成績概要書(平成7年1月)
1.課題の分類
2.研究課題名  ナガイモの小切片増殖法(ヤマノイモの特性調査と増殖法)
3.予算区分  道単
4.試験期間  平成3〜6年
5.担当  道立十勝研究部園芸科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 ナガイモの小切片およびムカゴを利用した青果用種いも増殖法を検討する。

8.試験研究方法
【ムカゴ増殖法に関する試験】
 (1)マルチの施用に関する試験(平成3年)
  マルチの種類4(黒マルチ、シルバーマルチ、透明マルチ、無マルチ)
   種いも重:150g、栽植密度:463株/a、ポール支柱、1区5.4㎡、乱塊法3反復
 (2)支柱の高さに関する試験(平成3年)
  支柱の高さ4(1m,2m,3m,無支柱)
   種いも重:150g、栽植密度:463株/a、菱目ネット支柱、1区5.4㎡、乱塊法3反復
 (3)全形種いも生産のためのムカゴの栽植密度(平成3、4年)
  株間4(6,9,12,15㎝)(平成3年)
   ムカゴ重:1.9g、栽植密度各1,852、1,235、926,741株/a不織布トンネル1区5.4㎡、乱塊法3反復
  株間3(3,6,9㎝)(平成4年)
   ムカゴ重:1.6g、栽植密度:各3,704、1,852、1,235、926株/a角目ネット支柱、1区5.4㎡、乱塊法3反復
【小切片利用による全形種いも生産】
 (1)マルチの種類(平成4年)
  マルチの種類3(シルバーマルチ、透明マルチ、無マルチ)
   種いも重:15g、栽植密度1,111株/a、角目ネット支柱、1区5.4㎡、乱塊法3反復
  [各処理を除く試験条件は①〜⑥共通]
 (2)栽植密度と切片重の関係(平成4年)
  栽植密度3(5,10,15㎝)×切片重3(5,15,25g)
 (3)不織布トンネルとネットの比較(平成4年)
  処理2(不織布トンネル、角目ネット)
 (4)角目ネットと菱目ネットの比較(平成4年)
  処理2(角目ネット、菱目ネット)
 (5)種いもの予措日数(平成4年)予措日数3(1,5,10日)
 (6)栽植密度およびマルチに関する試験(平成5〜6年)
  栽植密度4(5,10,15,20㎝)×マルチの種類3(シルバーマルチ、透明マルチ、無マルチ)
 (7)小切片の予措法に関する試験(平成5年)
  殺菌剤処理法5
  催芽時の水分条件8
  種いも重:15g、角目ネット支柱、50個/区、温室内、3反復
【全形種いもの生産力】
  株間3(15,20,25㎝)×種いも重8(全形30,50,70,90,110,130,150g,切りいも150g)
  角目ネット支柱、1区5.4㎡、乱塊法2反復

9.結果の概要、要約
 (1)実用に供しうる粒大、数量のムカゴを露地栽培によって得ることは困難であった。
 (2)増殖率の面からも15g程度の切片を使用することが適当であった。
 (3)不織布トンネル被覆やマルチングが新生いも肥大に効果的であったが、年次間で肥大に大きな変動があ
  り、不織布トンネルの場合はコストや除草等の管理面で不利であった。
 (4)小切片は過乾燥になりやすく、切断時に石灰を粉衣すると不定芽の形成が不良となるので、切断後に
  チウラム・ベノミル水和剤100〜200倍液に10分浸漬し、切断面をよく乾燥させた後、催芽させる。
 (5)全形種いもは複数いもが多くなる傾向にあるが、概ね100g以上で青果用種いもとして実用に供しうる。
 (6)100gに満たない全形種いもはミニサイズナガイモ用種いもとして、栽植密度を調整することにより利用
  可能である。

 

10.成果の具体的数字

表1  小切片利用による全形種いも生産〜栽植密度およびマルチに関する試験(2ヶ年平均)
処理区別 萌芽期
(月日)
収穫本数
(本/a)
いも総重
(Kg/a)
1本いも重量
(g)
欠株率
(%)
無マルチ 5㎝ 6.29 2,021 165 110 22
10㎝ 7.01 945 84 127 32
15㎝ 6.29 846 63 101 21
20㎝ 6.28 530 43 109 36
シルバーマルチ 5㎝ 6.28 1,913 206 119 32
10㎝ 6.29 1,078 124 124 39
15㎝ 6.30 498 37 138 30
20㎝ 6.28 468 46 143 42
透明マルチ 5㎝ 6.27 2,331 190 107 12
10㎝ 6.29 1,200 141 112 27
15㎝ 6.27 796 67 116 41
20㎝ 6.28 614 85 135 44

 

表2  全形種いもの生産力(2ヶ年平均)
  種いも重量
(g)
萌芽期
(月日)
収穫本数
(本/a)
総収量
(Kg/a)
規格内収量
(Kg/a)
平均1本重
(g)
株間15㎝ 30 6.17 1292 211 144 299
50 6.16 1381 270 198 330
70 6.17 1356 335 287 399
90 6.16 1327 316 275 348
110 6.16 1417 408 361 402
130 6.13 1505 428 382 388
150 6.15 1501 483 434 571
切150 6.16 1293 446 397 486
株間20㎝ 30 6.19 771 188 153 341
50 6.18 953 236 186 352
70 6.15 867 281 238 402
90 6.16 941 267 220 432
110 6.17 915 333 300 463
130 6.15 989 372 338 467
150 6.14 1037 351 293 491
切150 6.19 813 354 324 543
株間25㎝ 30 6.18 678 176 123 359
50 6.19 703 211 178 384
70 6.20 773 256 221 410
90 6.16 709 264 234 463
110 6.16 654 276 228 578
130 6.17 703 259 225 426
150 6.14 787 313 258 494
切150 6.18 637 320 281 562

 

11.成果の活用面と留意点
 (1)青果用種いもを生産するときの資料とする。
 (2)小切片を利用して全形種いもを養成する場合、栽植密度が高くウイルス病罹病株の抜き取りが困難
  であるため、アブラムシ防除を徹底する。
 (3)小切片による全形種いも養成はその年の気象条件の影響を大きく受けることに留意する。
 (4)一般にマルチングにより新生いもの肥大促進を図ることができるが、粘度が低下する傾向があるこ
  とに留意する。

12.残された問題とその対応
 (1)施設栽培によるムカゴの採取
 (2)低温寡照時のムカゴ、小切片の肥大促進
 (3)全形種いも使用時の複数いも着生の防止