成績概要書(平成7年1月)
1.課題の分類
2.研究課題名  小麦の簡易品質判定機の開発(NlRを用いた農産物の非破壊品質判定機の開発)
3.予算区分  共同
4.研究期間  平成4年〜6年
5.担当  北海道立中央農業試験場 農産化学部 穀物利用科
      株式会社クボタ
6.協力・分担関係

7.目的
 NIR(近赤外分析装置)を用いて小麦品質(水分、蛋白含有率、アミロ最高粘度)を非破壊かつ迅速に判別可能な装置を開発し、高品質小麦の流通に寄与する。

8.試験研究方法
 近赤外分析装置で小麦(生麦及び乾麦)品質を判定するため、①ソフト面で測定波長及び成分量決定のためのキャリブレーションの設定、②ハード面では、水分変動の大きい試料を測定する際の精度を向上させる手段について検討した。

1)供試試料
 ①生麦試料(水分15〜40%):中央農試および現地で収穫された試料297点。さらに、加水処理を行い水  分含有率を多段階に調整した試料186点
 ②乾麦試料(水分10〜15%):農試圃場および現地で収穫された試料460点。
2)キャリブレーションの作成供試試料を校正用と評価用の試料に分割し、校正用試料について重回帰分析
 (変数減少法、波長組合せ法)によりキャリブレーションを作成するとともに、評価用試料、H6現地試料で
 推測誤差を検討した。
3)許容誤差範囲許容誤差範囲は利用場面によって異なり、収穫物の受入段階では大まかな区分を、出荷時
  の1品質表示においては比較的厳密な精度が求められる。そこで、測定対象ごとの許容範囲を設定した。

測定対象の区分と許容推測誤差
試料 対象水分 許容推測誤差
水分 蛋白含有率 最高粘度
生麦 15〜40% 2%以下 0.5%以下 150B.U.以下
乾麦 10〜15% 0.5%以下 0.5%以下

9.結果の概要・要約
 本機は、株式会社クボタとの共同研究により開発されたもので、特許を共同出願するとともに、道の職務発明等の認定を受けている。
1)本製置のソフト面の中枢であるキャリブレーションを設定するに当たっては・北海道産麦を対象にした。
2)水分変動の大きい試料を測定する際に問題となる透過光のバラツキを解消するために、分光光度計に
 電荷蓄積時間の調節が可能となるよう改良を加えた。
3)以上の改良によって、小麦の品質を評価するうえで重要な指標となっている子実水分、蛋白含有率、
 アミロ最高粘度を非破壊かつ迅速(約2分/点)に測定できる装置を開発した。
4)本装置を用いて各成分・項目ごとにその適合性を検討した。
 ①生麦(子実水分15〜40%)に対しては推測誤差1.3%、乾麦(子実水分10〜15%)に対しては
  0.4%以下の推測誤差で、子実水分の推定が可能であった(図1、2)。
 ②蛋白含有率については、生麦、乾麦ともに0.5%以下の推測誤差で推定が可能であった。ただし、乾麦
  は蛋白含有率14%未満を対象とする(図3、4)。
 ③アミロ最高粘度については、推測誤差150B、U、で推定が可能であり、低アミロ小麦の大まかな
  仕分けには活用できるものと思われた(図5、6)。
 ④水分、蛋白含有率の推定に関して機材間の差は小さく、同一のキャリブレーションによる測定が可能
  であった。

10.成果の具体的数字

 

表1  成分項目ごとの推測誤差
  水分(%) 蛋白含有率(%) 最高粘度(B.U.)
生麦 乾麦 生麦 乾麦* 生麦 乾麦
校正用 1.33 0.32 0.45 0.45 118 104
評価用 1.38 0.35 0.43 0.41 139 145
H6現地 1.08 0.38 0.41 0.37    
*)乾麦の蛋白含有率の推定は蛋白含有率14%未満を対象とする。

 

11.成果の活用面と留意点
 本機材は原粒のままで水分・蛋白含有率の推定が可能であり、小麦受入現場における仕分けや乾燥・調整段階の品質管理、および出荷時の品質表示に活用できる。
 また、アミロ最高粘度の推定に関しては、大まかな区分に有効と思われるが、他の方法との併用が望ましい。

12.残された問題とその対応
 (1)蛋白含有率14%以上の乾麦試料に適応する蛋白含有率推測のキャリブレーション作成。
 (2)アミロ最高粘度の高精度な解析法の検討。
 (3)新品種への適応性のチェック。