【指導参考事項】
1995132
成績概要書(作成平成8年1月)
課題の分類:総合農業生産環境土壌肥料 研究課題名:ハウストマトの窒素施肥法及び内部品質変動要因の検討 (野菜における減肥・有機栽培技術の確立) 予算区分:道単 研究期間:平3−7年度 担当科:道南農試研究部土壌肥料科 協力・分担関係:なし |
1.目的
有機物と化学肥料との合理的施用法を検討し、クリーン農業の実現に向けた減肥・有機栽培技術の確立をめざす。
2.方法
1)減肥・有機栽培技術確立試験
(1)減肥・有機栽培試験(H3〜7)
①化学肥料施肥量kgN/10a;0〜45×
②堆肥施用量t/10a;0〜10、同一処理連用試験
(2)窒素用量試験(H5)
①基肥量kgN/10a:0〜20×
②追肥量kgN/10a;(0〜5)×5回
2)内部品質向上試験
(1)窒素施肥配分試験(H4)
①基肥量kgN/10a;0〜45×
②追肥量㎏N/10a;5×5回
(2)有機質資材施用試験
(H4〜7):(2−1)有機質資材と化学肥料の併用試験(3)かん水試験 (H4):①かん水量;3水準×②遮根処理;有、無共通栽培概要:①供試品種;「ハウス桃太郎」、作型;半促成、5段収穫、3333株/10a②供試土壌:道南農試ビニールハウス(中粗粒褐色低地土)、無加温ハウス
3.結果の概要
1)化学肥料窒素施肥レベルが北海道施肥標準(5段収穫、堆肥4t/10a、窒素45kgN/10a)では標準区と減肥30%区とには生育収量、窒素吸収量とも差異が認められなかった。
2)窒素用量試験、減肥・有機栽培試験から完熟系トマト「ハウス桃太郎」の5段収穫における窒素施肥の適量は、堆肥4t/10a連用で25㎏N/10a程度であることが認められた。さらに、堆肥を6〜10t/10a連用してきた圃場では、窒素施肥量を15kgN/10aまで減肥しても、窒素25㎏N/10a、堆肥4t/10a連用と同等の生育収量が得られた。
3)このときの定植時の土壌窒素供給量を作付前の残存窒素量と堆肥の無機態窒素量及ぴ施肥窒素量の合計量とすると5.4〜10.4mgN/100gであった。このことから定植時の土壌の無機態窒素量は5㎎N/100g程度あれば充分であると考えられた。
4)内部品質は、地下からの水分供給を遮断する条件でかん水量を減じて収量が激減した場合に高糖度、高酸度となったが、窒素用量、施肥法、堆肥施用量、有機物資材等の処理による影響は極めて小さかった。以上のことから完熟系トマトの窒素施肥法は基肥量10㎏N/10a、1回追肥量は4㎏N/10aとし、追肥時期は各段花房の果実が30〜40㎜(ピンポン玉程度)に肥大した時に行うことが妥当と考えられた
表1トマトの収量及び窒素吸収量に及ぼす窒素施肥量・堆肥施用量の影響
処理区 | 収量(t/10a) | 全N吸収量(㎏N/10a) | 窒素施肥量 (㎏N/10a) |
堆肥施用量 (㎏N/10a) |
||||||||
H4 | H5 | H6 | H7 | H4 | H5 | H6 | H7 | H4〜5 | H6〜7 | H4〜5 | H6〜7 | |
標準(対照) | 9.5 | 113 | 12 | 90 | 25.7 | 27.2 | 25.8 | 24.5 | 45*1 | 25*3 | 4 | 4 |
30%減肥 | 9.2 | 11.5 | 10.2 | 10.3 | 23.3 | 27.2 | 19.8 | 25.9 | 31.5*2 | 15*4 | 4 | 4 |
30%減・堆肥増 | 9.5 | 11.8 | 12.2 | 9.8 | 22.9 | 27.2 | 23 | 23.4 | 31.5*2 | 15*4 | 10 | 6 |
堆肥10t単用 | 7.2 | 8.2 | 9.5 | 10.5 | 14.5 | 19.2 | 16.7 | 22.6 | 0 | 0 | 10 | 10 |
表2 トマトに対する基肥と追肥の組み合わせ用量が収量・真果率に及ぼす影響
処理 基肥−追肥 (㎏N/10a) |
全期 | 前期 収量 t/10a |
中期 収量 t/10a |
後期 収量 t/10a |
|||
全収量 t/10a |
良果収量 t/10a |
良果率 % |
良果 一果重g |
||||
5-25 | 12.0(102) | 11.3(102) | 94.3 | 197.3 | 3.54(102) | 4.48(90) | 3.36(122) |
10-20 | 11.8(100) | 11.2(101) | 95.1 | 208.4 | 2.81(81) | 5.38(108) | 3.08(112) |
15-15 | 10.9(92) | 10.2(92) | 94.1 | 193.6 | 3.64(105) | 4.78(96) | 1.84(67) |
20-25 | 11.8(100) | 11.2(100) | 94.7 | 203.5 | 3.47(100) | 4.98(100) | 2.75(100) |
表3 有機質資材施用と収量・内部品質の関係
項目 処理区\年次 |
良果収量 t/10a |
糖度 (%) |
酸度 (%) |
|||
H5 | H7 | H5 | H7 | H5 | H7 | |
対照 | 9.4 | 12.5 | 6.4 | 6.1 | 0.45 | 0.41 |
魚粕 | 11.3 | 16.1 | 6.3 | 5.8 | 0.46 | 0.4 |
鶏糞 | 10.6 | 14.3 | 6.2 | 5.9 | 0.47 | 0.42 |
菜種粕 | 8.4 | 13.8 | 6.4 | 6.1 | 0.45 | 0.43 |
骨粉 | 9 | 13.3 | 6.2 | 6.2 | 0.43 | 0.42 |
米糠 | 8.4 | 10.6 | 6.4 | 6.2 | 0.45 | 0.43 |
堆肥 | 9.3 | 11.2 | 6.4 | 5.9 | 0.45 | 0.4 |
表4 水分供給と収量・内部品質の関係
処理 | 良果収量 kg/㎡ |
糖度(%) | 酸度(%) | |
遮根 | かん水 | |||
無 | 少 | 8.4 | 6.2 | 0.45 |
中 | 10.4 | 6.2 | 0.46 | |
多 | 11.5 | 6.3 | 0.49 | |
有 | 少 | 0.3 | 10.7 | 0.89 |
中 | 1.8 | 9.9 | 0.87 | |
多 | 3.8 | 8.8 | 0.69 |
4.成果の活用面と留意点
1)無加温ハウスの半促成作型、「ハウス桃太郎」を供試し、5段収穫で行った試験である。
2)道内のハウストマト栽培土壌の養肥分の実態は、本試験の土壌の無機態窒素含量より高いことから、多くのトマト栽培で大幅な化学肥料の節減が可能と推定される。
5.残された問題点とその対応
1)近年のハウス土壌では、下層土にまでかなりの窒素の集積があり、これに対する栽培対策が必要となろう。