1.課題の分類 2.研究課題名 ヤマノイモ遺伝資源の収集と特性調査(ヤマノイモの特性調査と増殖法) 3.予算区分 道単 4.研究期間 平成3年〜6年 5.担当 十勝農試研究部園芸科 6.協力・分担 なし |
7.目的
ヤマノイモ属遺伝資源を収集・保存し、その一時特性を調査するとともに、育種的利用のための調査法を検討する。
8.試験研究方法
(1)遺伝資源の収集と保存
ⅰ.収集法:購入(種苗業者、青果物)、導入(他研究機関、育成者、生産者)、採集など
ⅱ.保存法:加温栽培施設内での栄養体保存、試験管内保存
(2)遺伝資源の特性調査:野菜品種特性調査分類基準(日本種苗協会編、昭和58年)に準ずる
(3)ヤマノイモモザイクウイルス保毒検定収集遺伝資源のうち材料採取可能な約110点を供試し、ELISA法による検定の可否を検討する
(4)ヤマトイモの栽培適応性に関する試験(平成5年〜6年)目的:収集遺伝資源の栽培導入の可否を検討する。供試材料:ヤマトイモ処理区別:種いもの大きさ3×栽植密度3×不織布トンネルの有無
(5)ナガイモの品質測定法:特性調査のための品質に関する測定法を検討する。
(6)ナガイモの異形いもの発生:異形種いもの後年産いも形状に及ぼす影響を検討し、形状特性調査のための資料とする。
9.結果の概要・要約
(1)ヤマノイモ(Dioscorea)属遺伝資源を国内外から8種2種間雑種計168点を収集し現在150点を保存している。
(2)収集株は一時的に隔離ハウスまたは温室内で栽培し、野菜品種特性調査分類基準に準じて一次特性を調査した後、茎頂培養により試験管内保存に移行した。
(3)現状では、YMVのELISA法による実用的な精度の検定は難しいものと考えられた。
(4)ヤマトイモの寒地での栽培は安定性に欠くが、ナガイモのネット栽培資材を流用し、種いも重60g、睡幅70㎝+通路110㎝で株間20㎝程度のの裁植密度で栽培可能であった。
(5)ナガイモのとろろは粘りの強いものが好まれ、大きないもより小さないもが、尻部よりも首部の粘りが強かった。粘りは栽培地間や年次閥で大きな差異があった。乾物率は粘りを推定する指標として期待できる。
(6)ナガイモの異形いもの発生について、「細長いも」は翌年以降も「細長いも」を発生する可能性があり、採種栽培では淘汰すべきであり、また、特性とみなせるものと思われた。「平いも」等、その他の異形種いもの後年産いも形状には一定の影響を認められず、これらの異形を形状特性として取り扱うことはできないものと思われた。
10.成果の具体的数字
1)遺伝資源の収集と保存、特性調査種名 | 作物名 | 保存点数 | いもの形 | 雌雄性 | 培養の難易 | モザイク病感受性 |
D.opposita | ナガイモ | 44 | 長紡錘形 | ♂ | やや難 | CYNMV |
トックリイモ | 7 | とっくり型、塊型 | ♂ | やや難 | CYNMV | |
ヤマトイモ | 3 | 円筒型、扇型 | ♀ | 易 | YMV | |
ツクネイモ | 12 | 球型 | ♀ | 易 | YMV | |
D.japonica | ジネンジョ | 16 | 細長型 | ♀♂ | 易 | YMV |
D.jap.×D.opp. | 1 | |||||
その他 | 64 | |||||
未同定 | 3 | |||||
計 | 150 |
2)ヤマトイモの栽培適応性に関する試験(2ヶ年平均)
種いも重 (g) |
株間 (㎝) |
総収量 (㎏/a) |
規格内収量 (㎏/a) |
平均一本重 (g) |
規格内割合 (%) |
収穫/栽植数 (%) |
|
ネット | 60 | 10 | 249 | 166 | 189 | 62 | 123.9 |
15 | 214 | 128.0 | 254 | 47 | 132.1 | ||
20 | 141 | 116 | 273 | 65.0 | 112.0 | ||
トンネル | 60 | 10 | 221 | 118 | 187 | 47 | 113.8 |
15 | 146 | 86.9 | 196 | 50 | 121.5 | ||
20 | 113.0 | 82.0 | 190 | 59 | 129.3 |
3)ナガイモの異形いもの発生
平成2年の形状 | 平成6年の形状(%) | |||||||||||
平いも | 曲がり | 分岐 | コブ | 細長 | 複数いも | |||||||
無 | 有 | 無 | 有 | 無 | 有 | 無 | 有 | 無 | 有 | 無 | 有 | |
平いも | 61 | 39 | 96 | 4 | 89 | 11 | 82 | 18 | 100 | 0 | 71 | 29 |
細長 | 100 | 0 | 85 | 15 | 100 | 0 | 100 | 0 | 0 | 100 | 47 | 53 |
11.成果の活用面と留意点
(1)ヤマノイモ育種研究の参考とする。
(2)ヤマトイモ、ツクネイモはヤマノイモえそモザイクウイルス(CYNMV)には抵抗性であるが
保毒し、ナガイモに対して感染源となるので、既存ナガイモ産地への導入にあたっては注意する。
12.残された問題とその対応
(1)収集遺伝資源のウイルスフリー化とウイルス簡易検定技術の確立
(2)収集遺伝資源の試験管内保存技術の確立
(3)交雑による新品種の育成
(4)ナガイモの内部品質評価法の確立
(5)ナガイモの、いわゆる「形状選抜」法による採種体系の再評価