【指導参考事項】1995006
成績概要書(作成平成8年1月)
研究課題名:水稲機械移植用成苗ポット(490穴型)の実用化 予算区分:受託 研究期間:平7年度 担当:道立中央農試稲作部栽培第一科 同 農業機械部機械科 協力・分担関係 道立上川農試研究部水稲栽培科 |
1.目的
新たに開発された490穴型(14行x35タのの成苗ポット用の土詰め播種機の性能を検討するとともに、ポット当たり播種粒数および育苗日数と苗質の関係を調べ、本型式によって成苗が得られる条件を明らかにする。
2.方法
1)土詰め播種機の性能
供試機種。ILH-320
実施場所。播種清麗式験は、中央農試稲作部で4月17日に実施した。
播種自発載験は、岩見沢市金子下氏農易で4月14日に実施した。
作業速度:3段階(目盛りで、250.300.320)
調査項目:播種精度、作業能率
2)育苗試験
供試育苗ポット:
育苗型式 | ポット数 | 穴径(㎜) | ポット深 (㎜) | 寸法(㎜) (長さX幅) | 穴ピッチ (㎜) |
|
上面 | 底面 | |||||
490穴型 | 490(14x35) | 15 | 10 | 25 | 615×315 | 17.5 |
448穴型(比較) | 448(14x32) | 16 | 11 | 25 | 610×315 | 19.O |
3.結果の概要
1)本試験に供試した490穴型専用の播種機は、いずれの作業速度でもポット当たり平均播種粒数約2.9粒、2〜4粒の割合98%以上の高い精度の播種が可能であった(表1)。
2)播種作業能率は、作業一員2名を配置して行った結果(ハウスヘの設置は含まない)、苗箱搬送速度6.9㎝/sの場合に約300箱/hであった(表2)。
3)移植時(播種後35〜36日)の苗の生育は、従来の448穴型成苗ポットと比較すると葉数で約0.2葉地上部乾物重で約1割劣ったが、成苗ポットの基準以上の苗が得られた(表3)。また、育苗日数を45日まで延長しても、葉数および地上部乾物重に生育の停滞は認められなかった(図1)。
4)本田における生育、出穂期について、490穴型と448穴型の間に差は認められなかった(表3)。以上の結果から、本育苗型式は成苗ポット苗を育蕾する型式であり、既存の型式に比べ変更部分はごくわずかであることから、単年度の結果ではあるが実用性は高いと判断された。
表1 播種精度
場所 | 目盛り | 苗箱搬 送速度 (c㎜/sec) |
粒数/箱 | 粒数/ポット | 粒数内訳(%) | |||||||||
平均 | 偏差 | 平均 | 偏差 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 2〜4 | |||
稲乍部 | 250 | 5.70 | 1441 | 9.9 | 2.94 | 0.66 | 0 | 1.0 | 21.0 | 61.8 | 15.5 | 0.6 | 0.1 | 98.3 |
300 | 6.62 | 1427 | 6.4 | 2.91 | 0.66 | 0 | 1.1 | 22.6 | 60.7 | 15.2 | 0.4 | 0 | 98.5 | |
320 | 7.36 | 1411 | 10.8 | 2.88 | 0.66 | 0 | 1.5 | 23.7 | 60.7 | 13.6 | 0.5 | 0 | 98.0 |
表2 作業能率
苗箱搬送速度 (㎝/sec) |
処理苗箱数 (箱) |
所要時間 (分.秒) |
処理能率 (箱/h) |
6.85 | 180 | 35.19 | 305.8 |
表3 移植時の苗の生育および本田生育
育苗型式 | 稲乍部(播種後35日) | 上川農試(播種後36日) | 稲作部 | 上川農試 | |||||||||
苗立 本数 (本) |
草丈 (㎝) |
葉数 | 分げつ 本数 (本) |
地上部 乾物重 (g/100本) |
草丈 (㎝) |
葉数 | 分げつ 本数 (本) |
地上部 乾物重 (g/100本) |
6月30日 茎数 (本/株) |
出穂期 (月日) |
6月20日 茎数 (本/株) |
出穂期 (月日) |
|
490穴型 | 2 | 12.4 | 4.7 | 2.0 | 5.2 | 12.3 | 4.3 | 1.0 | 5.3 | 23.0 | 8.6 | ||
3 | 13.7 | 4.4 | 1.1 | 3.9 | 12.3 | 4.1 | 0.9 | 4.9 | 24.6 | 8.7 | 22.6 | 7.3 | |
4 | 14.9 | 4.2 | 1.0 | 3.7 | 12.8 | 4.2 | 0.9 | 4.7 | 24.6 | 8.8 | |||
448穴型 | 2 | 13.3 | 4.9 | 2.5 | 5.9 | 11.7 | 4.5 | 1.0 | 6.0 | 25.4 | 8.6 | ||
3 | 13.1 | 4.6 | 1.4 | 4.3 | 11.8 | 4.4 | 1.0 | 5.2 | 25.3 | 8.7 | 21.5 | 7.3 | |
4 | 14.1 | 4.4 | 1.0 | 4.2 | 11.9 | 4.2 | 1.0 | 4.8 | 23.2 | 8.8 | |||
中苗マット苗 | 12.9 | 3.4 | 0.0 | 2.2 | 16.9 | 8.9 |
4.成果の活用面と留意点
1)490穴型と従来の448穴型では、播種機の鎮圧ローラのサイズが異なるので、苗箱の共通便用はできない。両者は色・形とも酷似しており一見区別がつかないので、別型式の育苗箱が混入しないよう十分注意する。
2)従来の448穴型の成苗ポットに比べ苗の生育がやや劣るので、播種粒数の調整に留意するとともに、栽植密度は基準の22〜25株/㎡を厳守する。
3)専用の移植機を使用する。
4)「水稲機械移植栽培基準3.成苗(平成8年1月改訂)」に基づいて実施する。
5.残された問題点とその対応