成績概要書(平成7年1月)
1.課題の分類  総合農業 生産環境 土壌肥料 3−3−2
          草地 草地 草地造成 C−2
          北海道 土肥・環 家畜・草地合同
2.研究課題名  既客土泥炭草地更新時の地耐力維持法と雑草対策
          (泥炭草地の地耐力を維持するための更新法の確立)
3.予算区分  道単
4.研究期間  平成2〜6年
5.担当  天北農試泥炭草地科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 既客土泥炭草地更新時の地耐力を維持するための耕起法を明らかにするとともに、再客土の効果を明らかにする。加えて耕起法と除草剤散布時による雑草抑制対策について検討する。

8.試験研究方法
【試験Ⅰ】既客土泥炭草地の地耐力維持のための耕起法および再客土による地耐力向上効果
1)実施場所:浜頓別町字頓別(泥炭試験地、中間泥炭土、客土6㎝、昭和54年造成】
2)処理区(略記号)と試験規模
①反転25㎝(反・25);75㎡
②反転15㎝(反・15);150㎡
③撹拌15㎝(撹・15);225㎡
④撹拌10㎝(撹・10);150㎡
⑤再客土5㎝(客・5);50㎡
⑥再客土10㎝(客・10);50㎡
3)供試草種と播種量(㎏/10a);チモシー(TY・ノサップ):1.5、ラジノクローバ(LC・カルフォルニア):0.3
4)耕種概要
 客土;5月17日、耕起;6月21日、播種;7月30日(撹・10は9月1日)
 施肥量;基肥(N3.0、P2O57.5、K2O11.0)、追肥(N5.0、P2O57.5、K2O22.0)
 施肥配分;春:1番刈後=2:1、P2O5は春全量、施肥時期;春:5月下旬、1番刈後:7月上旬
 収穫時期;1番草:6月下旬、2番草:8月下旬頃
5)調査項目;収量、円錐貫入抵抗値、圃場の凹凸(メッシュ法1m間隔)

【試験Ⅱ−1】耕起法と雑草抑制効果
1)実施場所および耕種概要等;【試験I】に同じ
2)処理区;①反転25㎝(反・25)③撹拌15㎝(撹)⑤再客土5㎝(客・5)⑥再客土10㎝(客・10)
3)調査項目;雑草出芽数、草種構成

【試験Ⅱ−2】除草剤使用による雑草抑制効果
1)実施場所;豊富町瑞穂地区(サロベツ泥炭地)4ケ所:A〜D圃場
2)処理区と作業行程;A、B圃場はH2年、C、D圃場はH3年更新
処理区 略記 散布行程 A、B8/4播種 9/13播種 C、D圃場7/8播種 8/20播種
無散布 略記:8上 略記:9中 略記:7上 略記:8下
耕起前 散〜耕・播 7/19〜8/4 7/19〜9/13 5/24〜7/8 7/29〜8/20
耕起後 耕〜散〜播 7/20〜9/6〜9/13 5/24〜6/25〜7/8 7/8〜7/29〜8/20
3)使用除草剤;グリホサート液剤(ラウンドアップ)、散布量1%液、70㍑/10a
4)供試草種と播種量(㎏/10a);TY:2.5、LC:0.25、アルサイククローバ(AC)10.25
5)試験規模;面積:15m×200m=3,000㎡、反復なし
6)更新時施肥量(㎏/10a);N3.0,P2O57.5、K2O4.5
7)調査項目;雑草出芽数、草種構成

9.結果の概要・要約
 既客土泥炭草地更新時の地耐力維持法として、反転、撹拌の耕起法と再客土による地耐力向上効果、加えて耕起法と除草剤散布時期による雑草抑制対策について検討した。
1)既客土泥炭草地更新時の地耐力維持法について
 (1)地耐力は客土>撹絆>反転の傾向であった。
 (2)圃場内の凹凸は反転25㎝区で大きく、その他の処理間の差は小さかった。
 (3)牧草取量は撹拌耕が反転25㎝区に優った。
2)雑草抑制対策について
 (1)更新時の広葉雑草に対する耕起法による抑制効果は、反転耕の方が撹拌耕より優れた。
 (2)更新時の広葉雑草に対する除草剤処理の効果は、耕起後の散布では認められたが、耕起前の散布で
  は殆ど認められなかった。
 (3)地下茎型イネ科草(RCG主体)の多い草地では、耕起前散布の効果が高かった。

以上の結果から、下記のように効果の評価を集約した。

耕起法の評価
評価項目 反転 撹拌 再客土
25cm 15cm 15cm 5cm 10cm
・地耐力
・圃場の凹凸
・収量性
・マメ科率
×
×













効果;×なし、△微、□小、○中、◎大

除草剤処理の効果
主たる雑草 除草剤処理区分
無散布 耕起前 耕起後
・広葉雑草 ×
・RCG ×

 

