成績概要書(作成平成8年1月10日)
課題の分類: 研究課題名:秋播なたね「Ariana」の品種特性と「キザキノナタネ」の栽培法 (課題名、なたねの品種選定・栽培法と機械化体系に関する試験、良質なたねの栽培法に関する試験) 予算区分:道費、受託 研究期間:平成元〜6年度 担当科:中央農試・畑作第二科 上川農試・畑作科 北見農試・作物科 植遺センター・資源貯蔵科 協力・分担関係: |
1.目的
道央地域の水田転換畑では麦類などが作付け過剰となり、連作栽培が増加していることから、適正な輪作体系を維持するために、新たな転作作物が要望されていた。さらに、なたねの生産振興を図るための作付けの定着化と、既存品種より優れる適品種を選定するとともに、「キザキノナタネ」について、その栽培特性を明らかにし、良品質・安定多収生産のための栽培技術を確立する必要があった。本試験では、外国から導入した秋播なたね「Ariana」(以下「アリアナ」と表す)について、その品種特性を明らかにし、地域適応性を検討するとともに、「キザキノナタネ」について、高品質、多収栽培技術を確立しようとした。
2.方法
1)「アリアナ」の品種特性
(1)各試験場と現地における試験(中央、上川、北見農試、植遺センター、現地4ヵ所、元〜5年)
(2)栽培特性(中央農試、3〜6年)
①標準播(9月上旬)、晩播(9月中旬)
②標植(畦幅60×株間10㎝)、密植(畦幅60×5)
③標肥[N:15(基肥7、追肥8)、P2O5:11.5、K2O:8.9㎏/10a]、多肥(N追肥12㎏/10a、以下同じ)
2)「キザキノナタネ」の栽培法
(1)窒素基肥量[標肥(前述)、標肥の基肥N50%、同25%]、播種期試験(8月下旬〜10月上旬)試験、窒素の追肥量(2、4、8、12、16、32㎏/10a)試験、栽植密度(畦幅60㎝×株間1.25、2.5、5、10、20、40㎝)試験(以上中央農試、5〜6年)
(2)播種期(9月上旬〜下旬)、基肥(2、4、6、8㎏/10a)および追肥量(8、12㎏/10a)試験(上川農試、植遺センター、5〜6年)
(3)播種期(9月上旬〜下旬)試験、窒素施肥量(基肥2、4㎏/10a、追肥6、8、10、12、14㎏/10a)試験(以上北見農試、5〜6年)
(4)雪腐防除試験[播種期9月上旬〜下旬、イミノクタジン・トルコロホスメチル水和剤(未登録)](上川農試、5〜6年)
3.結果の概要
1.「アリアナ」の品種特性
1)成熟期は「キザキノナタネ」および「タイセツナタネ」より3〜4日遅かった。
2)越冬株率はほぼ「キサキノナタネ」および「タイセツナタネ」並で、菌核病罹病株率は「キザキノナタネ」よりやや多く、「タイセツナタネ」並であった。
3)耐倒伏性は「タイセツナタネ」より強く、「キザキノナタネ」並かやや弱かった。
4)子実重は「キザキノナタネ」並で、「タイセツナタネ」より多かった。
5)オレイン酸およびエルシン酸含有率は「キザキノナタネ」並であった。
6)晩播(9月中旬播)により、越冬株率および子実重は減少したが、その減少割合は「キザキノナタネ」よりも小さく、「キザキノナタネ」に比べ晩播適性が優れた。
7)多肥により、総莢数および子実重は「キザキノナタネ」と同様増加した。
2.「キザキノナタネ」の栽培法
1)播種期が遅れると(9月下旬播)、越冬株率は低下し、草丈は短くなり、成熟期は遅れ、子実重は減少した。播種適期は9月上旬と考えられる。
2)追肥窒素量が多くなると、草丈はやや伸長し、成熟期は若干遅れ、子実重は増加したが、過度の窒素追肥は倒伏程度を増加することがあった。
3)基肥窒素量は越冬株率および子実重を考慮すると、2〜4㎏/10aが良く、基肥窒素量が2㎏/10a の場合は追肥窒素量12㎏/10a、同4㎏/10aの場合は追肥窒素量10㎏/10aが適正と考えられる。
表1.各試験場および現地における各項目の総括表
項目 | 品種 | 中央農試 | 上川農試 | 北見農試 | 植遣センター | 平均 | 現地の平均 |
子実重 (kg/10a) |
アリアナ | 324 | 240 | 309 | 346 | 305(113%) | 275 |
キザキノナタネ | 305 | 219 | 310 | 364 | 300(112%) | 249 | |
タイセツナタネ | 276 | 210 | 254 | 334 | 269(100%) | − | |
エルシン酸 (全脂肪酸に対する%) |
アリアナ | 1.5 | 1.5 | 1.2 | 0 | 1.1 | 0.1 |
キザキノナタネ | 0.4 | 1.2 | 0 | 1.1 | 0,7 | 0.1 | |
タイセツナタネ | 39.7 | 39.2 | 43.1 | 37.1 | 39.8 | − |
表2.「アリアナ」の晩播適性
項目 品種 |
越冬株率(%) | 草丈(cm) | 子実重(㎏/10a) | ||||||
標準播 の平均 |
晩播の 平均 |
晩播/ 標準播 |
標準播 の平均 |
晩播の 平均 |
晩播/ 標準播 |
標準播 の平均 |
晩播の 平均 |
晩播/ 標準播 |
|
アリアナ | 87 | 75 | O.86 | 157 | 129 | 0.82 | 338 | 307 | 0.91 |
キザキノナタネ | 88 | 69 | 0.78 | 150 | 122 | 0.81 | 362 | 282 | 0.78 |
表3.各試験場の「キザキノナタネ」の播種期・基肥および追肥窒素量による子実重の要因分析
処理区別 | 中央農試 | 上川農試 | 北見農試 | 植遣センター | 平均 | |
播種期 | 9月上旬 | 366(100) | 339(100) | − | 236(100) | 314(100) |
9月中旬 | 268(73) | 306(90) | − | 195(83) | 256(81) | |
基肥窒素量 | 2㎏/10a | − | 324(100) | 300(100) | 222(100) | 282(100) |
4㎏/10a | − | 321(99) | 309(103) | 209(94) | 280(99) | |
追肥窒素量 | 8㎏/10a | 302(100) | 314(100) | 297(100) | 210(100) | 281(100) |
12㎏/10a | 331(110) | 331(105) | 312(105) | 222(106) | 299(106) |
4.成果の活用面と留意点
1)「アリアナ」は越冬株率、子実重およびエルシン酸含油率が「キザキノナタネ」並であるが、晩播適性において優るため栽培導入が期待される。一方、「キザキノナタネ」は播種適期および適正施肥量などが明らかとなり安定・多収栽培が図られる。なお、栽培に当っては以下を留意する。
2)播種期が遅れると、越冬株率が低下するので、播種適期を厳守する。
3)追肥窒素量を過度に多くすると、倒伏が増加するので、適正な施肥量を守る。
4)イミノクタジン・トルクロホスメチル水和剤(未登録)は雪腐病防除効果が認められる場合がある。
5)本試験で使用した殺虫、殺菌剤はいずれも未登録である。
5.残された問題点とその対応
1)なたねの病害虫防除薬剤の登録は、農業資材試験の中で進める。
2)「アリアナ」の種子生産体制の確立は、農業団体および種苗会社などと協議する。