【指導参考事項】

1995149

成績概要書    (作成平成8年1月)

課題の分類:
研究課題名:農作物に対するホタテガイ副産物の施用効果
        (ホタテガイ副産物の処理・利用技術に関する研究開発)
        (ホタテガイ付着物の農作物に対する施用効果試験)
予算区分:道費(道携プロ)
研究期間:平4年〜7年
担当科:中央農試環境化学部土壌資源科
     土壌生態科農産化学部流通貯蔵科
     滝川畜試研究部めん羊科
協力・分担関係:中央水試・工試・衛研・滝川畜試

1.目的

 ホタテガイ副産物(脱Cd内臓物、養殖付着物、ホタテ貝殼・付着物)の特性と土壌及び作物に対する施用影響を明らかにし、農業生産資材としての有効利用を図る。

2.方法

 1)脱Cd内臓物、養殖付着物およびホタテ貝殼・付着物の化学性脱Cd内臓物試作物、脱Cd内蔵物、養殖   付着物およびホタテ貝殼・付着物の化学性を検討した。

 2)各試料の施用試験
  ①脱Cd内臓物と養殖付着物の含有N評価試験
   平成5年:レタス十ダイコンの継続栽培、未熟火山性土、枠試験
   平成6年:スイートコーン栽培、未熟火山性土、枠試験
   平成7年:スィートコーン栽培、未熟火山性土、圃場試験
  ②ホタテ貝殼・付着物の施用試験
   平成7年:スィトコーン、ホウレンソウ、牧草について圃場試験を実施した。

3.結果の概要

1)ホタテ内臓物の硫酸浸漬、水洗による化学成分の濃度変化は、3つのグループに大別された。
 ①C、N濃度は殆ど変化しない
 ②P2O5、Cu,Mnは原料の50%程度に減少
 ③塩基濃度は急激に減少し、特にCdとNa2O濃度の低下が著しい(表1)。

2)上記の手法によって、脱Cd内臓物のNは6.0%以上で、Cdは4.5ppm以下になる。また原料のAs濃度は低い。従って、脱Cd内臓物は副産動物質肥料の基準に適合する(表1)。

3)脱Cd内臓物、養殖付着物とも、Nの無機化は比較的早く進む。スィートコーンでは10a当たり脱Cd内臓物300㎏施用が適量であり、それ以上では過繁茂気味に推移した(表3)。

4)脱Cd内臓物は300㎏/10a施用で、Nの利用率は35〜47%であり、化学肥料Nの10〜14㎏に相当する(表3)。

5)脱Cd内臓物はpH(H2O)が低いが跡地土壌のpH(H2O)に影響は見られなかった(表3)。

6)養殖付着物はレタス十ダイコンのN利用率が59%と高かったが、乾物中CaO含量が38%と高いため、土壌酸性中和剤としての利用が妥当と思われる(表2、表3)。

7)ホタテ貝殼・付着物は現物中CaO30%程度含むが、破砕程度が粗く(最大径5㎝程度)、土壌酸性中和剤としては緩効的である。施用量はCaOとして炭カルの2倍程度でよいと思われる(表2、表4)。

表1 脱Cd内臓物試作物の分析結果, 乾物当たり
試料 pH EC PPm
(H20) ㎜S/㎝ P2O5 K20 Ca0 MgO Na2O Cu Zn Mn Cd As
原料 4.78 1 54.3 7.8 1.7 0.75 0.18 0.37 1.73 38.4 91.3 31.7 129 2
硫酸浸漬 1.77 8.33 120 86 50 10 34 13 8 53 20 45 9(11.3) (-)
水洗3回目 2.84 0.6 106 104 48 6 15 4 1 42 6 46 1(0.8) (ND)
pH、EC以外は原料値に対する比率(%)、( )内はppm

表2 供試試料の化学性(平成5〜7年の平均値、ホタテ貝殻・付着物は平成7年、乾物当たり)
供試試料 pH EC % PPm
(H2O) mS/cm C N C/N P2O5 K2O CaO MgO Na2O Zn Cu Cd As Hg
脱Cd内臓物 3 0.63 56.7 9.4 6.O 1.7 0.08 0.1 0   28 12.2 1 ND O.3
養殖付着物 8.19 0.7 12.4 2 6.2 0.86 0.34 37.1 0.6   41 10 ND ND 0.1
ホタテ貝殻・付着物 8.84 0.07   0.45   0.6 0.05 36.4 0.7 0.46 144 13      

表3 脱Cd内臓物、養殖付着物のN利用率と跡地土壌pH
処理区 平成6年(枠試験) 平成7年(圃場試験)
子実収量g/枠 同左比% スィートコーンN利用率 跡地土壌pH(H2O) 子実収量kg/10a 同左比% スィートコーンN利用率% 跡地土壌pH(H2O)
対照 715 100 63.9 5.44 1177 100 50.6 5.72
脱Cd内臓物150㎏ 599 78 40.8 5.64 1009 86 35.1 5.94
〃300 868 121 46.7 5.44 1397 119 35.6 5.82
〃450 771 108 32.7 5.36 1387 1I8 28 5.6
〃300+養付1t 977 137 33.7 5.81        

表4 ホタテ貝殻・付着物の施用効果
項目 供試土壌 収量比 * 収量比 跡地土壌pH
作物 土壌pH 対炭カル区 対無処理区 無処理区 炭カル区 ホタテ相当量 2倍量区 4倍量区
スィートコーン 5.4 (107)〜111 −− - 5・8 5.3 5.4 5.8
ホウレンソウ 5.5 96〜(99) 100〜103 5.2 5.4 - 5.4 -
アルファルファ 5.9 96〜(101) 97〜102 5.9 6 5.9 6 6
オーチャード 5.9 82〜(92) 95〜107 6 6.1 6.1 6.1 6.2
*( )は炭カル相当量ホタテ貝殻・付着物施用区の指数、ホウレンソウは2倍量区

4.成果の活用面と留意点

 1)各供試試料は現段階では市販製品とはなっていないが、農地に利用する場合の参考になる。

 2)付着物の石灰中和力は、次年度も持続するので連用はしない。

5.残された問題点とその対応

 1)脱Cd内臓物のP利用率

 2)脱Cd内臓物の保存法

 3)脱Cd内臓物と付着物の適正な併用

 4)付着物の石灰中和力とその持続年数

 5)ホタテ貝殼・付着物の粉砕