【研究参考】

成績概要書

1995077(作成平成8年1月)

課題の分類:
研究課題名:小麦遺伝資源のしょうゆ醸造適性に関する特性評価
(小麦遺伝資源の醸造適性関連形質の評価)
予算区分:
共同担当科:北海道立植物遺伝資源センター研究部資源利用科
                       資源貯蔵科
研究期間:平成6年度
協力・分担関係:キッコーマン株式会社研究本部

1.目的

 道産小麦が外国産小麦との競争に打ち勝って行くため、めん用、パン用、しょうゆ用など用途別に優れた品質を備えた品種の開発が迫られている。これらのうち、最近需要が増大しているしょうゆ用品種の開発は、これまでほとんど手掛けられていなかった。そこで、今後の育成場でのしょうゆ用品種育成の取組みに先立ち、しょうゆ醸造関連主要成分である蛋白質含量とペントース含量に着目して、道立農試が保存する小麦遺伝資源についてのそれら特定成分形質の評価を行い、さらに、高蛋白質含量と低ペントース含量の特性を兼ね備えた育種母材を選定して、しょうゆ用高品質品種育成の推進に寄与する。

2.方法

 1)小麦遺伝資源のしょうゆ醸造関連成分の評価植物遺伝資源センター及び北見農試で保存されていた春播小麦1,197点、秋播小麦730点の遺伝資源について、蛋白質含量とペントース含量の特定成分を分析測定した。

 2)しょうゆ小規模醸造試験(実施担当:キッコーマン株式会社研究本部)上記1)で供試した小麦遺伝資源の中から、蛋白質含量とペントース含量の2成分に関して特徴的な特性を有した材料7点を選び、比較品 種3点と合わせて10点をしょうゆ小規模醸造試験に供試し、生揚げしょうゆの成分分析並びに官能検査を実施した。

3結果の概要

1)しょうゆ用小麦として最も重要な醸造関連成分である蛋白質含量とペントース含量の分析調査を実施し、その結果をデータベース化した。

2)蛋白質含量は、品種間で極めて大きな変異が認められ、また、生産年の違いによる大きな変動も認められた。しかし、共通に供試した品種の序列には、生産年の違いによる大きな逆転が認められなかったことから、高蛋白質含量の育種母材として、春播小麦30点、秋播小麦23点をスクリーニングした。

3)ペントース含量も、品種間で大きな変異が認められたが、生産地や生産年の違いによる変動は蛋白質含量よりも小さかった。低ペントース含量の育種母材として春播小麦22点、秋播小麦13点をスクリーニングした。

4)蛋白質含量及びペントース含量に特徴を有する材料7点を選び、小規模醸造試験に供試した。小麦原料の総窒素含量は生揚げしょうゆの総窒素含量との間に正の相関が認められた。また、小麦原料のペントース含量は生揚げしょうゆの色番との間に負の相関が認められ、ペントース含量の高い原料ほどしょうゆの色が濃くなった。

5)高蛋白質含量と低ペントース含量の特性を併せ備えるとともに、他の実用形質も考慮に入れて、しょうゆ用高品質小麦の品種育成に必要な育種母材と成りうる遺伝資源として春播小麦7点、秋播小麦4点を選定することができた。


図1春播小麦のペントース含量と子実蛋白質含量の散布図(代表値)(遺伝資源センター平成3年以前産)


図2春播小麦のペントース含量と子実蛋白質含量の散布図(代表値)(遺伝資源センター平成5年産)


図3秋播小麦のペントース含量と子実蛋白質含量の散布図(北見農試産)


図4秋播小麦のペントース含量と子実蛋白質含量の散布図(遺伝資源センター平成3・4年産)

4.成果の活用面と留意点

 1)しょうゆ用高品質小麦品種育成のため、遺伝資源の高蛋白質含量及び低ペントース含量に関する情報並びに育種母材を提供する。

5.残された問題とその対応

 1)新規導入分を含め、665点の遺伝資源が未調査であるため、それらについて分析調査を実施し、データベース化する。
 2)しょうゆ醸造適性に関連するその他成分も明らかにするとともに、醸造適性評価法を確立する。