成績概要書(平成7年1月)
1.課題の分類  野菜北海道野菜園芸育種野菜タマネギ・ニンジン作型・栽培型
2.研究課題名  ニンジン、タマネギの前進出荷技術(露地野菜の前進出荷技術)
3.予算区分  道費
4.試験期間  平成3年〜6年
5.担当  北見農試研究部園芸科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 ニンジン、タマネギについて通気性被覆資材を利用した簡易被覆資材(べたかけ栽培)技術の安定化による前進出荷栽培技術の安定化の資料とする。

8.試験研究方法
【ニンジン】
(1)供試品種「向陽二号」
(2)ぺたがけ資材資材1(ポリエステル系不織布)、資材2(ポリプロピレン系不織布)
(3)播種期4月下旬、5月上旬、5月下旬
(4)収穫期播種後90日目、100日目、110日目
(5)被覆期間播種直後〜30日、50日、70日
【タマネギ】
(1)供試品種「北もみじ86」(やや晩生種)、「改良オホーツク1号」(早生種)
(2)べたがけ資材資材1(ポリエステル系不織布)、資材2(ポリプロピレン系不織布)
(3)播種期2月下旬、3上旬
(4)移植期5月上旬、5月中旬
(5)根切処理「北もみじ86」倒伏揃後14日、「改良オホーツク1号」倒伏揃後7日
(6)被覆期間移植直後〜25日、35日、45日これらを組み合わせ、試験を実施した。

9.結果の概要・要約
【ニンジン】
(1)べたがけ被覆により温度上昇、保温効果が認められた。
(2)被覆により発芽が早まり生育も10日前後前進した(表1、2)。
(3)供試品種「向陽二号」では被覆により収穫期が10日前後進み収穫適期は播種後100日目からと考えら
  れた。この時期の収穫でも標準的な収穫期(播種後110日目)と変わらない規格内収量、品質
  であった(表3)。
(4)低温遭遇回避によって抽台の発生を抑える効果が認められた。
(5)被覆効果は低温時での効果が顕著であり、遅い処理期あるいは処理期間が長いほど障害を受け
  やすくなった。
(6)気温が25℃を越えると地表温度は40℃を越えることが多く。障害を受ける危険性が増加した。
【タマネギ】
(1)べたがけ被覆により温度上昇、保温効果が認められた。
(2)被覆により生育量が増加し、とくに最大葉鞘径に差がみられた。
(3)被覆により生育相は前進し、球肥大期は早生種で6〜12日、やや晩生種で4〜12日早まった。
  倒伏期についても早生種で3〜7日、やや晩生種で3〜12日早まった(表4)。
(4)一球重は被覆によって増加したが、処理開始が遅いかあるいは長期被覆した場合、一球重の低下が
  みられた(表5)。
(5)「北もみじ86」では被覆により生育量が増加するほど、除去後の低温遭遇によって不時抽台率が高まった。

 以上から、ニンジンでは播種期は4月下旬〜5月上旬まで、ぺたがけ被覆は播種直後から50〜70日(4葉〜7葉)までが適当と思われ、これらによって7月下旬〜8月上旬の早期収穫が可能であった。
 タマネギでは品種については早生で、耐抽台性の高い「改良オホーツク1号」が適していた。早期播種(3月初旬)及び早期移植(5月初旬)と、移植直後から25〜35日間のぺたがけ処理によって8月中からの早期収穫が可能と考えられた。

 

10.成果の具体的数字

表1  発芽調査(ニンジン)
年度 平3年 平4年 平5年 平6年
播種期 5.17 5.1 5.5 4.26 5.10 5.25
区分 発芽期 発芽期 発芽期 発芽期 発芽期 発芽期
無処理 6.5 5.24 5.21 5.22 5.26 6.10
処理 6.3 5.19 5.18 5.16 5.24 6.6

 

表2  生育調査(ニンジン平成6年4.26播種)草丈(㎝)
処理区分 生育日数
50日目 70日目 80日目 90日目 100日目
無処理 5.6 16.5 18.2 30.9 41.4
30日処理 7.6 18.3 23.0 32.7 41.8
50日処理 12.9 18.8 24.7 36.7 45.2
70日処理 12.9 22.5 28.3 37.4 44.0
  ** * ** ** ns

 

表3  収量調査(ニンジン平成6年4.26播種)100日目
試験区 規格内根数(本/a) 規格内収量(㎏/a) 同左比(%)
LL L M S 合計 LL L M S 合計
無処理 0 0 0 778 778 0.0 0.0 0.0 64.6 64.6 100
30日処理 0 0 111 1,600 1,711 0.0 0.0 15.4 147.8 163.2 253
50日処理 0 22 733 1,200 1,956 0.0 4.6 86.1 115.3 206.0 319
70日処理 0 0 800 1,067 1,867 0.0 0.0 111.8 101.7 213.5 330
          **         **  

 

表4  生育相経過(タマネギ平成6年)
品種 被覆
期間
肥大 倒伏 枯葉
北もみじ86 7.23 7.28 7.3 8.7 8.8 8.17 9.4 9.7
35 7.12 7.16 7.21 8.1 8.4 8.8 8.27 8.30
45 7.12 7.17 7.21 8.2 8.5 8.8 8.28 8.31
  ** * * * * * ** **
改良オホーツク1号 7.14 7.18 7.21 7.31 8.3 8.4 8.23 8.26
35 7.8 7.1 7.13 7.27 7.31 8.3 8.19 8.24
45 7.5 7.9 7.11 7.22 7.31 8.2 8.18 8.23
  ** * ns * * *

 

表5  収量(タマネギ平成6年度)
品種 被覆
期間
規格内
球重構成
(kg/a)
規格内
球重
(kg/a)
同左比
(%)
平均
一球重
(g)
規格
内率
(%)
総収量
(kg/a)
同左比
(%)
LL L大 L M S
北もみじ86 0 9 208 195 12 423 101 149 96 442 101
35 0 29 258 153 28 469 112 163 95 496 113
45 0 24 247 148 30 449 107 158 94 479 109
被覆期間             ns    
改良オホーツク1号 0 0 63 240 59 363 100 124 96 379 100
35 0 9 166 236 29 440 121 145 98 451 119
45 0 8 149 234 23 413 114 139 96 431 113
0 0 138 238 32 408 112 140 96 424 112
35 0 25 272 143 17 458 126 162 92 495 130
45 0 15 269 179 21 484 133 162 95 510 134
苗の大きさ             *   *  
被覆期間           ns   *    
注)有意性 ns:有意差なし、・:10%水準、*:5%水準、**:1%水準

 

11.成果の活用面と留意点
 1)簡易被覆による前進栽培における資料とする。
 2)気温の上がりやすい地域、圃場条件では被覆内の温度上昇が早いので、高温障害に留意する。

12.残された問題点とその対応
 1)病害虫防除及び除草法、薬剤の検討
 2)べたがけ栽培における合理的施肥法の検討
 3)高温障害対策の検討