7.研究目的
　厳しい酪農情勢の中で天北酪農が飛躍するためには、採草地利用の一層の改善が必要である。そこで、天北地域における主要な採草用イネ科牧草の栄養価を生育時期とスケジュールの面から明らかにする。

8.研究方法
　1．オーチャードグラスとチモシーの生育時期別の栄養価:めん羊を用いた消化試験によりオーチャードグラス(OGと略す、オカミドリ)とチモシー(TYと略す、ノサップ)の栄養価を、1番草の刈取リ生育時期を3段階(早刈・中刈・遅刈)とする各番草および1番草早刈後の生育日数を3段階(30日、40日、50日)とする2番草について検討した。
　2．オーチャードグラスとチモシーの刈取リスケジュール別の栄養価:OG2品種(キタミドリ、オカミドリ)とTY3品種(クンプウ、ノサップ、ホクシュウ)について、T＆T法による人工乾物消化率を指標として刈取リスケジュール別に栄養価を検討した。刈取りスケジュールは1番草の出穂始・出穂期、2番草の生育日数の短・中・長を組合せた。

9.結果の概要・要約
　１-1）刈取リ生育時期を異にした1番草のTDN含有率は両車種とも早刈>中刈>遅刈の順に急激に減少し、出穂始に相当する早刈では65％以上であったが、出穂始の20日後に相当す亭遅刈では60％を大きく下回った。(図1)
　１-2）1番草の刈取リ生育時期が異なっても、同じ生育日数(OG:41日、TY:55日)で刈取った2番草のTDN含有率は両草種とも59％前後で近似していた。さらに、同じ生育日数46日で刈取ったOG3番草でも59％前後であった。(図1)
　１-3）1番草早刈後、生育日数を30日、40日、50日と異にして刈取った2番草のTDN含有率は、OGでは30日刈の64％から50日刈の55％まで、TYでは30日刈の71％から50日刈の63％まで順に減少した。(図2)ただしTY30日刈の収量は極端に少なかった。
　１-4）OGの1番草早刈〜2番草30日刈〜3番草50日刈では3番草のTDN含有率が60％を大きく下回った。TYの1番草早刈〜2番草40日刈〜3番草45日刈では全番草のTDN含有率が65％を超えた。(図2)
　２-1）1番草の人工乾物消化率は、OGの両品種では出穂期まで65％以上であったが、TYではクンプウとノサップの出穂始でのみ65％以上であった。
　２-2）2番草になると各草種・品種とも生育日数の短＞中＞長の順にほぼ20日間で7〜10％減少し、65％以上はOGキタミドリの短(35日)とTYホクシュウの短(45日)のみであった。3番草ではTYが70％前後であり、OGより高かった。
　２-3）人工乾物消化率が全番草65％以上の高位安定の刈取リスケジュールは皆無であった。上位評価を全番草60％以上で平均乾物消化率65％以上とすると、OGキタミドリの「始-短」「始-中」とTYクンプウの「始-短」が該当した。下位評価を60％未満の番草があって平均乾物消化率60％未満とすると、TYノサップの「期-長」、TYホクシュウの「期-短」「期-中」「期-長」が該当した。(図3)

10.主要成果の具体的数字

11.成果の活用面と留意点
　1.OGでは早生品種と中生品種に適用する。
　2.1番草の刈取リが出穂始以降の場合に適用する。
　3.TYの栄養価優先の刈取リでは地下茎型イネ科雑草侵入の恐れがある。

12.残された問題点とその対応
　1.1番草の刈取リが出穂前の場合の刈取りスケジュール別栄養価については未検討である。
　2.乾草・サイレージ調製の難易性や収穫効率を含む検討が必要である。