成績概要書(平成7年1月)
1.課題の分類  野菜 花き 栽培 キク 栽培一般 北海道
2.研究課題名  スプレーギク(秋ギクタイプ)のシェード及び季咲き栽培における夏秋採花技術
          (スプレーギクの栽培法確立試験) 3.予算区分  道単
4.研究期間  平成3年〜6年
5.担当  道南農試研究部園芸科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 本道でスプレーギクの夏秋期出荷を狙って、秋ギクタイプの8〜9月採花のシェード栽培と1O〜11月採花の
季咲き栽培において、省力で、高品質な切り花を採花するための栽培法を検討した。

8.試験研究方法
《1.シエード栽培‥‥8〜9月出し》
 1)短日処理期間開始時期(H4)摘芯後21、28、35日目(H5)摘芯後20、25、30日目
         終了時期(H4)出蕾期、花蕾着色期、開花始
 2)定植期と短日処理による開花調節定植期(H3)7.1、7.10(H4)6.2、6.19(H5)5.12、5.31(H6)5,9
 3)定植後温度管理(H6)無加温、摘芯時まで15℃加温、15℃加温
 4)親株温度管理(H6)最低気温(10、15、20℃)、15℃加温開始時期(1.21、3.4、3.25)
 5)シェード栽培の品種比較「ドラマティック」等13品種(H5、6)8月出し
《2.季咲き栽培‥‥10〜11月出し》
 1)季咲き栽培の定植期(H3)7.20、7.30、8.10(H4)7.10、7.20、7,30
 2)栽植密度及び仕立法(H3)3本仕立(1905、1428、952株/a)(H4)3本仕立(1905株/a)、摘芯後放任(1428株/a)、
  2回摘芯6本立(952株/a)(H6)3、4本仕立(2051株/a)
 3)N施肥量(H6)O、1.5、3.Okg/a
 4)定植後電照(H3〜5)有、無
 5)親株栽培(H4、6)越年株、当年株
 6)親株及び育苗電照(H3、5、6)有、無
 7)季咲き栽培の品種比較(H5、6)「ドラマティック」等13品種

栽培スケジュール
年 度 加温開始
(月日)
採穂用親株 切り花栽培
定植
(月日)
電照 挿し芽
(月日)
定植
(月日)
摘芯
(月日)
15℃
加温期間
電照 短日処理
(月日)
シェード H4(9月出し) 3.01 5.1 6.2 6.16 無加温 7.13〜9.7
H5(8月出し) 3.09 4.13 5.12 5.26 〜6.10 6.21〜7.30
H6(8月出し) 3.04 4.18 5.9 5.20 〜6.05 〜5.9 6.14〜8.4
季咲き H3 2.28 5.1 7.2 7.30 8.13 - 〜9.3 -
H4 3.1 4.20 6.19 7.20 8.4 - -
H5 3.9 5.25 7.8 7.28 8.10 - 〜7.28 -
H6 3.6 5.6 7.5 7.25 8.8 - 〜7.25 -
供試品種:「ドラマティック」「カナリア」
施肥法:(H3・4)N、P2O5、K2O…各1.0㎏/a
     (H5)N、P2O5、K2O…0.5、0.4、0.5kg/a
     (H6)無施肥(緑肥すきこみ)
整枝法:摘芯3本仕立(定植4週間後)
電照時間:(H3、4)PM9:OO〜AM2:00 (H5、6)PM9:OO〜AM3:OO
スプレーフォーメーションの調査方法:A〜Dの4段階に分けた。(A:円錐(筒)形B:平形C:凹型D:頂花座止)
                       AとBは商品性が高いが、CとDは商品性が劣る。

9.結果の概要・要約
《1.シエード栽培‥‥8〜9月出し》
 (1)シェード期間については、切花長80㎝の採花を目標にすると摘芯後25日目から開始するのが適切と考えら
  れ、花蕾着色期まで行う必要があると考えられた。
 (2)定植期と短日処理によって8〜10月出しの開花調節が可能であったが気象条件、また品種によって開花、
  SF(スプレーフォーメーション)の差があると考えられた。
 (3)「ドラマティック」は定植後15℃に加温しなければSFが乱れたが、「カナリア」は無加温でもSFが乱れ
  なかった。
 (4)「ドラマティック」は親株の加温温度は15℃がSFが良好で、また15℃加温開始時期が早いほどSFが良好
  であった。
 (5)供試品種の中では「マイアミ」「ホワイトピンキー」がSF、切花長とも比較的安定していて作りやすい品種
  であった「ムーンライト」「ホマロ」は8月出しのシェード栽培では短日処理〜開花日数が長く、他の品種
  より労力を要すると考えられた。
《2.季咲き栽培‥‥10〜11月出し》
 (1)7月10日〜8月10日の間の定植期を検討し、7月30日前後が適すると考えられたが、「ドラマティック」では
  切生長が十分ではない場合もあり、栽培する品種の特性を考慮する必要あると考えられた。
 (2)仕立法と栽植密度を検討した結果、「ドラマティック」ではSFは単年度内の結果を見るとa当たり規格内
  本数の多かった区で良好で、疎植及び少ない仕立教はSFの乱れを助長すると考えられた。栽植密度
  1905株/aの3本仕立は両品種とも規格内本数、SFが安定していた。
 (3)N施肥量によるSFの影響は今回の試験からは明らかにならなかったが、「ドラマティック」では
  施肥量が多い程1次側枝当たりの花蕾数が増加する傾同を示した。
 (4)定植後の電照はSFを良好にする効果は認められず、季咲き栽培においては省略が可能であると考え
  られた。
 (5)採穂用親株の挿し芽苗による栽培は省略しても季咲き栽培においてはSF等の品質の低下は認められず、
  省略が可能であると考え
  られた。
 (6)親株及び育苗中の電照については省略しても品質の低下は認められず、季咲き栽培においては省略が
  可能であると考えられた。
 (7)供試品種の中では「ホワイトピンキー」「スワン」「マイアミ」「ムーンライト」がSFの乱れがなく、
  切花長も大きい品種であった。

