【指導参考事項】
1995145
成績概要書 (作成平成8年1月)
課題の分類:総合農業生産環境土壌肥料北海道土肥・環保3−2−1 研究課題名:長期有機物連用圃場における養分収支 (土壌環境基礎調査・基準点調査) 予算区分:補助(土壌保全) 研究期間:昭和50年〜平成7年 担当科:十勝農試土壌肥料科 協力・分担関係:なし |
1.目的
4年輪作体系下で長期にわたり有機物を連用した圃場における養分収支を算定し、土壌化学性の変化との対応関係を検討することにより、適正な有機物管理技術の指針を得る。
2.方法
1)供試土壌:淡色黒ボク土
2)供試作物および輪作体系:てん菜→大豆→春播小麦→馬鈴しょ
3)処理:化学肥料単用(F)、三要素+堆肥1.5t/10aおよび3.0t/10a連用(M、2M)、三要素+収穫 残さすき込み(R)、R+てん菜作付時のみ堆肥1.5t/10a(Rm)、R+堆肥1.5t/10a連用(RM) なお、F、M、2Mは収穫残さを搬出している。
4)試験規模:1区150㎡、1反復。4圃場区画で毎年4作物栽培
3.結果の概要
1)各年次において有機物施用量にほぼ対応した増収効果が認められ、その程度はてん菜>春播小麦>大豆であった。一方、馬鈴しょでは堆肥の連用により減収する年次があるなど有機物施用効果は判然としなかった。
2)てん菜収量の20年の経年変化を見ると、化学肥料単用区および残さ区で低収傾向であるのに対し、堆肥3t区および残さ+堆肥1.5t連用区ではわずかに増収傾向であった。
3)土壌の全窒素は堆肥を連用した場合微増傾向であり、浅さのすき込みでは維持傾向であった。有効態リン酸は有機物の連用により増加し、特に堆肥3t区で顕著であった。また交換性カリは有機物連用による増加は認められなかった。一方、交換性カルシウムは有機物を連用しても減少する傾向であった。
4)連用20年目における堆肥由来窒素量は1tあたり2〜3㎏であった。
5)窒素の収支は堆肥を1.5t/10a以上連用すると10aあたり年間6〜12㎏の残余が生じるが、浅さすき込みだけの場合、収支がほぼ等しくなった。カリは堆肥1.5t/10aの連用では収支がほぼ等しく、他の処理では1〜9㎏の残余が生じた。一方、リン酸は各処理で15〜26㎏、カルシウムも各処理で4〜17㎏の残余と試算された。
6)有機物連用により収支上残余となった窒素は土壌全窒素には極めてわずかしか反映されておらず、その大部分は作土には残存していないと推察された。
7)生産力の維持あるいは増強、また作物収量レベルの維持のためには、4作物の輪作の場合、浅さのすき込みに加え毎年1t/10a程度の堆肥を連用することが望ましい。
表1.各処理区における養分収支(単位:Kg/10a/年)
処理区 | N | P0 | K0 | CaO |
F | -1 | 14 | -5 | 2 |
M | 6 | 20 | 0 | 10 |
2M | 12 | 26 | 4 | 17 |
R | 1 | 15 | 1 | 4 |
Rm | 3 | 16 | 3 | 6 |
RM | 9 | 21 | 9 | 11 |
表2.無窒素栽培区におげるてん菜の窒素吸収量および有機物由来窒素量
処理区 | 窒素吸収量(Kg/10a) | 有機物由来窒素量(Kg/10a) | ||||
昭和59年 | 昭和62年 | 平成7年 | 昭和59年 | 昭和62年 | 平成7年 | |
F | 2.2 | 2.8 | 3 | - | - | - |
M | 4 | 5.3 | 8.2 | 1.8 | 2.5 | 5.2 |
2M | 6.3 | 7.8 | 11.4 | 4.1 | 5.O | 8.4 |
R | 3.9 | 4 | 4 | 1.7 | 1.2 | 1 |
Rm | 4.7 | 5.4 | 5 | 2.5 | 2.6 | 2 |
RM | 7.6 | 7.8 | / | 5.4 | 5 | / |
4.成果の活用面と留意点
1)本成績は現行の施肥標準の妥当性をほぼ実証していることから、圃場の生産力を維持するための有機物管理技術の資料として活用する。5.残された問題点とその対応
1)有機物の連用により収支上残余となった窒素の行方を明らかにするため、様々な手法を用いて検討していく必要がある。