【研究参考】

1995137

成績概要書   (作成平成8年1月)

課題の分類:総合農業生産環境土壌肥料
        北海道生産環境土壌肥料
研究課題名:近赤外分光分析法によるトマトの内部品質(糖度・酸度)の測定法
        (クリーン農産物の品質基準策定と評価法の確立)
予算区分:道単
研究期間:平3−7(1991−95)
担当科:道南農試研究部土壌肥料科
協力・分担関係:

1.目的

 高糖度トマトの選別と市場出荷を想定し、近赤外分光分析計を用いトマトの糖度、酸度を非破壊測定する際の留意点を明らかにし、実用選別機開発の基礎資料とする。

2.方法

1)供試試料:1994、1995年に道南農試で半促成栽培した1〜5段果、計400点
2)品種:桃太郎、ハウス桃太郎、強力旭光、まごころ、マルチファースト、ファーストカスタム502
3)近赤外分光分析計による測定方法:果実を30℃の水に10分間保った後、果頂部から2㎝程度下で表皮色が個体全体の平均的色調である果皮表面について600から2500㎜まで吸光度を走査測定した。
4)供試機械:インフラライザー500型(ブランルーべ社)
5)データー解析方法:lDASプログラム(ブランルーべ社)を用い、吸光度を説明変数にトマトの糖度、酸度の分析値を目的変数として重回帰分析を行った。
6)分析項目:糖度(デジタル糖度計)、滴定酸度、果皮の厚さ、果皮色(Lab表色系)

3.結果の概要

1)近赤外線はトマト果実表面から10㎜程度まで到達していた(図1)。

2)トマトの表皮部と果実内部とで、糖度及ぴ酸度に差が認められたものの、品種及び熟度を揃えることで果皮部と果実内部の糖・酸度に一定の傾向が存在した。

3)糖度は果皮部で果実内部(子室部、隔壁部)に比較して低かったが、熟度が進むにつれその差は縮小した(図2)。酸度は子室部で果皮部及び隔壁部に比較して高かったが、(果実内部酸度)/(果皮部酸度)の比は、催色期以前の果実では1.2程度で比較的一定の値を示した(図3)。

4)測定対象トマトの熟度を揃えることにより、近赤外線が到達する果皮部の糖・酸度で果実内部の糖・酸度の推定精度が高まり、加えて、果皮の厚さについては、果実重量、品種を揃えることで限定でき、精度が向上した。

5)以上の手順を踏むことにより(糖度:a*値0〜16、酸度:a*値8.5以下、200g以下のトマトを対象とする)、反射型の近赤外分光分析計でトマト果実の糖度・酸度の測定を行った結果、トマトの糖度の測定が化学分析値に対して、±0.4%(相対誤差8%)以内の精度で推定できると結論された(図4)。

6)本法によるトマト果実の酸度測定は、化学的定量値に比較して±0.1%(相対誤差16%)前後の差があり、実用には精度不足と判断された(図5)。

表 糖・酸度測定用の検量線の選択波長
項目 選択波長
λ1λ2λ3λ4
糖度 1664 
16641712 
160016721536 
1600167215361224
糖度 768 
1048720 
9207281048 
17927441048920


図1 金属片の埋め込み深さと近赤外分光スペクトルの変化


図2 果皮部と果実全体の糖度の進行に伴う変化


図3 果実内部酸度と果皮部酸度の比


図4 熟度を揃えて作成した糖度の検量線の未知試料への適応例


図5 品種,熟度を揃えて作成した酸度の検量線の未知試料への適応例

4.成果の活用面と留意点
1)本成果は反射型近赤外分光分析計で、収穫直後のトマトを測定したものである。
2)集荷・市場での現場適応については、実用装置の開発とその精度などの検討を要する。
3)本試験で得られた糖度検量線の普遍性の検討

5.残された問題点とその対応
1)透過型近赤外分光分析計によるトマトの酸度の測定