【指導参考事項】

1995143

成績概要書    (作成平成8年1月)

課題の分類:
研究課題名:金時類の煮豆特性に関わる品質(かたさ)の評価法
(豆類の加工適性向上試験①煮豆等利用向け豆類の加工適性評価基準設定試験)
予算区分:道費
研究期間:平成2〜6年度
担当科:中央農試農産化学部品質評価科
協力分担関係:なし

目的

 金時類を対象として、煮豆の評価に大きな影響を及ぼすテクスチャー、特にかたさの評価法について検討を行い、煮豆調製過程における種皮色の変化や、品種または栽培条件(年次・栽培地)の違いによる煮熟特性の変動を調査し、道産金時類の品質特性の評 価や加工適性に優れた新品種の開発のための資料とする。

2.試験方法

1)供試試料
・十勝農試・北見農試・上川農試・植物遺伝資源センター産金時類:43点(平成4〜7年産)
・現地農家栽培試料:「大正金時」68点(平成4〜6年産)

2)分析・測定項目
・煮豆の調製:25℃で18時間浸漬後、100℃で20分煮熟。
 官能検査には調味煮豆(80℃で3時間加熱後、5℃で一晩浸漬)を用いた。
・品質関連形質:百粒重、原粒水分、粒色、吸水増加比(25℃・18時浸漬)、種皮率、
 煮熟増加比(100℃・20分煮熟)、かたさ(テンシプレッサー)、整粒率、皮切れ率、
 煮くずれ率、浸漬液固形分、あん粒径、タンパク、脂肪、デンプン、無機成分(P,K,Mg,Ca)

3.結果の概要

1)煮豆の官能評価にはかたさの影響が大きかったため、煮豆に対する原粒の品質特性 としてかたさを取り上げ、テンシプレッサーによる測定条件を明らかにした。また、 プランジャーの種類を選択することにより、子葉部および種皮部のかたさとして測定 した(表1・図1)。

2)煮豆のかたさの官能評価値にはテンシプレッサーでの測定値との関連が認められた が、異なる品種間での比較では、同一品種間の比較よりも識別率が劣った(表2)。

3)煮豆加工過程での種皮色の変化としては、L*値は吸水により高くなり、煮熟および 調味により徐々に低下した(図2)。b*値は吸水後は高くなり、煮熟により低くなっ たが、調味後はわずかながら高くなった。a*値は吸水、煮熟、調味の過程で低下を続 けたが、調味による変化は小さかった。また、種皮色と煮熟粒色との間には一定の関 係は認められず、煮豆の色は種皮色を反映していなかった。

4)色流れ粒を用いて煮豆を調製した場合、煮豆色の平均値は正常粒と大きな差は認め られなかったが、原粒種皮色の色むらが煮豆色のばらつきとして現れた。

5)品種間の比較では、「大正金時」、「十育B62号」は「北海金時」、「丹頂金時」に比べやわらかい傾向にあったが、子葉部と種皮部のかたさには品種により特性の差が あった(図1)。また、年次や栽培地の違いによっても煮熟特性には差が認められた。

6)「大正金時」の測定値から判断すると、煮熟増加比では2.3程度が、子葉部かたさで は5kgw/cm2前後が、種皮部かたさでは15〜17kgw/cm2程度が標準的な範囲であると考えられた。

7)原粒または浸漬段階において煮熟特性を推測することは困難であったが、煮熟増加 比は煮熟粒のかたさに関与しており(図3)、煮豆特性を判断する上での大まかな指 標として活用可能と判断された。

4.成果の活用面と留意点
煮熟粒のかたさ評価は、金時類の品質特性値として利用でき、品種、年次および産地 等による煮豆特性の差異を把握する上で活用可能である。

5.残された問題点とその対応
1)金時類以外の菜豆類への適応性の検討。
2)煮豆特性の栽培環境による変動要因の検討。