【指導参考事項】
1995139
成績概要書 (作成平成8年1月)
課題の分類: |
1.目的
各種有機質肥の窒素無機化特性を明らかにし、水稲の収量・品質からみた有機質窒素の化学肥料窒素代替性を検討する。
2.試験研究方法
1)各種有機物の成分組成と窒素無機化特性
(1)供試有機物:わら堆肥、厩肥、バーク堆肥、粕類(なたね、大豆、魚)、米ぬか
(2)方法:室内(20、30℃)および圃場作土層における湛水静置培養。
2)各種有機物施用の水稲窒素吸収、収量、品質に及ぼす影響
(1)試験圃場:場内グライ土、泥炭土圃場
(2)供試有機物:わら堆肥、厩肥、バーク堆肥、粕類(なたね、魚)、米ぬか
(3)試験処理区:グライ土圃場N8、泥炭土圃場N6㎏/10aを標準量とし、有機物窒素による代替率30、 50、100%の処理区および標準施肥窒素の0、70、100%施用区を設定。有機物の施用法:耕起砕 土時全層に混合。
(4)耕種内容:品種「ゆきひかり」「きらら397」中苗、24.2株/㎡、1区20〜45㎡
3.結果の概要
1)有機物中窒素の無機化速度は、窒素含有率が高くC/N比(炭素率)の低い有機物で大きいことが認められ、窒素含有率、C/N比を指標として有機物を4群に区分した。A群:各種粕類(魚、大豆、なたね)、B群:米ぬか、C群:稲わら堆肥、厩肥、D群:バーク堆肥これら有機物の無機化の速さはA群>B群>C群>D群の順であった。
2)水稲の窒素吸収量は、有機物区分ではA群>B群>C、D群の順に、代替率では30>50>100%区の順に多かった。窒素吸収推移は有機物区分ではA群>B群>C、D群、代替率では30>50>100%区の順に収穫時吸収量に対する生育初期の吸収比率は高かった。各処理区のうち、A群の30%代替区における窒素吸収量、吸収推移は対照区(化学肥料)とほぼ同等であった。
3)収量は、有機物区分ではA群>B群>C、D群の順に、代替率では30>50>100%区の順に高く、各処理区のうち、A群の30%代替区における収量は対照区(化学肥料)とほぼ同等であった。食味特性値としての蛋白含有率は有機物による代替率が高いほど高まる傾向であった。
4)以上より、土壌中での窒素無機化が速く、生育初期より無機態窒素供給力の高い有機質肥料ほど化学肥料窒素の代替性が高いことが認められ(A群>B群>C群〉D群)、それらの化学肥料窒素代替性は、A群の有機物では30%、B群はA郡よりやや低く20%と推定された。
表1 有機物中窒素の無機化推移
有機物 |
No |
供試有機物 |
C/N |
N(%) |
窒素無機化率(%) |
||
区 分 |
1W |
2W |
4W |
||||
A群 |
1 |
魚粕 |
4.9 |
9.1 |
49.6 |
64.5 |
65 |
2 |
大豆粕 |
5.8 |
8.2 |
39.3 |
57.3 |
66.6 |
|
3 |
なたね粕 |
7.3 |
6.1 |
36.5 |
54.2 |
59.9 |
|
B群 |
4 |
米ぬか |
12.2 |
3.1 |
20.2 |
34.7 |
45.5 |
C群 |
5 |
稲わら堆肥 |
13.1 |
2.2 |
4.2 |
5.3 |
6 |
6 |
厩肥(牛) |
17.5 |
2.5 |
4.6 |
6 |
7.8 |
|
D群 |
7 |
バーク堆肥 |
21.4 |
1.7 |
5.7 |
0.9 |
-1.2 |
注)30℃湛水培養、風乾土
表2 有機物の窒素無機化特性と化学肥料窒素代替性
区分 |
有機物 |
有機物の特性 |
化学肥料窒素 |
||
C/N |
N(%) |
窒素無機化 |
代替性(%) |
||
A群 |
魚、大豆、なたね粕 |
<10 |
6< |
大 |
30 |
B群 |
米ぬか |
10〜13 |
3〜5 |
中〜やや大 |
20 |
C群 |
稲わら堆肥、厩肥 |
13< |
3> |
小 |
道施肥標準 |
に準ずる |
|||||
D群 |
パーク堆肥 |
21 |
2 |
極小 |
代替は困難 |
4.成果の活用面と留意点 1)湿田(グライ、泥炭士)型土壌に限定する。
5.残された問題点 1)有機物の効率的施用法の検討