【研究参考】
成績概要書(作成平成8年1月)
課題の分類: 研究課題名:大豆のアイソザイム分析による遺伝資源評価 (豆類アイソザイム分析による遺伝資源評価と遺伝解析) 予算区分:道費 担当科:植物遺伝資源センター研究部資源貯蔵科 担当者: 研究期間:平5〜7年度 協力・分担関係: |
1.目的
道内で収集した大豆在来種及び植物遺伝資源センターで登録・保存中の大豆遺伝資源について、アイソザイム分析により、分子レベルから変異性・区別性に検討を加え、遺伝資源分類、評価のための手法としての有効性を探るとともに、有用形質との関連を解析することによって得られた情報を育成場に提供し、育種の効率化に資することを目的とした。
2.方法
1)供試材料
(1)道内在来種収集大豆在来種142点(植物遺伝資源センターで道内から収集)比較道内大豆品種73点(植物遺伝資源センターで生態的、形態的特性を調査した登録・保存中の道内品種)
(2)登録遺伝資源植物遺伝資源センターで登録・保存中の大豆品種1165点
2)電気泳動の方法発芽後の子葉から粗酵素液を抽出し、2反復以上電気泳動した。1品種・系統当たり3個体を供試した。
3)調査した酵素
①AC0アコニターゼ
②APH酸性フォスファターゼ
③D1Aダイアホラーゼ
④ENPエンドペプチターゼ
⑤ESTエステラーゼ
⑥lDHイソクエン酸脱水素酵素
⑦PGMフォスフォグルコムターゼ
⑧LAPロイシンアミノペプチターゼ
3.結果の概要・要約
1)大豆子葉を用い、アイソザイム分析をした結果、AC0では6つの型、APH及びDlAでは3つの型、ENP、EST及びPGMでは2つの型、lDHでは4つの型、LAPでは1つの型を検出した。
2)道内在来種140点をザイモグラムを利用して25系統群に分類できた。この140点を種皮色、臍の色、粒大の3形質で判定した場合20系統群に分類されたことを考えると、ザイモグラムによる分類は、種子の可視的形質による分類と同程度に、実用性をもつと判断された。
3)道内在来種140点をザイモグラム型と種子形質の変異とを組み合わせて分類することにより、66系統群に分けることができた。また、80点は栽植することなく既知の品種と同じグループとして分類し、関連性を推定するための絞り込みをすることができた。
4)道内における純系選抜品種親子間のザイモグラム型についての相同性は酵素によってはやや低かったが、交配育成品種親子間ではザイモグラム型についての相同性は比較的高いことが示された。
5)登録遺伝資源1118点をザイモグラムを利用して109の系統群に分類できた。
6)登録遺伝資源では、ザイモグラム頻度に地域特異性がみられた。すべての酵素で北海道産と道内育成系統のザイモグラム頻度が類似しており、DIA、ENP、EST及ぴIDHにおけるザイモグラム頻度が、北海道産及び道内育成系統と他の地域産、特に外国産との間で異なった。このことは、分子レベルからも、本道適応性に関する遺伝変異・分化を示唆した。本道適応性に関連する可能性があるザイモグラム型はDIA1型、ENP1型、EST2型、IDH1型であった。
7)登録遺伝資源について、種皮色が黄白の場合DIA1型の頻度が高かった。また、臍の色が黄あるいは極淡褐の場合もDIA1型の頻度が高かった。
8)有用形質とザイモグラムの関連は有用形質の特性データを十分に入手して再検討する必要がある。
表1 大豆登録遺伝資源の原産地とザイモグラムの関係
原産地 | 点数 | AC0 | APH | DIA | ENP | EST | IDH | ||||||||||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 1 | 2 | 3 | 1 | 2 | 3 | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 2 | 3 | 4 | ||
北海道 | 92 | 91 | 1 | 3 | 88 | 1 | 60 | 32 | 57 | 35 | 79 | 13 | 59 | 29 | 4 | ||||||
道内育成系統 | 243 | 240 | 1 | 2 | 4 | 239 | 199 | 44 | 154 | 89 | 200 | 43 | 154 | 80 | 8 | 1 | |||||
他府県 | 259 | 246 | 4 | 4 | 2 | 1 | 36 | 219 | 4 | 97 | 160 | 2 | 162 | 97 | 200 | 59 | 168 | 28 | 43 | 20 | |
中国 | 216 | 183 | 4 | 23 | 3 | 3 | 9 | 177 | 301 | 80 | 136 | 20 | 196 | 212 | 4 | 61 | 59 | 70 | 26 | ||
アジア | 68 | 56 | 3 | 7 | 2 | 4 | 57 | 7 | 20 | 48 | 12 | 56 | 66 | 2 | 25 | 19 | 13 | 11 | |||
旧ソ連 | 7 | 7 | 4 | 3 | 4 | 3 | 1 | 7 | 7 | 5 | 1 | 1 | |||||||||
ヨーロッパ | 114 | 87 | 27 | 1 | 77 | 36 | 44 | 69 | 1 | 36 | 78 | 111 | 3 | 39 | 36 | 20 | 19 | ||||
北米 | 78 | 52 | 11 | 15 | 2 | 7 | 60 | 11 | 28 | 50 | 10 | 68 | 76 | 2 | 27 | 12 | 21 | 18 | |||
合計 | 1077 | 962 | 22 | 77 | 9 | 6 | 1 | 64 | 921 | 92 | 532 | 542 | 3 | 451 | 626 | 951 | 126 | 533 | 268 | 180 | 96 |
4.成果の活用面と留意点
1)大豆遣伝資源の分類、評価、交配母本選定の参考として利用する。
2)ザイモグラム型は明瞭なバンドのみによる判定であることを考慮したうえで利用する。
5.残された間題点とその対応
1)有用形質とザイモグラムとのより詳細な関連性の解析を効率的に行うため、有用形質
等のデータベース化が必要である。そのため、特性データペースの構築を計画的に実施
する。