【指導参考事項】

1995148

成績概要書   (作成平成8年1月)

課題の分類:
研究課題名:パソコンによる土壌診断、施肥設計システム(Ver.2)
        (クリーン農業支援のための土壌診断システムの高度化)
予算区分:道単
研究期間:平4−7年度
担当科:中央農試環境化学部土壌資源科
協力・分担関係:中央栽培第一科
          上川土壌肥料科根釧土壌肥料科
          天北土壌肥料科・泥炭草地科

1.目的

 既存の2つの土壌診断、施肥設計システム(平1年の畑作・野菜版と平3年の水田・草地版、機種N5200で稼働)を全地目統合化し、一般のパソコン上で利用可能なシステムにバージョンアップする。内容的には診断・設計の演算論理は踏襲し、単肥・化成選択システムや地点位置情報管理システム等のサブシステムを付加し、総体的に処理速度や操作性が向上したものを作成する。

2.方法

1)普及所に配置されているパソコン(PC−98系、その他MS−Windowsが動くもの)を対象とし、ハードディスクで運用する方式とし、プログラムは新たに委託開発する。

2)「北海道施肥標準」、「土壌及び作物栄養の診断基準」、「土壌診断に基づく施肥対応」および関連する指導参考事項(平5年度まで)をファイル化し、演算論理を作成し、診断結果表示、資材、肥料要素量算出等を行う。演算論理、出力票形式、各種マスターファル等は、既存システムを踏襲し、コード体系等は最小限の変更を加える。

3)診断要素量を充足する土壌改良資材、単肥、化成肥料の種類および量を算出する。また任意の要素量(N、P、K、Mg)のみを入力することにより単肥、化成の肥料銘柄を自動的に選択するシステム(単肥・化成選択システム)を付加する。

4)1/2.5万または1/5万地形図を用いて、採取地点位置を記録・保管し、ほ場データと連結するシステム(地点位置情報管理システム)を付加する。

3.結果の概要

1)最新のパソコンに対応したため多くの機種で使用でき、処理速度、操作性は大幅に向上した。

2)分析値などの入力項目は、すべての作目に対応可能な統一様式とし、表形式又は個票形式とした。表計算ソフトとのデータの一括入出力を可能とし、これによりデータのグラフ化、統計処理等が容易となった。

3)施肥設計票は畑作、野菜、水稲、草地を対象とし「土壌診断に基づく施肥対応」の基準に従い診断施肥量を算出した。「施肥対応」に記載のない作物は施肥標準値のみを出力する。

4)施肥設計例はあらかじめの利用者が登録してある単肥、化成銘柄から選択し、N、P、K診断施肥量との差が最小の銘柄組合せ、利用者指定の銘柄を使う例、あるいは単肥配合のみの例、などコストを考えた5つの選択例が出力される。

5)システムが持つファイル(施肥標準、施肥倍率、診断基準値、地帯区分等)の大部分は利用者が変更可能とした。また地域毎の事前人力ファイル(単肥、化成、農家名、地区名等)は原則として利用者が入力する必要がある。

6)地点位置情報管理システムにより任意項目についてのランキング表示ができ、地区全体の地力実態の把握が視覚的に可能となる。(スキャナーによる地形図入力は別途会社に委託する)


(2)分析・ほ場情報入力項目(作目によって不要なもの有り)土壌分析値PH、CaO、CEC等15項目と土壌、土性、腐植、溶脱係数ほ場情報:土壌採取年月日、サンプルNO、農家番号、ほ場NO、予定作物コード等最大12項目

(3)土壌診断、改良資材算出の演算対象PH:資材量算出(水稲以外)、CaOとK2O:診断のみ、MgO:資材量算出リン酸:資材量算出(草地以外)、ケイ酸:資材量算出(水稲のみ)、EC:床土のみ診断

(4)Nに関する施肥設計演算論理の概要N診断施肥量の算出方法は「施肥標準量×施肥倍率−有機物N換算量」を原則としているが、作目、作物により論理の詳細は異なる。水稲:一部の地域、土壌では培養Nより計算。3種の施肥法(全層、側条、二段)や復元田の有無により演算法や出力票形式が異なる。畑作:一部の作物(土壌限定)では熱抽Nより計算。対象作物以外に常に主要10作物について診断施肥量を出す。園芸:一部の作物では熱抽Nより計算。草地:ほ場来歴、車種構成等より演算。

(5)地点位置情報管理システムの機能検索表示:全地点表示、指定地点の表示、農家土壌作物別に複合検索による表示ランキング表示:対象項目に条件設定し、ランキング(色分け)表示、凡例(色は自動設定)表示

4.成果の活用面と留意点

1)システムには「操作マニュアル」とファイル構成、演算論理を詳細に解説した「説明資料」を添付する。プログラムは中央農試情報センターから各普及センターにFDで配布し、各所でインストールする。Acenetによる宣伝、配布も検討する。

2)平成6、7年度の研究成果、平成7年版「施肥標準」等への対応は本会議終了後速やかに行い、普及センターへは最新版を配布する予定。

3)肥料、資材等の選択に当たっては、技術的合理性と地域の流通・使用実態を考慮し関係者と協議の上登録(入力)すること。

5.残された問題とその対応

1)施肥標準、診断基準値等で欠落している部分(作物、地域、土壌)の補完。

2)施肥標準、診断基準値、新しい研究成果などの改訂への対応の体制