【指導参考事項】1995134

成績概要書   (作成平成8年1月)
課題の分類:
研究課題名:メロン早熟果の発生防止のための水分管理と打音判定法
(北海道・東北地域における高品質メロン機械化・軽作業化による省力安定生産技術の確立
  2.高品質安定生産技術の確立)
予算区分:地域重要
研究期間:平成5〜7年
担当科:中央農試農産化学部流通貯蔵科
協力・分担関係:中央農試野菜花き第一科

1.目的

 メロン成熟期における土壌水分及び果実品温と内部品質の関係を明らかにし、早熟果の発生防止について検討する。また、打音解析により非破壊的に果肉硬度の評価を行い、早熟果の判定の可能性を検討する。

2.方法

 供試品種:[キングメルティ]、[キングナイン]、[アンデス]

 (1)早熟果の発生防止灌水処理:多灌水(pF2.0〜2.2)、標準(pF2.3〜2.5)、少灌水(pF2.6〜 2.8)果実品温:フィルム包装区(平6;アルミ蒸着、平7;ポリエチレン多孔質シート)、アルミ箔による反射区(果実の下に市販のアルミ箔を敷く)、無処理区の3区
 (2)打者解析による早熟果の判定果実の赤道部を打撃し、打者をマイクロフォンによってとらえ増幅後、高速フーリエ変換によって、固有振動数を求めた。固有振動数から果肉硬度の関係および早熟果の判定を行なった。

3.結果の概要

 (1)早熟果の発生防止

○目標とする糖度に達しないうちに、果肉の軟化が進み収穫期になる早熟果について検討した。糖度が増加する成熟期において灌水処理を行なったが、早熟果が認められたのは平成6年で、低温や日照不足の平成5、7年は判然としなかった。

○平成6年において、少灌水区の糖度は多灌水区より高いが標準区と差がなく、果実重量が小さかった。また、果肉硬度が低く、日持性が劣るなど早熟果傾向が認められた(表1)。一方、多灌水区は果実重量が大きいが、糖度が低く花痕部の裂果が発生した。以上から、早熟果防止のためには成熟期の土壌水分をpF2.3〜2.5(マルチ下15㎝)にするのが望ましい。

○成熟期の果実品温が高いと熟度が進むと考え、果実の包装処理を行なったが、無包装区に比べて内部品質に差はなく、果実品温と早熟果の関係は明らかではなかった。

 (2)打音解析による早熟果の判別

○果実打音から得られた波形を高速フーリエ変換し(図1、2)、固有振動数を求めたところ、固有振動数と果肉の硬さに高い相関関係が認められた(図3)。190Hz以上の固有振動数の果実は硬く、150〜180Hzは過食で、150Hz以下は軟化気味であった(図4)。また品種間差も小さいことから、打音解析から果肉硬度評価の可能性が示唆された。

○早熟果は収穫時の果肉硬度は低く、また貯蔵中の果肉硬度の低下が著しいことから、打音解析から得られた固有振動数を用いて、早熟果の判定は可能と考えられた。

表1 灌水処理が果実品質に及ぼす影響(平成6年)
品種名 灌水
処理
開花後
日数
貯蔵
日数
20℃
糖度 糖含量
(%)
果実
重量
kg
果肉
硬度
kg/c㎡
C2H4
μl/
kg・hr
C02
㎎/
kg・hr
果糖 ブドウ糖 ショ糖
キングメルティ 44 0 16.2 0.95 0.86 8.9 10.71 1.27 2.73 14.5 86.1
標準 44 0 16.6 1.04 0.96 8.88 10.88 1.38 4.5 4.7 79.9
44 0 14.5 1.11 1.03 7.09 9.23 1.34 5.52 0.6 67.5
44 2 15.5 0.98 0.83 9.24 11.05 1.3 2.04  
標準 44 2 15.7 1.1 0.88 8.58 10.56 1.32 1.88
44 2 13.9 1.13 0.96 7.87 9.96 1.34 3.11
47 0 15.8 0.84 0.73 10.39 11.96 1.37 1.98 64.9 120.7
標準 47 0 16.7 0.95 0.86 11.03 12.84 1.44 1.66 29.1 108.4
47 0 14.8 1.08 0.96 9.92 11.96 1.47 3.48 5.1 79.1
アンデス 50 0 17.5 0.62 0.73 10.2 11.55 1.52 2.14 4.4 46.8
標準 50 0 17.3 0.82 0.87 10.23 11.92 1.6 2.09 2.3 45.5
50 0 16.9 0.75 0.76 10.43 11.94 1.8 1.77 1.3 44.1
50 4 16.4 0.59 0.67 9.69 10.95 1.47 1.55 3 32
標準 50 4 16.8 0.69 0.72 9.63 11.04 1.7 1.29 4.2 31
50 4 16.7 0.82 0.9 9.75 11.47 1.68 1.39 2.9 30.1
54 0 17 0.6 0.72 10.43 11.75 1.49 1.77  
標準 54 0 16.9 1.15 1.09 9.59 11.83 1.69 1.5
54 0 16.4 0.72 0.81 9.57 11.1 1.81 172
 灌水:多(pF2.0〜2.2)、標準(pF2.3〜2.5)、少(pF2.6〜2.8)

4.成果の活用面と留意点

 (1)早熟果は高温年に発生し易いので、成熟期における灌水に留意する。
 (2)打者測定装置は市販品の機器から成り、システム化が必要である。
 (3)打音解析による発酵果やみくずれ果の判定の利用が可能と考えられる。

5.残された問題とその対応

 (1)本技術は早熟果の判定だけでなく、食頃の評価を非破壊的に判定する上で、有用な基礎的なデーターになると考えられるが、よリ精度を高めた打音解析法の開発が必要である。