【指導参考事項】

1995108

成績概要書(作成平成8年1月)

課題の分類:北海道作物園芸
研究課題名:ギョウジャニンニクの種子繁殖技術と加工食品の開発
予算区分:共同
研究期間:完平7年度(平5〜7年度)
担当科:十勝農試研究部園芸科
    食加研食品加工部農産食品科
協力・分担関係:なし

1.目的

 ギョウジャニンニクの種子繁殖技術および加工原料としての成分評価の資とする。

2.方法

1)種子繁殖繁殖の確立

(1)露地での定着率向上の対策
  ①は種当年の越冬率向上
  ②播種当初の雑草対策
  ③覆土深
(2)収穫までの年数の短縮
  ①施肥法
(3)採種性の検討
  ①施肥法
  ②採種母材の差異
(4)採種個体の生育調査

2)加工食品の開発

(1)食品素材評価
(2)採種地別個体群、収穫時期および凍結保存中の成分変化
(3)ギョウジャニンニクコンニャクの試作

3.結果の概要

1)種子繁殖技術の確立

(1)露地での定着率向上
  ①播種当年の生存株率は鎮圧することで凍上害のあるなしにかかわらず高かったが、土壌の硬化による根量の不足が確かめられた。鎮圧の程度について更に検討を要する。べたがけは凍上害が問題とならない年には生育を促進することから効果があるが、凍上害が問題となる年では生存株率が低くなる。
  ②播種当初の雑草対策としては種後および翌春の雑草発生前のペンデイメタリン(未登録)による土壌処理は除草効果が高く、生存株率が高いことから除草剤使用の可能性が認められた。
  ③播種時の覆土深は凍上害がない場合は2㎝程度が適当であった。

(2)収穫までの年数の短縮
  ①播種前の堆肥施用および播種翌年からの萌芽期に化成肥料を表層施用することは生育促進に効果があり収穫までの年数を1〜2年短縮できると判断された。

(3)採種性の検討
  ①近交採種、母系採種とも生育が旺盛な個体群の採種量が多い傾向であった。また施肥すると生育が旺盛になり花球数が増加することで採種量が増加した。

(4)採種個体の生育調査
  ①近交系は母系系統に比べ生存株率、生育が劣る傾向にあった。採種方法による種子の充実度の低下および近交弱勢による可能性があり、当面は生育の旺盛な個体群間で放任授粉による種子を利用して種子繁殖を行うのが安全と思われた。

2)加工食品の開発

  ①山採りと栽培には一般成分には大きな差はなかったがカルシウム、鉄、ビタミン類で差が見られた。
  ②アリナーゼ活性、ビタミンCの含量は採取地別個体群間の差は年次変動が大きく判然としなかった。
  ③生育ステージでは展葉前から抽台期にかけてアリナーゼ活性は急激に減少した。
  ④凍結保存中のアリナーゼ活性は約1ヶ月で8割が失われた。ビタミンCも減少したがβカロチンとビタミンEは変化が少なかった。
  ⑤ギョウジャニンニクコンニャクを試作した。

表1.播種当年の越冬率向上
播種 処理区別 生存株率(%) 草丈(cm) 鱗茎重(g)
H6 H7 H6 H7 H7
5年 無処理 71.9 51.9 4.6 4.7 0.13
鎮圧 75.7 48.1 4.7 5.6 0.21
べたがけ 73.8 73.1 4.7 5.8 0.21
べた+鎮 65.4 60 4.5 4.9 0.16
6年 無処理 34.3 4.4 0.12
鎮圧 46.9 4.2 0.11
べたがけ 16.3 4.3 0.1

表2.播種当初の雑草対策
播種 処理区別 雑草残存量(%) 生存株率(%) 鱗茎重(g)
H6 H7 H6 H7 H7
5年 完全除草 23 51.9 5 0.07
播種後+手取り 0 52.5 34.4 0.17
播種後+萌芽始 0 41.3 22.5 0.16
播種後+萌芽期 0 40.7 33.8 0.16
6年 無処理 120 6.9 0.11
播種後+萌芽始 18 26.9 0.1
播種後+萌芽期 20 25 0.08

表3.覆土深
播種 処理区別 平成6年
生存株率(%) 鱗茎重(g)
5年 1cm 42.2 O.061
2cm 49.6 0.095
3cm 31.9 0.067
4cm 31.1 0.077

表4.生育年限の短縮
播種 処理区別 生存株率(%) 草丈(cm) 鱗茎重(g)
H6 H7 H6 H7 H6 H7
5年 無施用 75.4 57.9 4.9 5.6 0.07 0.1
堆肥 62.9 40.4 5.1 7.1 0.08 0.24
堆肥+化成肥料 60.9 17.5 5.2 6.5 0.07 0.19
化成肥料 63.4 30.4 4.6 6.5 0.07 0.2
注:化成肥料はH6.H7施用

表5.施肥量と採種量
N施用量(㎏/10a) 花球数(球/㎡) 種子数(粒/㎡) 千粒重(g)
H5 H6 H7 H5 H6 H7 H5 H6 H7
0+O+O+0 28 103 125 2156 4144 7194 6.1 8.7 12.4
5+O+0+0 207 110 110 5569 3851 7992 5.9 10 10.3
15+5+5+5 281 236 200 7059 11400 8504 6.2 9.6 10.1
25+5+5+5 488 249 270 11858 8207 16813 6.1 9 9.6
注:施肥はH4:4水準H6,7:2水準

表6.採種母材と採種量
母群記号 花球数(球/㎡) 種子数(粒/㎡) 千粒重(g)
*H5 H5 H6 H7 H6 H7 H6 H7
HT 133 276 19 520 398 5603 8.8 18.8
KF 21 47 2 83 381 3681 0.5 11.2
KU 71 123 10 257 140 1955 7.1 16.1
0K 73 49 2 122 39 1277 10.3 14.3
0N 139 284 27 310 683 3606 7.5 14.3
SH 37 263 12 233 191 2501 3.1 12.2
ST 60 59 3 233 43 1643 2.3 17.4
TU 27 24 1 145 19 1526 10.5 19.3
 注)*:近交採種による

表7.収穫時期と成分推移(H6)
項目 5.11 5.16 5.23 6.2 6.7 6.14
ピルビン酸 593 123 32 30 95 103
ビタミンC 88 69 50 39 36 33
草丈(c㎜) 16 28 35 43 45 45
 注)ピルビン酸:㎎/100g、ビタミンC:㎎/1OOg

表8.冷凍期間と成分推移(H6)
項目 凍結前 1か月 2か月 3か月 4か月 5か月
ピルビン酸 234 50 27 2 0 0
ビタミンC 89 60 43 41 32 18
 注)ピルビン酸:㎎/100g、ビタミンC:㎎/1OOg

4.成果の活用面と留意事項
1)ギョウジャニンニクの種子増殖および加工原料として利用する場合の成分量の資とする。
2)凍上害が問題となる地域では、採種量を多くする。
3)採種は生育の旺盛な個体群間でとりあえずは放任受粉とする。

5.残された問題とその対応
1)育苗移植栽培の検討
2)要素別施肥量の検討