成績概要書(平成7年1月)
1.課題の分類  野菜 花き 育種 キク 品種比較 北海道
2.研究課題名 スプレーギク(夏秋ギクタイプ)の電照栽培における品種特性
        (スプレーギクの品種特性調査)
3.予算区分  道単
4.研究期間  平成5年〜6年
5.担当  道南農試研究部園芸科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 スプレーギクの8〜9月採花を目標として、短日処理を全く省略した夏秋ギクタイプの電照栽培において各品種の適応性を検討した。

8.試験研究方法
1)供試品種数夏秋ギクタイプ27品種
2)自然日長下における開花期各品種を採種し、穂冷蔵を行い、その後無加温ハウス、自然日長下で挿し芽、
 プランターに定植し開花期とスプレーフォーメーションを調査した。
3)開花反応各品種を20℃2時間日長下で挿し芽、プランターに定植し、定植後60〜70日後に出蕾調査
 を行った。
4)電照栽培の栽培法

 栽培スケジュール
年度 加温開始 採穂用親株 切り花栽培
挿し芽
(月日)
定植
(月日)
摘芯(月日) 挿し芽
(月日)
定植
(月日)
摘芯
(月日)
消灯
(月日)
平成5年 購入時 2.10 3.10 4.1;4.20;5.11 5.31 6.21 7.5 7.30
平成6年 1.21 越年株利用 2.4;4.5;5.2 5.24 6.15 6.28 7.23
 電照法…親株の加温と同時に開始し、消灯時まで(電照時間PM9:00〜AM3:00)
 施肥量…平成5年:N、P2O5、K2O0.5、0.4、0.5/a(ロング70使用)
       平成6年:無施肥(緑肥すきこみ)
 栽植密度…1905株/a(床幅80㎝、通路60㎝、条間15㎝中1条抜き4条植え、株間15㎝)
 整枝法…摘芯3本仕立(定植後4週間後)採花株定植までの最低気温15℃

5)スプレーフォーメーションの調査方法
 A〜Dの4段階に分けた。(A:円錐(筒)形B:平形C:凹形D:頂花座止)
 AとBは商品性が高いが、CとDは商品性が劣る。

9.結果の概要・要約
【1〟自然日長下における開花期及び開花反応】
 自然日長下における開花期を平成6年に調査した結果、8月10日から10月24日であり、カタログ表示より遅い品種が多かった。スプレーフォーメーションは品種によって異なり、「メルヘン」、「ハーモニー」、「オーロラ」、「パレード」、「ゴージャス」、「ラブリー」が比較的良好であった。20℃24時間日長下で出蕾した品種が多く、これらの品種は電照下で栽培しても植物体が成熟すると花芽分化する性質をもつものと思われた。

【2〟電照栽培における定植後の生育】
 消灯前に出蕾した品種が多く、これらの品種は仕立等の作業が難しかった。

【3〟電照栽培における開花期】
 平成6年は定植を平成5年より約1週間早く行ったが、ほとんどの品種で開花始が遅かった。
 その中で「ラブリー」・「グリーンバード」は両年とも開花始が変わらなかった。この2品種は供試品種の中では比較的開花期が遅く、開花が日長の影響を強く受ける秋ギクタイプの性質が強いと考えられた。

【4〟電照栽培における採花本数及びスプレーフォーメーション】
 平成5年では「ニース」、「ケベック」はロゼット化したまま頂花が開花せず、切り花は得られなかった。開花が遅かった平成6年で、5年に比べ規格内本数が多く、2L(80㎝)の割合も高かった。両年を通じて「ゴージャス」、「オリエント」は規格外の割合が高かった。平成5年のスプレーフォーメーションはA〜Bの割合が大きく良好であったが、平成6年のスプレーフオーメーションはC〜Dの割合が大きかった。品種では「ニース」、「ラブリー」、「メルヘン」、「オーロラ」、「ファンタジー」、「ケベック」がスプレーフォーメーションは良好であり、C〜Dの発生がほとんどなかった。

 

10.成果の具体的数字

スプレーギク(夏秋ギクタイプ)の品種特性表
花色 品種名 自然日
長下の
開花期
電照栽培における特性
消灯〜
開花日数
開花始(月日) 切花長(㎝) SFのC+D割合 電照下の
出蕾状況
H5年 H6年 H5年 H6年 H5年 H6年
ゴージャス 8.17 40 9.3 9.1 46.5 43.4 0 55 1
レイク 8.19 55 9.3 9.16 54.1 63.2 0 42 1
ホワイトサマー - 58 - 9.19 - 91.1 - 47 (1)
モーニングホワイト 9.12 58 9.7 9.19 87.3 78.4 3 47 2
ケルン 9.20 61 9.7 9.22 50.3 82.0 9 37 3
ニース 9.7 65 - 9.26 - 113.6 - 4 1
マーガレットマム 9.24 65 9.10 9.26 65.1 103.4 11 2 1
マリーン 7.22 40 8.31 9.1 57.6 43.8 14 63 3
レモネード 8.22 65 9.3 9.26 53.6 55.2 0 61 2
コスチューム - 67 - 9.28 - 120.8 - 77 (1)
オリエント 8.10 65 9.3 9.26 32.7 25.5 0 64 3
ピエロ 10.3 67 9.10 9.28 77.6 110.9 49 51 1
ラブリー 9.28 67 9.28 9.28 115.8 121.1 0 4 1
メルヘン 9.19 65 9.14 9.26 81.1 120.5 3 0 1


モニカ 9.6 45 8.22 9.6 53.1 52.2 7 77 3
イブ 8.10 51 8.22 9.12 61.2 64.0 7 58 3
G7 8.10 65 9.7 9.26 67.7 79.8 3 63 2
ハーモニー 8.22 51 8.31 9.12 54.5 54.8 0 71 3
オーロラ 8.31 51 9.3 9.12 45.9 65.4 0 2 1
レインボー 9.19 67 9.10 9.28 89.7 96.1 0 37 2
ファンタジー 9.25 67 9.17 9.28 70.4 110.7 0 2 1
パレード 9.30 74 9.20 10.5 68.0 107.2 3 12 1
ハート - 69 - 9.30 - 113.9 - 97 (2)
モナミ - 83 - 10.14 - 149.5 - 35 (1)
ケベック 9.23 72 - 10.3 - 121.8 - 0 1
カーニバル 9.29 72 9.14 10.3 62.5 95.5 48 85 2
グリーンバード 10.24 83 10.15 10.14 98.5 127.9 33 7 1
注)SF:スプレーフォーメーション
  自然日長下の開花期、消灯〜開花日数は平成6年の調査
  電照下の出蕾状況:平成5,6年通じて消灯前に出蕾しなかった品種…1
  平成5年あるいは6年に消灯前に出蕾した品種…2
  平成5,6年通じて消灯前に出蕾した品種…3
  ただし( )は平成6年の調査

備考 ・「レインボー」は花弁の底部が白色の複色。
    ・低温時には「ラブリー」は花弁の色がオレンジに、「ゴージャス」は花の中央部が黄色〜ピンクになる。
    ・「二一ス」、「ケベック」はロゼットしやすい。
    ・「グリーンバード」は挿し芽苗の発根が悪い。

11.成果の活用面と留意点
 夏秋ギクタイプのスプレーギクの電照栽培における品種選定のための資料とする。

12.残された問題点とその対応
 1)低コストの栽培法での品種の検討
 2)夏秋ギクタイプの栽培法の検討