【指導参考事項】
1995183
成績概要書 (平成8年1月作成)
課題の分類: |
1.目的
大規模畑作地帯の馬鈴しょ茎葉処理を高精度・高能率に行うために、既存のスプレーヤを有効利用した、新たな散布機構を開発する。
2.方法
1)試験期日 平成6年および7年
2)試験場所十勝農試農業機械科実験室及び圃場、芽室町中伏古
3)供試機ブームスプレーヤ装着型散粉機
4)供試品種「メークイン」、「農林1号」
5)供試薬剤粉状石灰窒素(使用基準:10〜15㎏/10a)
6)試験項目
(1)供試機の構造及び特徴:概要、操出および吐出精度
(2)石灰窒素の諸物性:容積重、粒径分布
(3)水の散布による飛散防止効果:粉剤の距離別落下量
(4)圃場散布試験:圃場数布量、飛散量、飛散した粉剤の粒径、枯凋効果
3.結果の概要
1)供試機の構造及び特徴
(1)本機は粉剤の飛散防止を目的として、送風式の散粉装置とブームスプレーヤを組み合わせた作業機である(図1、表1)。スチール製タンク内に充填された粉剤を溝ロール回転式の繰り出し装置で一定量繰り出して噴管にエゼクタを通して落下させ、送風機により空気とともに噴管先端まで運び、その間に噴頭より吐出させる。後方に15㎝取り付けたスプレーヤの散布液により粉剤の大気への飛散を抑制する。繰出装置の動力はトラクタのバッテリを電源とする12VDCモータであり、繰出量はロールの軸回転数の増減により調整する。
(2)供試した噴管は樹脂性のDL多口噴頭である。噴管の長さ9〜11mの吐出精度は、変動係数でみると17〜33%であり、18mに延長すると変動係数は44%に増加した(表2)。散布の均一性を考慮した結果、噴管の長さは14mが限界と思われた。
2)石灰窒素の物性粉状石灰窒素の容積重は1.13g/㏄である。粒径分布は100μm以下のものが全体の30%を占め、300μm以下のものが全体の80%を占めている。粉状石灰窒素の取扱い時に舞い上がる微細な粒子の粒径は23μm(7〜34μm)であり、全体の15%を占めている。
3)水の散布による飛散防止効果風洞内風速2.5m/sにおいて、粉剤の散布と同時に散水した場合、1mの地点においては粉剤の落下量が散水なしに対して3倍になり、風洞の端での落下量は1/30に減少させることができた(図2)。さらに風洞の端で捕捉した粉剤の平均粒径は52μmから28μmに低下しており(表3)、水をスプレーすることによる粉剤の飛散抑制効果が確認できた。
4)圃場散布試験結果広幅粉機を用いて圃場試験を行った結果、十勝農試圃場では、平均散布量は12.5〜19.4㎏/10aであった(表4)。試験時は風速1m/sであったが、散布地点から風下25mの地点での飛散量は0.29/㎡と極めて少なく、散布地点から風下15mの地点での粉剤の粒径は23.6μm(8〜46μm)であった。茎葉枯凋は、散布後11日であった。芽室町における散布試験では、平均散布量は9.3〜13.2㎏/10aであった。粉剤の地面からの跳ね返りや、ひろがりを観察した結果から散布高さは60㎝が妥当と思われた。
表1 広幅散粉装置の仕様
散布幅 |
m |
14 |
ロール軸回転数 |
rpm |
O〜100 |
吐出口数 |
個 |
38 |
最大繰出量 |
㎏/min |
5 |
吐出口間隔 |
cm |
37.5 |
ファン風量 |
L/s |
105〜250 |
薬剤タンク容量 |
L |
150 |
|
|
|
表2 噴管長さと吐出精度
噴管長さ |
スロットル |
平均吐出量 |
変動係数 |
9 |
1 |
306 |
19.7 |
10 |
2 |
334 |
33.2 |
11 |
2 |
364 |
17.6 |
18 |
6 |
296 |
43.6 |
表3 各地点における平均粒径(μm)
距離(m) |
1 |
3 |
6 |
風洞の端 |
散水なし |
172 |
142 |
64 |
52 |
散水あり |
189 |
115 |
40 |
28 |
表4 圃場散布試験結果
試験場所 |
十勝農試 |
芽室町 |
|||||
No. |
1 |
2 |
3 |
4 |
1 |
2 |
3 |
速度m/s |
O.80 |
O.72 |
O.86 |
O.79 |
0.8 |
O.80 |
0.8 |
ファン |
2 |
3 |
4 |
5 |
4 |
4 |
4 |
散布量 |
12.5 |
13.3 |
15.7 |
19.4 |
9.3 |
13.1 |
13.2 |
範囲 |
7.7〜 |
9.0〜 |
11.5〜 |
12.4〜 |
7.1〜 |
12.O〜 |
11.0〜 |
散布高さ |
60 |
60 |
60 |
60 |
30 |
60 |
90 |
※繰出ロールの回転数は80rpm、スプレーヤ散布量74/10a
トラクタMF165、L-4、1200rpm
芽室町における試験は片側散布で実施
4.成果の活用面と留意点
1)普及上の留意点
(1)散布作業時には防塵マスク及び防除衣を着用する。
(2)噴頭にスプレーヤの水滴が付着すると固結して散布されなくなるので、作業時は常に送風する。
(3)作業後は必ずタンク内に残った粉剤をすみやかに抜き取り、ロール溝の清掃を行う。
(4)風が強く石灰窒素粉剤の飛散が懸念される場合には、散布作業を行わない。
5.残された問題点とその対応
1)作業幅の拡大(18m)
2)粉剤の補給・取扱い時に発生する浮遊粉剤の回収技術