【指導参考事項】

1995105

成績概要書   (作成平成8年1月)

課題の分類:北海道野菜栽培 メロン栽培一般
研究課題名:メロン栽培におけるトンネルの形状と省力換気法および水分管理
       (北海道・東北地域における高品質メロンの機械化・軽作業化による省力安定生産技術の確立)
予算区分:国補(地域重要)
研究期間:平5〜7年(1993〜1995)
担当科:中央農試園芸部野菜花き第一科
協力・分担関係:中央農試農産化学部、農業機械部
          青森農試砂丘分場
          秋田農試
          山形砂丘地農試

1.目的

 北海道は、夏秋期のメロンの主要な供給地として位置づいているが、より一層の栽培管理の省力化・軽作業化と高品質安定生産技術の確立が求められている。この試験では、安定生産に結びつくトンネルの形状とその省力的な換気方法および生育時期別土壌水分が果実外部品質に及ぼす影響について検討し、栽培技術組み立ての資料とする。

2.方法

1)トンネル省力換気法
 (1)換気法:省力換気法(巻き上げ換気法)、慣行法(裾上げ換気法)
 (2)トンネル形状:平型(巾2.0m及び2.4m、高/巾比=0.3)
            円形(巾1.2m及び2.0m、高/巾比・0.5)
            家型(巾2.4m、高/巾比・0.3)
 (3)トンネルフィルム:保温性強化塩ビ、P0フィルム

2)トンネルの形状に関する試験
 (1)トンネル形状:平型(巾2.0m、高/巾比=0.3)
            円形(巾2.0m、高/巾比=0.5)
 (2)耕種概要:作型:トンネル早熟栽培
          定植期:平成5年(5月11日)、平成6年(5月18日)、平成7年(5月21日)
          換気方法:省力換気法(解放巾/トンネルフィルム巾が平型=円形となるよう調節)
 (3)供試品種:平成5年:キングメルティー、キングナイン、天恵
          平成6、7年:キングメルティー

3)生育時期別水分管理に関する試験
 (1)生育時期別土壌水分条件
   ①花芽発育期(定植〜開花期)但し果実肥大期は標準(pF2.2〜2.4):多(pF1.6〜1.8)、標準      (pF2.0〜2.2)、少(pF2.4〜2.6)
   ②果実肥大期(着果〜ネット完成期)但し花芽発育期は標準(pF2.0〜2.2):多(pF1.8〜2.0)、      標準(pF2.2〜2.4)、少(pF2.5〜2.7)(2)試験処理:未熟火山性土(砂壌土)を充填した巾130    ㎝、奥行640㎝、高さ45㎝の無底の枠内で行い、灌水は灌水チューブで行った。pF値は地表下15㎝    で測定した。

3.結果の概要

1)トンネル省力換気法省力換気トンネルは慣行トンネルに比べ設置時間は1.4倍かかるが換気作業時間は0.22倍であり、大きな省力効果があった。この省力換気法は様々なトンネル形状に応用できた。また、塩ビフィルムより伸縮および粘着の少ないPOフィルムの方が適応性が高かった。

2)トンネルの形状に関する試験円形トンネルに比べ平型トンネルでは、トンネル開閉を行っている時期の保温性がやや高く、特に5月〜6月上句の保温性が高かった。そのため平型トンネルでのメロンの生育および収量は円形トンネルより優れた。したがって、トンネル早熟栽培におけるトンネル形状は円形(高/巾比0.5)よりも平型(同比0.3)の方が安定多収であると結論された。

3)生育時期別水分管理に関する試験花芽発育期の土壌少水分条件は、生育を抑制し、両性花の質を低下させ、着果率の低下や不良果形果の発生を助長し、果の肥大およびネット形成にも負の影響を与えた。多水分条件も低温環境下では同様の影響を生じた。また、果実肥大期の土壌少水分条件も果の肥大を抑制し、ネットの形成も劣る傾向となった。このことから、安定した着果および果実肥大を得るために適当な土壌水分条件は、花芽発育期はpF2.0〜2.2、果実肥大期はpF2.2〜2.4と考えられた。

表1 省力換気トンネルと慣行トンネルにおけるトンネルフィルム開閉時間(分/10a)
トンネル種類 開放作業 閉鎖作業 合計
慣行トンネル 6.1(100) 9.4(100) 15.5(100)
省力換気トンネル 1.8(29) 1.7(18) 3.5(22)

表2 円形トンネルと平型トンネルとのトンネル内気温差(平型の値一円形の値)
項目 年度 5月6月7月8月
下旬上旬中旬下旬上旬中旬下旬上旬中旬下旬
最高
気温
3年間平均値 +1.7+0.2+0.2+1.5 +0.7+0.2+0.9+1.8 
最低
気温
3年間平均値 +0.9+0.40.0+0.5 +0.1+O.4-0.2+0.3 
8時の
気温
平成7年 +1.5+2.1+2.0+0.9+0.7+1.4+2.3 +0.1+1.3
 アンダーライン:トンネル開閉期間、アンダーラインなし:トンネル開放期間

表3円形トンネルと平型トンネルでのメロンの生育・収量
年度 トンネル形状 つる長
(cm)
8節開花始
(月日)
着果率
(%)
平均
着果日
(月日)
成熟
日数
(日)
平均
1果重
(g)
良果
収量
(kg/a)
ネット
密度
糖度
(Brix)
平成6年 円形トンネル 156 7/14 48 6/15 45.4 1499 178.8(100) 4.4 14
平型トンネル 181 /12 42 6/13 44 1695 197.9(111) 4.2 14.2
平成7年 円形トンネル 202 6/29 4 7/9 49.7 1428 135.3(100) 3.3 13.1
平型トンネル 207 6/28 9 7/8 48.4 1559 188.5(139) 3.4 13.1

表4 生育時期別土壌水分条件と生育、着異性および果実品質(平成7年度キングメルティ)
処理区別 つる長(cm) 両性花
着生率
(%)
着果率
果/両性
花(%)
摘果
平均
果重(g)
不良果
形果発
生率(%)
平均
一果重
(g)
ネット
形成
糖度
(ブリッ
クス)
時期 水分条件 開花期 収穫終了時
花芽 202 224 96.0 77.1 64 8.1 1.358 4.67 15.6
発育 208 222 97.5 76.9 64 3.3 1.376 4.63 15.5
191 210 92.5 63 39 22.2 1.177 4.47 15.9
果実   220   1.432 4.63 15.4
肥大 216 1.369 4.6 15.5
208 1.238 4.47 15.6
注)つる長の収穫終了時は摘芯された28節まで、不良果形果は扁こけ果と変形果 ネット形成は、密度・太さ・盛上りにそれぞれ与えた指数5(密・太・強)〜1(疎・細・弱)の平均値

4、成果の活用面と留意点
1)トンネル省力換気法:メロン以外のトンネル栽培およびハウス内トンネルにも応用できる。

5、残された問題とその対応
1)トンネル省力換気法:資材の改良による設置時間の短縮と資材費の軽減が必要である。
2)トンネルの形状:山および高/巾比が異なるトンネルでの検討。
3)水分管理法:他の気象要因と関連した土壌水分管理と水分動態および効果の検討