【指導参考事項】

1995180

成績概要書   (作成平成8年1月)

課題の分類:
研究課題名:搾乳自動離脱装置の作動特性
予算区分:受託
研究期間:平6〜7年度
担当:根釧農試 酪農施設科
協力・分担関係:

1.目的

 搾乳自動離脱装置の点検方法を開発し、作動特性を明らかにし、高品質乳生産に寄与する。

2.方法

 1)搾乳自動離脱装置点検システムの1開発

 2)自動離脱装置の作動特性調査20機種カウシエード用7機種(電気伝導度)ミルキンクパーラ用13機種   (電気伝導度:5、光学式:1、容量式:7)
  ①搾乳初期の遅延時間
  ②搾乳終了時の流量および遅延時間
  ③流量検知部による圧力低下

3.結果の概要

 自動離脱装置の作動特性について現場での混乱を解消するため、その特性を明らかにしなければならず、新たに自動離脱装置の点検システムを開発する必要性がでてきた。

1)搾乳自動離脱装置点検システムの開発牛乳流量を制御するため、電子式サーボアクチュエータと電磁流量計をデジタル指示調節計を介し、コンピュータと接統し、流量制御を可能にした。流量制御用ソフトウェアはあらかじめ流量曲線を入力しておけば、再現できるようになっている。設定流量と実際の流量との差は小さく、統計的にも有意差(5%)はなかった。本ソフトウェアは、マニュアル制御、流量制御もできるように設計した。本システムを使うことで自動離脱装置の搾乳終了時の流量を高精度に測定できることがわかった。

2)搾乳初期の遅延時間遅延時間を測定した結果、すべての機種で設定値との差は小さかった。

3)搾乳終了時の流量および遅延時間電気伝導度を直接、離脱時の流量検出に用いている方式では、同一乳汁に対する作動流量のぱらつきは小かった。電気伝導度を乳量計に用いた場合、一部の機種では低流量でのセンサ誤差が大きいため、設定値との差と変動が大きくなった(G機種)。乳汁通過間隔により、離脱のタイミングを決めている機種(O、H)ではセンサ部の流れの状況が変化しやすいため、誤差が大きくなる傾向があった。搾乳終了時の設定流量が0.3l/min以下の機種では変動係数が大きくなる機種(J、P)もあった。パーラ用の容積式(C、D、L、N)では設定値に対する誤差、ぱらつきとも15%以下であった。使用期間による作動特性の変化は確認できな、かった。終了時の遅延時間はB機種が5秒遅れたが、ほかは、ぽぽ設定値と同じであった。

4)流量検知部の圧力低下S機種が6.08kPaと非常に大きく、K機種が3.40kPaとやや高めだったのを除くと、カウシェード用では0.07〜2.77kPa、ミルキングパーラ用で電気伝導度と光学式の検知機種は0.00〜2.16kPaでいずれも3kPa以下であった。容積式はミルクメータと兼用であるため、3kPa以上の機種もあった。

5)この「離脱時の流量」の変動が大きいと、同一の牛であっても毎回の搾乳時に終了する流量が異なることになるため、今後、自動離脱装置の点検時のチェックポイントとして十分に利用できる。また、この装置を用いることで、その設定値の確認、変動状況が把握できることが判明した。

表1.搾乳終了時の流量
乳量検知方式 演算方法 パイプライン
方式
機種名 使用期間 設定値 測定値 標準偏差 変動係数
(1/min) (1/min) (1/min) (%)
電気伝導度 乳量変換 ローライン A 0 0.681 0.7  
0 0.334 0.3 0 1.5
0 0.195 0.26  
B 0 0.2 0.41 0.02 5
J 0 0.3 0.28 0.07 24.9
0 0.4 0.38 0.02 5.5
0.8 0.4 0.36 0.04 9.8
p 0 0.25 0.23 0.05 23.5
Q 0 0.41 0.05 12.9
0 0.26 0.01 3.1
ハイライン I 0 0.3 0.34 0.03 8.5
1.5 0.44 0.02 5.5
K 0 0.2 0.25 0.01 4.6
3.7 0.2 0.26 0.01 3.1
M 0 a 0.56 0.03 5.8
0 b 0.41 0.06 14.6
1.5 a 0.53 0.02 3.1
1.5 b 0.36 0 1.3
S 0 0.23 0.29 0.02 6
乳量変換
(乳量計兼用)
ハイライン E 0 0.2 0.22 0.01 4.5
0 0.3 0.39 0.01 1.2
0 0.4 0.45 0.01 2.1
0.5 0.2 0.12 0.01 4.1
0.5 0.3 0.23 0.01 6.1
0.5 0.4 0.35 0.01 4
G 0 0.4 0.39 0.1 26.3
0 0.25 0.28 0.04 15.7
1.5 0.4 0.47 0.07 14.2
1.5 0.25 0.33 0.08 25.8
乳汁通過間隔 ハイライン O 0 0.3 0.06 21.8
0 0.25 0.35 0.04 12.3
0 0.43 0.07 15.6
4 0.23 0.01 2
4 0.35 0.04 11.1
4 0.49 0.06 11.8
光学式 乳汁通過間隔 ローライン H 0 a 0.91 0.09 9.9
0 b 0.54 0.09 4.2
0 c 0.58 0.16 27.6
2 b 0.47 0.01 1.7
2 c 0.46 0.03 7.5
容積式 ミルクメータ ローライン c 0 0.3 0.3 0.02 8.2
D 0 0.3 0.26 0.04 13.7
L 0 0.4 0.39 0.02 4.2
N 0 0.48 0.37 0.03 8.9
R 0 0.26 0.01 5.4
フロート ローライン F 0 0.3 0.25 0 2
1 0.3 0.3 0.02 7.2
一定容積通電 ローライン T 0 0.2 0.23 0.03 11.7

4.成果の活用面と留意点

 従来、試験方法がなかった搾乳自動離脱装置の点検方法として、本試験で製作した流量制御システムは十分利用可能である。終了時流量のぱらつきは基準策定上の指標となる。電気伝導度は個々の牛乳で異なるので搾乳終了時の流量測定値は一応の目安として考える。

5.残された問題とその対応

 本試験のシステムは現場持ち込みは可能であるが、更にコンパクトで簡易な点検機械を開発する必要がある。