【指導参考事項】

1995181

成績概要書   (作成平成8年1月)

課題の分類:総合農業作業技術
        農業機械9草地永年草地放牧施設D−6
        北海道農村計画
研究課題名:堆きゅう肥調製システムの開発
予算区分:地域総合
研究期間:継平成5〜9年
担当研究室:北農試・農村計画・農業機械研
協力・分担関係:滝川畜試研究部養豚科・畜産資源開発科・北農会

1.目的

 環境保全の重要性が高まるなか、酪農が原因とみられる環境汚染の兆候が、水系の汚染、地下水の汚染・悪臭問題などの形で顕在化しつつある。労働力不足もこれに拍車をかけ、安価で簡便・かつ物質循環を前提とした家畜糞尿の処理が喫緊の課題となっている。そこで、糞尿処理システムの一環として堆肥化に着目し、簡易な堆肥化技術を検討する。

2.方法

 以下の方針に基づいて堆肥堆積運搬車と堆肥切り返し機を開発した。

 1)マニュアスプレッダの床コンベア速度を高速化し(通常堆肥散布時の1/10の減速比を追加)、短時間に   所要の形状のウインドローを形成する。
 2)上記堆肥堆積運搬車によって堆積されたウインドローを切り返す。
 3)切り返し後、次の切り返しのため同様な形のウインドローを形成する。

3.結果の概要

1)堆きゅう肥を畜舎から切り返し場所まで運搬し、かつその後の堆肥切り返し作業を効率的に行うため、定形のウインドローに堆積する堆肥堆積運搬車を開発した。大型と小型の2台を開発したが、ウインドロー形成の速度はそれぞれ20s/1.5m3、52s/m3であった(図1、図2)。堆肥散布機の改良であるので、ウインドロー成形装置を折りたたむことによって従来の堆肥散布作業も可能である。また、ローダ等の機動性が制限される堆肥舎や堆肥ハウス内での利用にも効果的である。

2)開発した堆肥切り返し機は、作業幅1.9m、全長3.31m、全高2.02m、コンベア傾斜角45度である(図3)。本機の特徴は以下のとおりである。
  ①トラクタヘの装着が容易であり、かつ移動時はトラクタ後方に装着できる。
  ②定形に堆積した幅2.3m、高さ1.5mのウインドローを4.5〜5.1m/minの速度で円滑に切り返し    できる。
  ③総所要動力は、30kw(41PS)程度である。堆積時に粉砕されていることが、所要動力の軽減に寄与し   ている。
  ④堆きゅう肥の腐熟促進に効果的である。
  ⑤作業中の堆きゅう肥飛散防止策としてビータ上部に鉄板製のカバーを設け、前後にゴム製の飛散防止    板を装備している。

3)堆きゅう肥の堆積・切り返し作業を効率的に行うためには、堆肥盤の泥ねい化を防止することが必要である。そこで、堆肥盤に土壌固化剤を施用した試験の結果、コンクリート固化よりも低コストで利用可能なことが分かった。

4)雨、雪の防止のため簡易パイプハウスを堆肥舎として利用した結果、堆きゅう肥の腐熟は慣行法より速やかで、腐熟促進に効果的であった。

5)土壌固化剤を施用した堆肥盤を施工し、屋外で堆肥堆積運搬車と堆肥切り返し機を組み合わせた堆きゅう肥腐熟試験を行った。その結果、堆積直後から温度上昇を始め、約2週間おき、3回の切り返しで堆肥化が完了した(図4)。以上のとおり、堆肥散布機(マニュアスプレッダ)を改造した堆肥堆積運搬車と切り返し機を組み合わせることにより、一つの堆肥化システムを組み立てることができた。この組み合わせは、まず堆きゅう肥を列状に堆積することで修景効果があり、堆積時粉砕・撹絆されるため腐熟促進の面でも有効である。切り返し時には既に粉砕されているため、粉砕・撹拌に要する動力が少なく、切り返し効率が高い。堆肥舎や堆肥ハウスのような従来の機械の機動性が制限される場面では、特に効果的な組み合わせ作業が可能である。

6.普及上の留意事項

スラリー様の堆きゅう肥については、堆積時に水分調整(75%以下)を行う必要がある。

7.残された問題点

設定した堆きゅう肥処理・調製システムモデルは、大多数を占める敷料利用の畜産農家には容易に導入できるものと考えられる。しかし、敷料の少ないスラリー様の堆きゅう肥に対しては、水分調整材の確保という問題が残された。