【指導参考事項】
1995234
成績概要書 (作成平成8年1月)
課題の分類: 研究課題名:コムギ眼紋病菌の発生生態解明と防除対策 (コムギ眼紋病の緊急防除対策試験) (畑作土壌病害の生物・生態学的防除法開発試験) (高収益畑輪作「生物・生態的技術の導入によるコムギ眼紋病防除技術の確立」) 予算区分:道費、受託、補助 研究期間:平成元−6年度 担当科:中央農試病虫部土壌微生物科 病虫部病理科 稲作部栽培第二科 協力・分担関係: |
1.目的
コムギ眼紋病の発生生態を解明し、総合的かつ恒久的な防除対策を確立する。
2.方法
発生実態、病徴と発病経過、病原菌、伝染源、発生要因、被害解析、耕種的防除、薬剤防除、品種・系統の耐病性検定
3.結果の概要
【発生実態】
コムギ眼紋病は、道内での初発生確認後10年目で小麦栽培地帯全域に蔓延、定着していた。
【発生生態】
(1)コムギ眼紋病菌にはFE型(Wタイプ)とSF型(Rタイプ)の歯型が存在し、FE型は道南と道央地方に、SF型は道東と道北地方にそれぞれ優占して分布した。
(2)本病は種子伝染しない。
(3)本病の重要な伝染源は罹病変稈であり、汚染土壌や罹病麦稈のわずかな移動によってもほ場に容易に侵入、定着するため、健全ほ場は容易に汚染ほ場となる(図−1)。複数のほ場を共通の機械で作業する際は、可能な範囲で多発ほ場の作業を後にする。
【被害解析】
本病は、病茎率90%、発病度40(糊熟期)を越えると、病斑が茎を完全に取り囲む病室が発生するため、減収と品質低下が生じ、小麦も倒伏しやすくなる。しかし、病茎率90%、発病度40以下であれば被害はない(図−2)。
【防除対策】
(1)非寄主作物を2年以上作付けすることにより本病の発病が軽減されるが、春まき小麦を含め2年以上の小麦の連作により、その効果は認められなくなる。本病の被害を回避するには、連作を行わず3年以上の輪作体系を維持することが必要である(表−1)。また、発生量によっては、交互作も本病の発病軽減に有効である。
(2)は種時期が早いほどは種量が多いほど本病の発病は増加したが、これは茎数過剰が発病を助長するためと考えられた(図−3)。また、起生期の過剰な追肥は被害を助長した。したがって、本病の発病を助長させないためには、極端な早期は種や過剰は種を避け、茎数に応じた適正な分追肥によって、茎数過剰にならないように栽培管理を行う必要がある。
(3)本病は容易にほ場に定着してしまうが、多発しなければ被害がないことから完全な防除を目指す必要は全くない。上記の作付け体系と栽培管理によって、本病の実質的な被害を回避することができる。
(4)夏期の10日間以上の湛水は本病の発病軽減に有効であるが、2年目までは効果は持続しなかった。
(5)発生ほ場を水田化すると病原菌は死滅するので、田畑輪換は発病軽減に有効である。
(6)チオファネートメチル水和剤(1000倍)、プロピコナゾール乳剤(1000倍)および銅・有機銅水和剤(400倍)の散布は本病に対して防除効果が認められるが、前2剤は耐性菌やSP型の歯型には効果が劣り、後1剤は効果が不安定であるので、注意を要する。
(7)本病に対する薬剤散布適期は、幼穂形成期から節間伸長前期にかけての期間(止葉から2〜3枚下の葉が展開した時期に相当)であるが、適期幅は2〜3週間程度と比較的広いため、薬剤によっては他病害との同時防除が可能である。
(8)コムギ眼紋病抵抗性品種の簡便なほ場検定法を開発した。
表−1 作付け体系によるコムギ眼紋病の発病軽減効果
非寄主作物の 作付け年数 |
小麦1作目の 発病度指数 |
次年度連作時の 発病度指数 |
3年 | 29.1 | 111.9 |
2年 | 47.6 | 96.5 |
1年 | 71.6 | 103.6 |
交互作 | 66.9 | 103.8 |
連作 | 100.0 | 100.0 |
4.成果の活用面と留意点
(1)コムギ眼紋病は多発しない限り被害はないので、輪作体系と栽培管理による発病軽減策を防除対策の基本とする。
(2)薬剤防除は被害が予想されるほ場にのみ、他病害の防除を考慮しながら実施すると効率的である。
5.残された問題点とその対応
コムギ眼紋病抵抗性品種の育成