1.課題の分類 畜産 肉用牛 飼養 新得畜試 北海道 家畜 2.研究課題名 濃厚飼料の多給・飽食給与による黒毛和種去勢牛の肉質向上技術 (黒毛和種去勢牛による高級牛肉生産技術の確立に関する試験) 3.予算区分 道単 4.研究期間 平成3年〜6年 5.担当 新得畜試 肉牛飼養科、肉牛育種科 6.協力・分担関係 なし |
7.目的
試験1では、肥育前期に飼料を制限給与し肥育後期に濃厚飼料を多給した飽食給与を行う方式と肥育開始時から濃厚飼料を多給した飽食給与を行う方式との違い、さらには26か月齢出荷と30か月齢出荷との違いが黒毛和種去勢牛の産肉性に及ぼす影響について検討した。また、試験2では、試験1で良いとされた方式が、増体能力が高いとされる、いわゆる増体系の種雄牛を父とした素牛を用いた肥育にも適用されるかどうかについて実証的な試験を行った。
8.試験研究方法
《試験1.肥育前期からの飽食給与が産肉性に及ぼす影響》
9.結果の概要・要約
《試験1》
①肥育開始時から濃厚飼料を多給した飽食給与を行う方式は、肥育前期の7か月間に飼料を制限給与する
方式に比べ、飼料効率、皮下脂肪厚では若干劣るが、肉質等級、脂肪交雑の面からみて優れていることが
示された。
②脂肪交雑は肥育期間が26か月齢から30か月齢に延長するとが若干改善されたが、給与処理間の差よりも
小さかった。
《試験2》
①増体型の素牛は資質系の種雄牛を父とする素牛を肥育した場合に比べBMS No.や筋肉中の粗脂肪含量で
は若干劣るが、増体は高く、枝肉量は多く、肉質等級4以上の頭数は60%以上と良好で、その産肉能力を
十分に発揮させることができた。
10.主要成果の具体的数字
表1 試験1および試験2の肥育成績
26か月齢出荷 | 30か月齢出荷 | 試験2 | |||
制限区 | 飽食区 | 制限区 | 飽食区 | ||
頭数 (頭) | 3 | 3 | 4 | 4 | 6 |
開始時 月齢(か月) | 10.8 | 10.9 | 12.2 | 12.1 | 10.5 |
体重(㎏) | 292.3 | 309.7 | 283.5 | 274.8 | 277.8 |
前期終了時 月齢(か月) | 17.5 | 17.7 | 18.9 | 18.9 | - |
体重(㎏) | 423.7 | 482.7 | 314.3 | 460.0 | - |
出荷時 月齢(か月) | 26.6 | 26.7 | 30.5 | 30.5 | 30.0 |
体重(㎏) | 675.0 | 683.8 | 693.0 | 705.8 | 783.2 |
日増体量(㎏) 前期 | 0.65a | 0.85b | 0.66a | 0.94b | - |
後期 | 0.93a | 0.74b | 0.80ab | 0.71a | - |
通算 | 0.81 | 0.79 | 0.74 | 0.78 | 0.86 |
通算増体量(㎏) | 382.7 | 374.2 | 409.5 | 431.0 | 505.3 |
1㎏増体に要した 前期 | 6.3 | 6.8 | 5.7 | 6.2 | - |
TDN量(㎏) 後期 | 8.0 | 8.6 | 8.7 | 8.9 | - |
通算 | 7.4 | 7.8 | 7.7 | 7.8 | 8.2 |
枝肉量(㎏) | 399.0 | 417.0 | 419.0 | 436.0 | 484.0 |
ロース芯面積(㎝2) | 46.8 | 47.0 | 44.5 | 46.2 | 55.5 |
バラ部厚(㎝) | 6.6a | 6.6a | 7.6b | 8.0b | 7.2 |
皮下脂肪厚(㎝) | 2.2ab | 2.7b | 1.8a | 2.4ab | 2.7 |
枝肉格付 | A-5:1頭 A-3:2頭 |
A-5:1頭 A-4:1頭 B-3:1頭 |
A-5:1頭 A-4:1頭 A-3:2頭 |
A-5:1頭 A-4:2頭 A-3:1頭 |
A-5:1頭 A-4:2頭 B-4:1頭 A-3:1頭 B-3:1頭 |
BMS № | 5.3 | 6.3 | 5.5 | 6.8 | 5.8 |
筋肉中の脂肪含量(%) | 16.4 | 18.0 | 22.7 | 22.3 | 16.0 |
11.成果の活用面と留意事項
1.肥育開始時から濃厚飼料を多給した飽食給与を行う場合、粗飼料の給与量が不足すると肥育疾病の多発
が懸念されるため、肥育前期に乾草を乾物比で25%程度(TDN比で20%程度)摂取させる。
2.本試験は、ビタミンAのコントロールは行っていない。
12.残された問題とその対応
1.短期間の制限給与を前提とした適正な飽食給与の開始時期と産肉性との関連解析。
2.出荷月齢と肉質との関連解析による適正な出荷時期についての検討。