【指導参考事項】1995133

成績概要書(作成 平成8年1月)
課題の分類 北海道 農業土木 農用地
研究課題名:カラマツチツプの暗渠疎水材への適応性
予算区分:道単
担当科:北海道立中央農業試験場 農業土木部 生産基盤科
研究期間:平6-7年度
協力・分担関係:北海道立林産試験場 利用部 成分利用科

1.目的

  暗渠の疎水材及び被覆材としてモミガラ、砂利、稲ワラ、麦稈等が使用されているが地域によっては容易に資材が得られない場合がある。そこで、本試験では各地域で生産されているカラマツチップの暗渠疎水林としての適応性について検討する。

 

2.方法

 1)現地調査圃場
調査地 作物及び地目 暗渠の種類 土壌型 施工年次 経過年数
富良野市 タマネギ゙・水稲 トレンチャー掘削合成樹脂管 無機質表層低位炭土 平成5及び6年 1年及び2年
浦河町 採草地 バックホー掘削合成樹脂管 灰色台地土 平成5及び6年 1年及び2年
長沼町 転換畑 トレンチャー掘削合成樹脂管 細粒グライ土 昭和63年 6年及び7年
帯広市 デントコーン トレンチャー掘削素焼き土管 多湿黒ボク土 昭和58年 11年

 2)暗渠の施工断面

 3)調査項目

①断面調査…土壌断面、暗渠形状

②排水性調査…排水量、インテクレート、含水比

③耐久性調査…粒径、化学性(糖組成等)細胞組織、土砂混入率

④作物生育調査…収量、発芽試験、ポット試験

⑤暗渠排水水質調査…水質、フェノールの検出

⑥歩掛り調査…疎水材別施工費用

 

3。結果の概要

 1)カラマツチップはモミガラに比べ、粗大間隙が多く、透水性も良好で圧縮に強い。

 2)カラマツチップの耐久性は、埋設5年経過以降に細粒化等の物理的変化が認められたものの、畑地条件下でも1O年以上は疎水材としての機能を持続していた。(図1、図2、表3、表4)

 3)カラマツチップの暗渠は排水量、圃場の乾きともモミガラに比べ優っていた、(図3)

 4)カラマツチップの暗渠による作物の生育、収量に及ぼす悪影響は認められなかった。また、暗渠の排水からはフェノール等の有害物質は検出されなかった。(表1、表2)

 5)以上の結果から、カラマツチップは暗渠疎水材として十分適用可能な資材であることが明らかになった。


図1 カラマツチップ疎水材暗渠断面の経年変化


図2 7年経過した暗渠の疎水材別形状比較


図3 疎水材別の日排水量による比較

表1 水稲の疎水材別暗渠処理区の収量
処理区 玄米重㎏/10a
チップ区 616
チップとモミガラ区 608
モミガラ区 610

表2チップの冷水抽出物による発芽試験
処理
(種子はキャベツを使用)
H6年産試料
発芽率(%)
H7年産試料
発芽率(%)
対照(蒸留水) 90 99.8
抽出液 92.5 100

表3カラマツチップ疎水材の成分変化(林産試分析)
  原料 富良野
8か月経過
富良野
1年経過
長沼
5年経過
長沼溝下部
6年経過
リグニン 25.56 28.44 30.11 36.87 33.61
灰分 0.11 0.55 0.41 4.2 2.49
C/N 1619 620 553 203 174

表4 細胞壁面積減少率の経年変化(林産試分析)
  原料 1年目 6年目 11年目
細胞壁の面積率(%) 75.9 66.9 51.4 40.1
対原料比(%) 100 88.2 67.7 52.9
崩壊率(%) 0 11.8 32.3 47.1

4.成果の活用面と留意点
1)成果の利活用場面
暗渠において水田・畑、全て排水不良地にカラマツチップが疎水材として使用できる。
2)普及上の留意点
①疎水材の埋設深は、耕起深を考慮して決定する。
②カラマツチップの上にモミガラを併用することで土砂混入を防止する。

5.残された問題とその対応
樹皮入りチップ等の性状の適応性について、今後検討を要する。