 

10.成果の具体的数字

表1  摘芯後短日処理開始時期別の採花調査結果(H5)
品種名 処理区 開花始
(月日)
2L
(80㎝)
割合(%)
SFの
C〜D
割合(%)
 
ドラマティック
摘芯後20日目 8.2 5 21
25 8.8 83 36
30 8.16 89 36
 
カナリア
摘芯後20日目 8.12 24 0
25 8.16 97 0
30 8.23 93 0

 

表2  短日処理終了時期別の開花始及びSF「ドラマティック」(H4)
処理区(月日) 開花始
(月日)
SFの
C〜D
割合(%)
出蕾始(7.30) 9.23 72
花蕾着色期(9.5) 9.7 52
開花始(9.7) 9.7 46

 

表3  シェード栽培の定植期別の開花始(H3〜6)
品種名 定植期
(年月日)
短日処理 開花始
(月日)
開始
(月日)
終了
(月日)
 
ドラマティック
H3.7.10 8.23 9.3 10.14
H3.7.1 8.14 9.3 10.10
H4.6.19 8.2 9.17 9.17
H4.6.2 7.13 9.7 9.7
H5.5.31 7.9 8.23 8.27
H5.5.12 6.21 7.30 8.8
H6.5.9 6.14 8.4 8.10
 
カナリア
H3.7.10 8.23 9.3 10.23
H3.7.1 8.14 9.3 10.18
H4.6.19 8.2 9.17 9.21
H4.6.2 7.13 9.7 9.14
H5.5.31 7.9 8.23 9.7
H5.5.12 6.21 7.30 8.16
H6.5.9 6.14 8.4 8.22

 

表4  シェード栽培の温度管理によるSF「ドラマティック」(H6)
試験 処理区 SFの
C〜D
割合(%)
定植後の
温度管理
無加温 7
摘芯時まで15℃加温 13
15℃加温 0
親株の
最低気温
10℃ 15
15℃ 9
20℃ 23
親株の
加温開始
時期(月日)
1.21 3
3.4 9
3.25 23

 

表5  季咲き栽培の定植季別の採花調査結果(H3,4)
品種名 年度 定植期
(月日)
開花始
(月日)
2L
(80㎝)
割合(%)
SFの
C〜D
割合(%)
 
ドラマティック
3 7.20 10.27 93 4
7.30 10.25 76 0
8.10 10.28 0 0
4 7.10 10.19 100 100
7.20 10.19 100 80
7.30 10.22 34 27
 
カナリア
3 7.20 11.1 79 0
7.30 11.1 61 0
8.10 11.3 0 0
4 7.10 11.2 100 2
7.20 11.2 100 0
7.30 11.4 77 0

 

表6  季咲き栽培の栽植密度及び仕立法別の栽花調査結果「ドラマティック」(H3〜6)
年度 栽植密度
(株/a)
仕立法 a当り
規格内
本数
2L
(80㎝)
割合(%)
SFの
C〜D
割合(%)
3 1905 3本 5659 76 0
1428 3本 4088 82 0
952 3本 2985 52 0
4 1905 3本 5536 100 80
1428 放任 6299 91 36
952 6本 5553 99 71
5 1905 3本 5620 0 3
1428 4本 4998 1 17
952 放任 4046 0 24
952 6本 5426 0 0
6 2051 3本 5210 98 0
2051 4本 6495 97 0

 

 

11.成果の活用面と留意点
 栽培指標の利用にあたっては、品種特性を把握した上で栽培スケジュール、温度管理、栽植密度を決定する。

12.残された問題点とその対応
 1)短日処理の省力化の検討
 2)電照栽培における栽培法の検討
 3)栽培品種の定植期