1995075

【指導参考事項】

成績概要書(作成平成8年1月)

課題の分類:
研究課題名:大豆狭畦幅密植栽培の問題点と省力機械化栽培の可能性
 (大豆の狭畦幅密植栽培実用化試験)
予算区分:道費
担当科:十勝農試研究部豆類第1科
 農業機械科
 土壌肥料科
研究期間:平成4〜7年度
協力・分担関係:

1.目的

 狭畦幅密植栽培における生育、収量特性を明らかにし、栽培技術の問題点を整理するとともに、省力栽培の可能性を検討する。

2.方法

 試験構成は下記のとおり

大豆狭畦幅密植栽培の問題点と省力機械化栽培の可能性

 1)狭睦幅密植栽培の生育・収量およびコンバイン収穫適性に関する試験
 2)密植栽培の施肥法に関する試験
 3)機械化栽培に関する試験
 4)狭畦幅密植栽培現地試験
 5)栽培体系別投下労働時間の比較

3.結果の概要

 1)平成4年から7年まで4年間実施した「カリユタカ」による狭畦幅密植栽培は、標準栽培に比べて収量は同等か若干増収した。

 2)狭畦幅密植栽培の生育特性は、個体の分枝数が減少し主茎型の草姿に変わり、最下着莢節位高が高くなり、茎水分の低下が速まる傾向があるなど、コンバイン収穫適性が向上した。

 3)狭畦幅密植栽培のリン酸増肥(2倍量)は、初期生育を良くするが増収効果は小さいことから、狭畦幅密植栽培においても現行の標準施用量で対応可能である。

 4)密植栽培における開花期前後の窒素追肥は、一般栽培と同様増収を期待できるが、追肥による倒伏増加の危険性もあることから、生育状態を観察した上で施用する。

 5)狭畦幅密植栽培に必要な機材装備としては、畦幅33㎝の7畦用施肥播種機とリールタイプの汎用コンバインで、落粒防止用の改造を要する。

 6)初期の雑草防除が不十分な場合、手取除草が必要となり投下労働時間が大幅に増大する危険がある。

 7)初期の雑草抑制が十分期待できる場合、狭畦幅密植栽培は中耕・手取除草の省略とコンバイン収穫による省力機械化栽培が可能となる。

表1 生育および収量の調査成績(十勝農試「カリユタカ」、平成4.6、7年の平均)
処理
区別
畦間
(㎝)
株間
(㎝)
株立
本数
(本/
株)
密度
(本/a)
成熟

(月日)
倒伏
程度
主茎

(㎝)
主茎
節数
(節)
分枝

(/
個体)
莢数
(/
個体)
莢数
(/㎡)
一莢

粒数
主茎
莢率
(%)
最下着
莢節位
高(㎝)
全重
(㎏/a)
子実重
(㎏/a)
対標
準比
(%)
百粒
重(g)
標準 60 20 2 1,667 1O.6 0.1 57 11.3 2.8 32 532 1.76 56 15.8 49.9 29.8 100 31.3
狭Ⅰ 30 20 1 1,667 10.6 0 55 11.4 2.9 32 540 1.73 52 14.9 51.1 30.1 101 30.6
狭Ⅱ 30 10 1 3,333 1O.7 1.1 70 10.9 1.2 17 556 1.77 90 18.6 52.7 29.6 99 30.7
条Ⅰ 60 10 1 1,667 10.6 0 56 11.2 2.8 32 537 1.74 54 15.9 50.5 30.6 103 31.3
条Ⅱ 60 5 1 3,333 10.6 0.5 66 10.5 1.2 16 544 1.71 81 20.7 52.0 30.3 102 30.5

表2 リン酸2倍量施用(狭ⅡP)の生育および収量の調査成績(十勝農試、平成4〜7年)
処理
区別
畦間
(㎝)
株間
(㎝)
株立
本数
(本/
株)
密度
(本/a)
成熟

(月日)
倒伏
程度
主茎

(㎝)
主茎
節数
(節)
分枝

(/
個体)
莢数
(/
個体)
莢数
(/㎡)
一莢

粒数
主茎
莢率
(%)
最下着
莢節位
高(㎝)
全重
(㎏/a)
子実重
(㎏/a)
対標
準比
(%)
百粒
重(g)
標準 60 20 2 1,667 10.1 0.1 55 11.2 2.5 27 445 1.64 59 14.2 43.0 24.1 30.8
狭Ⅱ 30 10 1 3,333 1O.11 0.8 64 10.7 1.1 15 490 1.64 86 16.7 46.8 24.9 100 30.5
狭ⅡP 30 10 1 3,333 10.12 1.5 69.0 11 0.9 15 511 1.67 89 16.1 49.6 25.5 102 31.O

表3 栽培体系別の作業内容
畦幅 標準畦幅66cm 狭畦幅33cm
体系名 慣行 条播密植 狭畦密植
施肥播種 4畦用施肥播種機(畦幅66㎝) 7畦用施肥播種機(畦幅33㎝)
中耕除草 カルチベータ カルチベータ
(株問除草装置付)
なし
手取除草 あり あり なし
収穫 ビーンハーベスタ ロークロップタイプ リールタイプ
にお積み 汎用コンバイン 汎用コンバイン
ビーンスレッシャー (畦幅66㎝×4条刈り) (刈幅2.1m)

表4 体系別の投下労働時間(時間/ha)
体系名 大豆   秋播小麦(参考)
慣行 条播密植
(現地)
狭畦密植
(現地)
狭畦密植
(目標)
 慣行  備考
整地施肥播種 6.7 6.7 6.7 6.7 4.5  
2.4 雪腐病防除導
土壌処理除草剤 0.4 0.4 0.4 0.4  
茎葉処理除草剤 0.4 0.4  
中耕除草 3.6 6.0  
手取除草 45.O 8.0 25.0  
種草取り 上記に
含まれる
2.0 2.0 2.O 0  
病害虫防除 0.8 O.8 0.8 0.8 1.6  
収穫運搬 47.6 6.O 6 4.5 2.4  
堆肥散布・すき込み 4.8 4.8 4.8 4.8 6.9 麦稈処理・緑肥播種
108.9 34.7 45.7 19.6 18.2  
 注1)投下労働時間は、北海道農業生産技術体系に準拠した。ただし、斜体の数値は、現地試験農家の実際例に基づいた。
2)狭畦密植(目標)は,広葉雑草の茎葉処理除草剤の使用を前提とし,かつ改良型大型コンバイン(刈幅4.2m)を利用する場合の体系で試算した。

4.成果の活用と留意点(狭畦幅密植栽培の問題点)

 1)大豆の生育初期の雑草防除が不十分な場合、中耕除草ができず手取除草の労働強化となるため狭畦幅栽培の導入は困難である。
 2)一方、土壌処理除草剤による除草効果が十分期待できる場合、狭畦幅密植栽培は中耕と手取除草を省略し、省力機械化栽培が可能となるが、実施に当たっては以下の点に留意する。
 3)密植栽培の肥培管理は、標準施肥量を基本に行い、窒素追肥は一般栽培と同様生育状態を観察して行う。
 4)密植栽培では菌核病の発生が多くなるので、適期防除に努める。
 5)除草剤散布、薬剤散布、窒素追肥等は防除畦を定めて行う。

5.残された問題とその対応

 1)土壌処理除草剤の除草効果は土壌、気象条件によっては不安定なこともあるため、生育期にも使用できる広葉雑草用除草剤の開発が必要である。
 2)多収性が期待できる草型(例えば密植適性の高い主茎型または中間型)の開発が必要である。そのため、平成8年より大豆の草型育種を行う予定である。