℃、晩生群は生育日数90日以上で積算温度1,600℃以上であった。
【2〟収量】
 規格内花蕾数は、「ゆとり1号」が最も多く次いで「ハイツ」・「直緑28号」であった。これらの品種は、障害花蕾の発生が少なく規格内割合が高かった。
【3〟障害花蕾の発生】
 障害花蕾の中では、リーフィーの発生が最も多かった。品種・系統の中では、「しげもり」で最も多く、次いで「かさもり」「T−597」「緑帝」「海嶺」であった。逆にリーフィーの発生が少ないのは、「ゆとり1号」「ハイツ」「むらくも」であった。不整形花蕾は、「プライム」「あつもり」「緑嶺」で多かった。軟腐病の発生は、早晩性が早生ほど多くなる傾向があり、「海嶺」「トリアノン」「むらくも」で多く、逆に「あつもり」「直緑28号」「ハイツ」「しげもり」で少なかったが、全く発生しない品種・系統はなかった。
【4〟花蕾の形質】
 花蕾重は、「しげもり」「緑帝」で大きく「海嶺」「あつもり」で小さかった。外観品質は、「ハイツ」が良く次いで「緑帝」「あつもり」「しげもり」「緑嶺」で、「プライム」「トリアノン」で悪かった。花蕾の色調では「直線28号」「海嶺」「ゆとり1号」で色相が大きく緑色度合いが高かった。収穫後の退色は、「直線28号」「ゆとり1号」で色相の減少が少ない傾向であった。
【5〟まとめ】
 総合的にみて、「ハイツ」「ゆとり1号」が良好であった。「ハイツ」は各年とも外観品質が安定しており、多収であった。「ゆとり1号」は、障害花蕾の発生が少なく規格内花蕾数が多かったが外観品質がやや劣った。「しげもり」「緑嶺」は外観品質が「ハイツ」と同程度に優れた。

 

10.成果の具体的数字

表1  夏秋どりブロッコリーの品種特性表
品種
または
系統名


収穫時
総重比
(%)
生育
日数
(日)
規格内 障害発生割合(%) 花蕾

形状
花蕾

(g)
特性指数評価
花蕾
数比
(%)
収量
(kg/a)
不整形
花蕾
リーフィー キャッツアイ 軟腐病 障害 収量 外観
品質
花蕾
の色
トリアノン 88 78 92 66 3 7 0 8 平〜丸 199 3 3 2 2
かさもり 105 83 84 72 2 20 0 2 丸〜平 230 1 2 3 3
海嶺 92 83 81 56 2 17 4 10 186 1 2 3 4
あつもり 88 84 87 59 5 8 0 0 丸〜平 188 3 2 3 2
ハイツ (1011) 85 (368) 81 3 2 1 1 丸〜平 217 4 3 4 3
むらくも 106 85 86 66 1 2 8 7 平〜丸 208 3 2 3 3
プライム 101 86 90 65 8 5 1 5 平〜丸 196 3 3 2 3
ゆとり1号 107 87 104 80 1 1 2 1 平〜丸 211 4 3 2 4
T-597 121 88 87 68 1 18 0 1 丸〜平 208 3 2 3 4
しげもり 116 88 71 68 1 33 0 1 250 1 2 4 3
緑嶺 116 88 85 68 4 15 0 2 212 3 2 4 3
トリスタン 120 89 88 71 2 12 0 3 209 4 2 3 3
緑帝 147 93 84 71 3 17 2 2 240 2 3 3 3
直縁28号 107 93 97 76 1 7 0 0 平〜丸 207 4 3 3 4
(注)収穫時総重比、規格内花蕾数比は「ハイツ」比、「ハイツ」欄は実数(g/株、個/a)

 

 

11.成果の活用面と留意点
 (1)ブロッコリー品種選定上の資料となる
 (2)品種選定に当たっては、市場性も考慮すること

12.今後の問題点
 (1)内部品質の品種間差異の検討
 (2)軟腐病抵抗性品種の検索
 (3)省力化(一斉収穫)に適した品種の検討