【指導参考事項】
1995130
成績概要書 (作成平成8年1月)
課題の分類:北海道生産環境土壌肥料 研究課題名:キャベツの品質向上のための窒素栄養診断と施肥法 (栽培環境に対応した露地野菜の品質制御技術の確立(パートI)) 予算区分:道単 研究期間:平成5年〜7年 担当科道立中央農試環境化学部土壌資源科 協力・分担関係なし |
1.目的
栽培環境によって変動する生育特性や内部品質成分の推移などの栄養生理特性を作型別に明らかにし、収穫時の品質および生産性と生育途中の栄養状態の関連を検討することにより収穫時の形質を予測しようとした。さらに、この窒素栄養診断法を用いることにより分肥の判断を行い、生産性を維持した高品質キャベツの生産を目的とした。
2.方法
1)試験地、土壌型:場内(褐色低地土)、千歳市(未熟火山性土)
2)供試品種:場内(金糸201、アーリーボール)、千歳(アリーボール)
3)耕種概要:晩春まき播種5月中旬〜6月上旬、定植6月中旬〜下旬、収穫8月中旬初夏まき播種7月上旬、定植7月下旬〜8月上旬、収穫9月下旬〜10月下旬
4)処理区:①ON②1/2N③3/4N④N(22kg/10a)⑤2N⑥3N⑦分施(75+25)⑧分施(50+25)⑨分施(50+50)
3.結果の概要
①窒素施肥量に対する収量の反応は両品種とも窒素施肥量が22㎏/10aまでは増加してゆく傾向にあるが、それ以上では頭打ちとなった。窒素吸収量と収量には両品種とも高い正の相関関係があった。また、窒素施肥量と収穫期の結球部の糖含量の関係は両品種とも、窒素施肥量が多くなると糖含量は低くなる傾向を示した。
②外葉部の硝酸含量と結球重は両品種とも相関係数は高く、比較的安定しており、結球初期に高くなる傾向を示した。
③葉色値であるSPAD値は収穫時の結球の糖含量と安定した負の相関係数を示し、結球初期で高い値を示した。
④目標収量値を結球重で1,250gとすると、外葉の硝酸濃度は金系201では750mg/100FW以上、アーリーボールでは600㎎/100gFW以上必要であった。この時、結球の硝酸含量を低く押さえるためには生育途中の硝酸含量も極端に高めないようにする必要がある。
⑤目標糖含量を晩春まき2.5%、初夏まき3.5%とすると、これを実現するためのSPAD値(葉色)は金系201の晩春まき50以下、初夏まき40以下、アーリーボールの晩春まき50以下、初夏まき45以下であることが必要であった。
⑥外葉の硝酸含量が高いと分施による増収効果が低下する傾向を示し、分施により20%増収が見込める外葉の硝酸含量を推定すると金系201で500mg/100gFW以下、アーリーボールで300g/100gFW以下であった。
⑦SPAD値が高いと糖含量が分施によってより低下しており、分施により糖含量の低下を起こさないSPAD値を推定すると金系201で35以下、アーリーボールで40以下であった。
⑧高糖度のキャベツを生産するためには基肥窒素量を15.4〜16.5kg/10a程度にし、分施時期に外葉部の硝酸含量とSPAD値(葉色)で窒素栄養診断を行い生産性と糖含量を予測し分施の可否を判断することが合理的であると考えられ、その基準を表にまとめた。
図1 生育途中の外葉部の硝酸含量と結球重との関係
図2 生育途中の外葉のSPAD値(葉色)と結球部(収穫時)の糖含重との関係
表1 窒素栄養診断による品質(楯含量)と収量の予測と分施判断
金系201 | アーリーボール | 収量の予測と 分施の影響 |
糖含量の予測 | 糖含量に対する 分施の影響 |
分施 判断 |
|||
硝酸含量 (mg/100gFW) |
SPAD値(葉色) | 硝酸含量 (mg/100gFW) |
SPAD値(葉色) | 晩春まき | 初夏まき | |||
750以上 | 50(40)以上 | 600以上 | 50(45)以上 | 一球重1250g以上 | 2.5%以下 | 3.5%以下 | 分施で低下 | × |
35〜50(40) | 40〜50(45) | 分施の効果は小さい | 2.5%以上 | 3,5%以上 | 分施でやや低下 | × | ||
500〜750 | 50(40)以上 | 300〜600 | 50(45)以上 | 一球重1000〜1250g | 2.5%以下 | 3.5%以下 | 分施で低下 | × |
35〜50(40) | 40〜50(45) | やや分施の効果あり | 2.5%以上 | 3.5%以上 | 分施でやや低下 | × | ||
35以下 | 40以下 | 2.5%以上 | 3.5%以上 | 分施で低下しない | ○ | |||
500以下 | 35〜50(40) | 300以下 | 40〜50(45) | 一球重1000g以下 | 2.5%以上 | 3.5%以上 | 分施でやや低下 | × |
35以下 | 40以下 | 分施の効果大きい | 2.5%以上 | 3.5%以上 | 分施で低下しない | ○ |
4.成果の活用面と留意事項
(1)本試験の作型は晩春まきと初夏まきを対象としたものである。
(2)栄養診断は結球初期に生育中庸な個体10個以上で行う
(8)有機物管理は施肥標準に準ずる。
5.残された問題点とその対応
(1)土壌診断との組み合わせ。
(2)気象の影響の取り込み。