成績概要書(平成7年1月)
1.課題の分類
2.研究課題名  カット・ピール向けバレイショの加工適性
          #業務用バレイショ(カット・ピール)の加工流通技術の開発
            1.業務用バレイショ(カット・ピール)の加工流通適性に関する試験
            2.カット・ピールバレイショの加工流通貯蔵技術に関する試験
3.予算区分  補助(高収益畑輪作)
4.研究期間  平成4年〜平成6年
5.担当  中央農試農産化学部流通貯蔵科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 カット・ピールバレイショは、バレイショを剥皮、切断後、真空調理される一次加工農産物であり、バレイショの新しい用途として注目されており、需要ものびている。現在、カット・ピールバレイショの原料として用いられている主要品種は「男爵薯」であるが、芽が深く芽取り作業に時間がかかる、加工中に変色しやすい等の問題点を抱えており、製品歩留りおよび作業性の低下につながっている。本試験では、カット・ピール向けバレイショの適性を加工歩留りと切断後褐変(酵素褐変)の2つとしこれらに影響を与える要因を解析するとともに、品種間差を明らかにすることを目的とした。

8.試験研究方法
1)加工歩留りに関する試験
 (1)供試品種
   「男爵薯」、「とうや」、「キタアカリ」、「メークイン」、「ムサマル」、「ホッカイコガネ」、「マチルダ」
 (2)供試材料
   Mサイズ(平成6年、十勝農試産)
 (3)調査項目
   ・剥皮前後のバレイショの外形(長さ、幅、厚さ)、基部および頂芽の深さ、トリミング数(各50個体)
   ・スチームピーラーによる剥皮後の剥皮歩留り(スチーム45秒、ピール25秒、10㎏×2反復)
2)酵素褐変に関する試験
 (1)供試品種
   1)、(1)に同じ
 (2)栽培場所
   中央農試、十勝農試、根釧農試
 (3)分析項目
   ・切断後の褐変程度(色彩色差計の△L*)、ポリフェノールオキシターゼ(PPO)活性、ポリフェノール含
   有率、クロロゲン酸含有率

9.結果の概要・要約
1)剥皮歩留りの高かった品種は「メークイン」、「マチルダ」であり、剥皮後の頂芽の部分のトリミング数の少
 なかった品種は、「とうや」、「メークイン」、「マチルダ」であった(表1)。
2)バレイショの長さがながいものほど、また、幅および厚さが薄いものほど剥皮歩留りが高い傾向を示した。
 また、剥皮前後の長さの差および厚さの差が小さいものほど剥皮歩留りが高かった(表2、3)。
3)頂芽の深さが浅いものほど剥皮後の頂芽におけるトリミング数が少なかった(図1)。
4)バレイショの切断後褐変の程度を、色彩色差計を用いて切断前後の明度の差(△L*)で示し、酵素褐変
 に影響を与える要因を検討したところ、ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性が主要因であり、褐変程度
 と正の有意な相関関係を示した(図2)。
5)収穫期が枯凋期に近くなるにつれて、切断後褐変の程度は小さくなり、PPO活性も低下した(図3)。
6)切断後の褐変程度は、「男爵薯」「マチルダ」で大きく、ついで、「とうや」「キタアカリ」「メークイン」
 であり、「ムサマル」「ホッカイコガネ」は褐変しにくかった(表4、図−4)。

 

10.成果の具体的数字

表1  剥皮歩留りおよび剥皮後のトリミング数
品種名 原料馬鈴薯の形状
(A)mm
剥皮後の形状
(B)mm
剥皮前後の差
B-Amm
剥皮
歩留り
基部 頂芽(芽)
長さ 厚さ 長さ 厚さ 長さ 厚さ 深さ
mm
トリミング
数カ所
/個体
深さ
mm
トリミング
数カ所
/個体
男爵薯 51.9 54.6 46.3 49.6 52.8 43.3 2.3 1.8 3.0 85.3 2.2 0.90 2.9 0.94
とうや 53.5 53.6 48.1 50.7 50.9 45.4 2.8 2.6 2.7 84.9 1.5 0.86 1.3 0.08
キタアカリ 50.5 53.8 45.9 47.8 51.4 42.6 2.7 2.3 3.3 84.8 1.8 0.90 2.5 0.80
メークイン 74.0 45.1 38.1 72.5 42.9 37.2 1.6 2.3 0.9 89.8 0.2 0.83 0.4 0.05
ムサマル 56.6 52.4 44.7 53.9 50.0 42.1 2.8 2.5 2.6 85.0 0.6 0.42 0.8 0.48
ホツカイコガネ 71.9 47.6 40.1 69.1 45.0 37.6 2.7 2.6 2.5 84.3 0.2 0.62 0.8 0.32
マチルダ 58.1 48.2 41.7 56.4 45.8 40.4 1.7 2.5 1.3 87.6 0.4 0.52 0.5 0.04
注:形状は50個体の平均値で示した。
  剥皮後の歩留りは2反復の平均値で示した。

 

 

表2  パレイショの形状と剥皮歩留りの相関係数
  剥皮歩留りとの相関係数
原料の長さ
幅 
厚さ
0.500
-0.700
-0.654

表3  剥皮前後の差と剥皮歩留りの相関係数
  剥皮歩留りとの相関係数
剥皮前後の長さの差
幅の差 
厚さの差
-0.927**
-0.103
-0.908**

 

 

表4  褐変程度(△L*値)の品種間差異
品種名 1993年 1994年 平均
中央農試 十勝農試 中央農試 十勝農試 根釧農試
男爵薯 6.0 10.8 3.2 7.1 6.4 6.7
とうや 4.5 7.5 1.6 4.2 4.1 4.4
キタアカリ 4.2 5.6 2.0 3.3 - 3.8
メークイン 3.9 6.0 1.2 3.6 3.2 3.6
ムサマル 2.2 6.3 0.8 0.8 2.0 2.4
ホツカイコガネ 2.1 5.0 1.6 0.7 2.1 2.3
マチルダ 3.6 12.1 4.4 4.3 8.1 6.5

 

11.成果の活用面と留意点
 1)切断後褐変の面からカット・ピール用としては、自然枯凋後に収穫したバレイショが望ましい。
 2)本成績はカット・ピール向けバレイショの選定に利用できる。

12.残された問題とその対応
 1)水煮後黒変にかかわる要因解明および適性の検討
 2)原料貯蔵中の変化(重量歩留り、しなび)が、加工歩留り(剥皮歩留り)に与える影響