【指導参考事項】1995102
成績概要書(作成平成8年1月)
課題の分類: 研究課題名:生食用ブドウ品種の特性調査(生食用ブドウ品種選定試験) 予算区分:道費 担当科:中央農試園芸部果樹第二科 研究期間:平3〜7年度(1991〜95) 協力・分担関係:なし |
1.目的
北海道の生食用ブドウは「キャンペルアーリ一」と「デラウェア」で大部分を占めており食味、外観の向上を求める消費者ニ一ズに対応できない。これらに代わる品種の選定のため、昭和61年から場内および現地において適応性を検討してきた。平成3年以降は品種を絞り試験を継続し、「ノースプラック」(平成3年度成績会議)を優良品種として普及すると共に、13品種について耐寒性、熟期、生産力、果実品質などの特性を調査した。また、現地の要望の強いハウス栽培向き品種選定のため、四倍体大粒種、欧州種等の現地ハウスにおける特性を調査した。
2.方法
試験場所:露地中央農試、現地・仁木町ハウス現地・余市町
供試品種・系統数:中央農試61品種・系統(対照品種2、参考品種5)仁木町5品種(対照品種2)余市町5品種(対照品種2)
栽培方法:棚仕立て、片側1本主枝整枝反復樹数:露地4樹(一部3樹)ハウス8〜9樹
3.結果の概要
(1)露地向き品種
①試験に供試した61品種・系統の内、今後導入される可能性があると思われる13品種について特性表に示した。
②枯死芽率、枯死樹の発生からみた耐寒性は無核品種は「ソベリンコロネイション」「ヒムロッドシードレス」が高く、有核品種では「ニューヨークマスカット」「オールウッド」「イェーツ」が高かった。
③熟期は無核品種では「バネッサ」「ソベリンコロネイション」が早く、有核品種では「ニューヨークマスカット」「セネカ」「アテンズ」が早かった。
④収量は無核品種では「ソベリンコロネイション」が多く、有核品種では「オールデン」「イェーツ」が多かった。
⑤果粒は無核品種では「アインセットシードレス」が大きく、有核品種では「オールデン」「イェーツ」が大きかった。
⑥食味は無核品種では糖度、肉質などから「バネッサ」「アインセットシードレス」が良かった。「レークモント」は肉質が悪く、「ソベリンコロネイション」は淡白すぎた。有核品種では「イェーツ」が成熟した年は糖度が高く香りも適度であった。
⑦「バネッサ」「アテンズ」は年により裂果が多発し、「オールデン」も裂果が発生することがあった。
⑧以上から無核品種は「デラウェア」を、有核品種は「キャンベルアーリー」を対照として特性表を作成した。
(2)ハウス向き品種
①「ノースレッド」は着色が良かった。熟期、収量、果実品質などは「ポートランド」並であった。「旅路」は「バッファロー」と比較して熟期は遅かったが果実品質は同程度であった。
②欧州種「リザマート」、四倍体品種「紀伊豆」は寒害は少なく、果粒が大きく、食味も良かったが裂果の発生が多かった。欧州種「バラディー」は寒害が多く発生し、熟期が遅かった。
③「旅路」は「バッファロー」を、その他は「ポートランド」を対照として特性表を作成した。
特性表(露地向き品種)
品種名 | 熟期 | 耐寒性 | 収量 | 果粒 | 食味 | その他 |
無核品種 | ||||||
パネッサ | 並 | 弱 | 少 | 大 | 良 | 年により裂果多発 |
ソベリンコロネイション | 並 | 並 | 多 | 大 | 不良 | 食味淡白、配布制限 |
ヒムロッドシードレス | 遅 | 並 | 並 | 大 | 並 | 特異香、脱粒しやすい |
アインセットシードレス | 遅 | 弱 | 並 | 大 | 良 | 着色良好、配布制限 |
レークモント | 遅 | 弱 | 並 | 並 | 不良 | 脱粒しやすい、はく皮難 |
有核品種 | ||||||
ニューヨークマスカット | 早 | 並 | 少 | 小 | 良 | マスカット香、果皮に果肉残る |
セネカ | 早 | 弱 | 少 | 小 | 良 | 特異香 |
アテンズ | 早 | 弱 | 少 | 小 | 並 | 年により裂果多発、糖度低い |
オールウッド | 並 | 弱 | 少 | 小 | 良 | フォクシー香強い |
オールデン | 並 | 弱 | 並 | 並 | 並 | 年によリ裂果発生 |
スチューベン | 連 | 弱 | 並 | 小 | 良 | 熟期遅い |
イェーツ | 遅 | 弱 | 並 | 並 | 良 | 熟した場合は食味良い |
レッドナイアガラ | 遅 | 弱 | 並 | 小 | 良 | ナイヤガラと同様 |
特性表(ハウス向き品種)
品種名 | 熟期 | 寒害 | 収量 | 果粒 | 食味 | その他 |
旅路 | 遅 | 並 | 並 | 並 | 並 | GA2回処理 |
ノースレッド | 並 | 並 | 並 | 並 | 並 | 着色良好 |
紀伊豆 | 遅 | 並 | 多 | 大 | 良 | 食味良、裂果多、熟度不均一 |
リザマート | 遅 | 並 | 多 | 大 | 良 | 食味良、裂果多 |
凡例
露地向き品種:無核品種はデラウェアと、有核品種はキャンベルアーリーと比較
ハウス向き品種:旅路はバッファローと、その他はポートランドと比較
熟期:早、並
遅耐寒性:強、並
弱収量:多、並
少果粒:大、並
小食味:良、並
不良寒害:多、並、少
(食味は糖度、酸度、果肉特性、果肉硬度、香りなどから総合的に判断)
4.成果の活用面と留意点
①生食用ブドウ導入に当たっての資料とする。
②「ソベリンコロネイション」「アイセットシードレス」は試験目的以外の販売、無償譲渡または増殖材料としての配布が制限されている。
5.残された問題とその対応
本道に適応する大粒および無核品種、裂果などの問題のないハウス向き品種の選定。「ブドウ新品種育成試験」(平6〜14年)、「生食用ブドウ優良品種選定試験」(平成8年度新規予定課題)などで対応。