10.成果の具体的数字

表1  耕起処理直後の灼熱損量(0〜5㎝)<br>H2.10.4測定
処理区\成分 灼熱損量(%)
原土* 19.7
①反・25 26.8
②反・15 19.9
③撹・15 19.7
④撹・10 12.3
⑤客・ 5 -
⑥客・10 6.9
*0〜15cm

 

表2  円錐貫入抵抗値*の推移(表層0〜15cmの平均)
処理\時期 更新後の経過年数
2年 3年 4年
5月 7月 9月 5月 7月 9月 5月 7月 9月
①反・25 3.36 4.27 4.77 4.27 5.97 4.06 4.55 6.91 4.91
②反・15 2.95 5.37 5.40 3.77 6.52 3.59 4.11 6.83 4.99
③撹・15 3.24 7.05 5.77 4.66 7.39 4.31 5.17 7.67 5.33
④撹・10 4.23 9.36 6.19 4.33 6.96 4.00 4.84 7.11 4.59
⑤客・ 5 5.44 7.85 5.91 4.39 7.59 3.42 5.26 9.38 6.65
⑥客・10 11.07 10.69 5.87 7.41 15.48 5.23 9.85 16.37 8.06
*5㎏/㎝2以上であれば通常の管理作業にほぼ支障のない地耐力であることを示す。

 

表3  メッシュ間比高差の出現頻度(%、更新3年目、H4.9.4調査)
処理区\水準 0cm〜3 4〜6 7〜9 10〜 平均(cm)
①反・25 16.8 47.8 34.0 6.4 6.01
②反・15 29.2 61.2 8.0 1.6 4.42
③撹・15 32.8 48.0 12.4 6.8 4.80
④撹・10 41.6 46.8 11.6 0.0 4.14
⑤客・ 5 36.0 54.0 10.0 0.0 3.92
⑥客・10 34.0 66.0 0.0 0.0 4.09

 

表4  収重とマメ科率の推移(年間乾物)
処理区 反・25との比較%* マメ科率%
2 3 4 5 2 3 4 5
①反・25 100 100 100 100 8 7 9 3
②反・15 86 90 124 128 17 7 13 7
③撹・15 107 103 109 138 6 3 10 11
④撹・10 - - - - - - - -
⑤客・ 5 80 85 99 108 5 10 16 8
⑥客・10 108 114 110 139 20 13 22 18
*TY+LC 乾物重比

 

表5  更新直後の耕起法別出芽数(H2.10.4)
処理区 出芽数(本/㎡) 撹拌区との比(%)
イネ科 マメ科 広葉雑草 イネ科 マメ科 広葉雑草
①反・25 1,630 340 80 109 213 73
③撹・15 1,490 160 110 100 100 100
⑤客・ 5 1,450 70 90 97 44 82
⑥客・10 1,630 180 50 109 113 45

 

表6  更新直後の除草剤散布時期別出芽数
圃場 処理区 出芽数(本/㎡) 無散布区との比%
イネ科 マメ科 広葉雑草 イネ科 マメ科 広葉雑草
A 9中・無 2,250 160 280 100 100 100
9中・前 2,200 210 1,280 98 131 457
9中・後 1,010 120 10 45 75 4
B 9中・無 2,500 200 640 100 100 100
9中・前 2,370 200 150 95 100 23
9中・後 1,310 160 30 52 80 5
C 7上・無 1,510 33 433 100 100 100
7上・前 1,227 144 577 81 436 133
7上・後 1,732 122 211 115 370 49
D 7上・無 1,143 44 67 100 100 100
7上・前 1,454 111 100 127 252 149
7上・後 1,443 211 266 126 480 397

 

表7  更新翌年の草種構成(年間乾物)
圃場 処理区 乾物重
(kg/10a)
草種構成(%)
TY+マメ科 地下茎型イネ科草 広葉雑草
その他 RCG
A 9中・無 802 44 46 0 10
9中・前 740 62 12 0 26
9中・後 510 67 28 0 5
B 9中・無 792 44 51 0 5
9中・前 542 93 2 0 5
9中・後 862 64 33 0 3
C 7上・無 511 87 7 0 6
7上・前 469 99 0 0 1
7上・後 741 90 9 0 1
D 7上・無 681 12 40 25 23
7上・前 532 43 36 0 21
7上・後 461 32 0 40 28

 

11.成果の活用面と留意点
 (1)除草剤の使用法は、北海道農作物病害虫防除基準・除草剤使用基準に準拠する(耕起後、播種前雑草
  処理法については、除草剤部門の成果の公表を待って対応する)。
 (2)雨量の少ない時期の播種は牧草の立毛数が劣るので避ける。

12.残された問題点とその対応
 (1)泥炭草地更新指標の策定
 (2)泥炭草地の低コスト更新法(不耕起更新法)
 (3)泥炭草地における耕種的雑草防除体系の確立