【指導参考事項】

1995142

成績概要書(完了成績)(作成平成8年2月)

課題の分類:北海道生産環境土壌肥料
研究科題名:低アミロ小麦の簡易迅速検定法の開発
(道産小麦の品質向上試験パートⅡ2.小麦アミロ粘度の変動要因解明と簡易検定法の現地適応検討)
予算区分:受託
研究期間:平成4〜6年
担当科:中央農試農産化学部穀物利用科
協力分担関係:

1.目的

 低アミロ小麦のモニタリングや受け入れ段階での仕分けなどを目的に、水分変異の大きな生麦を対象とした簡易迅速な低アミロ小麦の検定法を開発する。また、育種にも適応可能な検定法を検討する。

2.方法

 1)現地試料採取法の検討:トッラクおよび圃場からの試料採取(音更町、本別町、場内)
 2)生麦からのα−アミラーゼ抽出法の検討:ポリトロンおよびジューサーによる抽出
 3)ブルー・スターチ法(BS法)による生麦α−アミラーゼ活性の測定
 4)CERALPHA(セラルファ)法による低アミロ小麦検定法の確立
  (1)各α−アミラーゼ活性測定法の比較とアミロとの関連
  (2)オートアナライザー(AA)によるアミロ粘度推測
  (3)生麦のオートアナライザー分析と低アミロ小麦の仕分け

3.結果の概要

1)圃場からの試料採取には労力と時間を要するが、トラックからの採取は比較的容易であった。また、採取点数を労力および誤差範囲の面から検討した結果、1圃場および1トラックからおよそ5点のサンプリングが必要であった。

2)ジューサーを用いることにより高水分の子実から容易にα−アミラーゼが抽出され、この抽出液の活性を水分補正することにより、アミロ粘度と比較的高い相関が得られた。

3)生麦のα−アミラーゼ活性をブルー・スターチ法により測定し、アミロ粘度の推測を検討した結果、成熟期以降(子実水分約40%以下)の試料においては、乾麦の場合と大差ない相関が得られた(図1)。また、活性(1nOD)2未満を健全、2以上3未満を低アミロ小麦の危険性がある中間域、3以上をほぼ低アミロ小麦と判定可能であった(表1)。

4)CERALPHA法はアミロ粘度との相関係数がBS法と同程度に高かったことから(図2)、アミロ粘度の推測や低アミロ小麦の検定に利用可能と推測される。また、CERALPHA法にオートアナライザーを用いた場合、1時間に50点の迅速測定が可能となり、しかも手分析よりコスト低減(45円/点)が可能であった。

5)生麦のα−アミラーゼをオートアナライザーにより測定し、その活性(UNIT)によるアミロ粘度の仕分けを試みた結果、活性0.3未満を健全、0.3以上0.5未満を低アミロ小麦の危険性がある中間域、0.5以上をほぼ低アミロ小麦と推測できた(表1)。

6)オートアナライザーを育種の検定法に利用する場合、0.2g程度の極少量で測定でき、また一日当たり300点以上の分析が可能と考えられた。

7)受け入れ段階で低アミロ小麦の検定を行う場合、要する時間は単純積算で22分(トラックからの試料採取5分、抽出5分、活性測定10分、計算・判定2分)であり、移動時間やロスタイムを含んでも約30分で判定可能と思われる(図3)。

中央・農産−1

表1生麦のα−アミラーゼ活性測定によるアミロ粘度の仕分け(頻度%)

アミロ粘度

BS法α−アミラーゼ活性(InOD

AA測定によるα−アミラーゼ活性(UNIT

(B.U.)

健全

中間域

低アミロ

健全

中間域

低アミロ

 

2未満

2以上3未満

3以上

0.3未満

O.3以上0.5未満

O.5以上

300未満

1.5

3.5

27

2.2

7.9

30.9

300600

18.5

6.5

1.5

9.4

4.3

0.7

600以上

37

4.5

0

33.8

10.1

0.7

平均粘度(B.U.

694

465

122

755

502

109

4.成果の活用面と留意点

1)プルー・スターチ法およびオートアナライザー分析により生麦のα−アミラーゼ活性が簡易迅速に測定可能となり、低アミロ小麦のモニタリングや受け入れ段階の低アミロ小麦の仕分けに活用できる。また、オートアナライザー分析は育種における低アミロ耐性品種開発のための検定にも適応できる。

2)生麦のα−アミラーゼ活性測定によるアミロ粘度推測は成熟期以降(子実水分約40%以下)の試料を対象とする。

3)高品質小麦の流通のためには、中間域の小麦は健全域の小麦との混合を避け、別扱いとすること。

5.残された問題点とその対応

1)試料採取法および仕分け指標値の妥当性についてはパートでさらに検討する。

中央・農産−1