成績概要書(作成 平成7年1月)
1.課題の分類
2.研究課題名  農業用水系における水田除草剤の測定法
          (農業生態系における合成有機化学物質のモニタリング手法の開発−水田除草剤−)
3.予算区分  道単
4.研究期間  平成2年〜6年
5.担当  中央農試環境化学部環境保全科
6.協力・分担  なし

7.目的
 本試料中の水田除草剤濃度を簡易かつ迅速に測定するため、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)の利用と、試料の前処理法を検討する。

8.試験研究方法
供試農薬⇒ ①モリネート
②シメトリン
③ベンチオカーブ
④ブタクロール
⑤プレチラクロール
⑥オキサジアゾン
⑦クロルニトロフェン
⑧クロメトキシニル
⑨ピペロホス
⑩メフェナセット
⑪ベンスルフロンメチル
⑫ピラゾスルフロンエチル
        ※①〜⑩はGC/MSで、⑪と⑫は高速液体クロマトグラフで測定した。
 GC/MSの条件設定⇒カラム、カラムオーブン昇温速度、定量法
 前処理法⇒液−液分配法(従来法)と固相抽出法の比較
 サンプリング至適時期⇒・調査場所‥モデル圃場−岩見沢市(粘土質土壌)、石狩町(砂質土壌)
                ・調査時期‥平成2〜3年
                ・調査農薬‥ブタクロールのみ

9.成果の概要・要約
(1)水試料の前処理法は、シリカゲル吸着剤充填カートリッジを用いる固相抽出法が、従来の液−液分配法
 より、操作の簡便性・有機溶媒の使用量・回収率からみると優れていた(表1)。
(2)ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)のカラムオーブンの昇温速度を2段階(60℃〜210℃を25℃/分、
 210℃〜280℃を10℃/分)とすることで、10成分を14分と短時間で分離できた(図1)。また、定量法と
 して、内標準法は絶対検量線法と比べて分析精度が著しく高かった(図2)。
(3)GC/MSで測定できなかったベンスルフロンメチルとピラゾスルフロンエチルを、高速液体クロマト
 グラフ(UV波長240㎜)を用いることで同時に測定できた。
(4)ブタクロールはたん水期間を通じて用排水中に認められ、水田から高濃度で流出する可能性のある時期
 は、その施用後2週間程度と考えられた(図3)。
(5)以上から、農業用水系での水田除草剤モニタリング法を次のように確立した。(図4)
 ①本試料のサンプリングはたん水期間中とするが、特に除草剤施用後2週間程度を重点的に行う。
 ②前処理法は固相抽出法とする。
 ③ガスクロマトグラフ質量分析計および高速液体クロマトグラフを使用し、同時に多成分を分析する。

 

10.成果の具体的数字

表1  前処理法による回収率の比較
除草剤成分 液−液分配法
(%)
固相抽出法(%)
C8 tC18
モリネート 39 29 44
シメトリン 147 59 102
ベンチオカーブ 133 92 87
ブタクロール 112 91 72
プレチラクロール 132 90 81
オキサジアゾン 95 91 76
クロルニトロフェン 82 88 77
クロメトキシニル 93 95 68
ピペロホス 106 128 70
メフェナセット 50 101 50

 

 

 

試料水(1000mL)

ガラス繊維ろ紙で吸引ろ過

固相カートリッジにロード

窒素ガスで水分をパージ

ジクロロメタン5mLで溶出

溶媒を遠心濃縮器で留去

acetoneで1mLに定容

GC/MSで測定
図4.固相抽出法とGC/MSを組み合わせた水田除草剤測定法

 

11.成果の活用面と留意点
 本測定法は公定法に準じており、基準値は現行のものを適用する。

12.残された問題点とその対応
 今後基準が設定される方向にある、水田用殺虫剤・殺菌剤の分析法の検討。
 畑地で施用される農薬への対応