【指導参考事項】1995138
成績概要書(平成8年1月)
課題の分類 研究課題名:ペレニアルライグラス集約放牧草地における マメ科牧車を維持するための窒素施肥法 (ペレニアルライグラス集約放牧草地の施肥法確立) 予算区分:道費 担当科:天北農試 研究部 土壌肥料科 研究期間:平3〜7年度 協力・分担関係 なし |
1。目的 ペレニアルライグラス(PR)集約放牧草地においてマメ科牧草(シロクローバ、WC)を維持するための窒素(N)施肥法を確立する。
2。方法
1)実態調査:天北地域におけるPR集約放牧草地のN施肥管理の実態を調査した。
2)WCの重要性:WC維持の重要性をN施肥反応から比較し、また混播に適したWCタイフを選定した。
3)N施肥試験:良好なマメ科牧草混生割合を維持しつつ安定収量(採食量)を得るためのN施用量・時期(回数)を、放牧条件下で検討した。
3。結果の概要
<実態調査からの問題点>
1) 地域のPRを基幹とした集約放牧草地の草種構成は、マメ科牧草の冠部被度が10%以下の草地が調査数の42%も占めているなど、必ずしも良好な状態でなかった(表1)。
2) マメ科牧草の低下には、N肥料の施用回数などN管理に関連する項目が深く係わってい た(図1)。
<マメ科牧草維持の重要性>
3) PR・WC混播草地の年間乾物収量は、WCが固定したNの移譲などに起因して、N無施用でも高収であった。これに対して、PR単播草地ではN施用量を増しても混播草地のN無施用と同程度の収量であった(表2)。
<混播に適したWCタイプの選定>
4) PR集約放牧草地でマメ科牧草として混播するWCのタイプは、放牧牛の採食によるランナー損傷が少なく収量も多いコモンタイプが、ラジノタイプよりも適していた。
<N施用適量と施用適期>
5) マメ科牧草混生割合は、N無施用あるいはN施用量が3㎏1Oa-1の1回施用であると施用 時期(4,6,8月のいずれか1回)にかかわらず、22〜28%と良好であった。これに対して、6 ㎏10a-1以上のNを施用すると20%を下回った(図2)。
6)年間の乾物収量は、3㎏10a'1のNを6月に、および9㎏10a一1のNを施用した場合が最も多かった。逆に、N無施用あるいは3㎏10a-1のNを4月に施用したときが少なかった(図2) 。また、乾物収量の傾向はN吸収量と対応していた。
7) リン酸・カリを3㎏1Oa-1のNとともに6月に1回全量施用した場合でも、収量や両養分の牧草体含有率は、リン酸・カリの均等分施(3回)と大差がなかった。
8) これらの結果から、PRを基幹とした集約放牧草地のN施用適量は3㎏10a-1で、その施用適期は6月中〜下旬の1回と思われた。
9) 放牧牛の採食量は、3㎏10a-INの6月施用と6㎏10a-1Nの均等分施(4,6,8月、慣行)との間で大きな差がなかった(表3)。すなわち、上述の施用適量と施用適期が,放牧牛の採食量からも実証された。
以上から、マメ科牧草混生割合やその安定性および収量性などを総合的に考えると、
PRを基盤とした集約放牧草地でのマメ科牧草(WC、コモンタイプ)を維持するためのN施肥法としては、10a当たり3㎏のNを6月中〜下旬に1回施用(リン酸・カリも同時施用)することが適当と判断された。
表1.天北地域における集約放牧草地1)の施肥・管理実態。
更新2年目以降の窒素肥料 | マメ科牧草冠部被度(%) | ||||
施用量(㎏N10a-1) | 施用回数(回、年) | ||||
区分 | 頻度(%) | 区分 | 頻度(%) | 区分 | 頻度(%) |
0 | 19 | 1 | 44 | 10以下 | 42 |
0.1〜4.9 | 31 | 2 | 36 | 10.1〜29.9 | 35 |
5以上I0未満 | 50 | 3以上 | 20 | 30以上 | 23 |
表2.混播草地と単播草地の窒素施肥反応1)
年間の窒素 施用処理2) (㎏10a-1) |
年間合計収量 (㎏10a-1) |
マメ科牧草 混生割合 (%) |
番草間の収量 変動係数 (%) |
|
混播草地 | 0 | 665 | 22 | 34 |
2 | 670 | 21 | 36 | |
3 | 745 | 20 | 40 | |
6 | 773 | 18 | 37 | |
単播草地 | 0 | 145 | 33 | |
10 | 343 | 49 | ||
15 | 445 | 55 | ||
20 | 596 | 55 | ||
25 | 620 | 55 |
表3.窒素施肥法の違いが放牧牛の採食量に及ぼす影響1)
処理2) | 年間合計草量(生草、㎏10a-1)3) | 番草平均のマメ科 牧草混生割合(%) |
||
供給量 | 採食量 | 利用率(%) | ||
N3-6月 | 2363 | 2065 | 87 | 16(20) |
N6-均等 | 2502 | 1958 | 78 | 14(18) |
4.成果の活用面と留意点
1)洪積土および沖積士に適用する。
2)更新(造成)後2年目以降のPRとWC(混生割合が15%句50%)を混播した集約放
牧草地に適用する。リン酸・カリの施用量は施肥標準に準じるが、土壌診断を定期的に行う。
3)マメ科牧草混生割合が15%以下のPR集約放牧草地の施肥管理は、施肥標準に準拠する。
5.残された問題とその対応
1)採草との兼用利用、あるいは集約放牧利用を隔単行った場合の施肥管理。
2)排糞尿と土壌N肥沃度の評価。
3)マメ科牧車の収量変動に対する気象要因や病害虫の影響、およびそれらの対策。
4)マメ科牧草の追播技術。