【指導参考事項】

1995236

成績概要書    (作成:平成8年1月)

課題の分類:
研究課題名:侵入害虫「キンケクチブトゾウムシ」の北海道における発生実体と生活史
予算区分:植物防疫事業費
研究期間:平5〜7年度
担当:北海道病害虫防除所予察課
担当者:奥山七郎・小野寺鶴将
協力・分担関係:

1.目的

 北海道におけるキンケクチブトゾウムシの発生実態を明かにするとともに、発生生体および生活環を解明し、防除対策の資に供する。

2.方法

(1)実態調査:鉢花および花木類などの生産販売農園を対象に、道内9支庁官内33市町村の88戸について発生の有無を調査した。発生が確認された地点では寄主植物および越冬状況について観察調査した。

(2)発生生態調査:越冬世代幼虫の蛹化および羽化時期、新成虫および越冬成虫の産卵と卵の発育などについて個体飼育を行い追跡調査した。

(3)被害の様相:鉢植えのシクラメンおよびプリムラを供試し、キンケクチプトゾウムシ若齢幼虫を株当り2頭、5頭、10頭および15頭放出した区を設定し、被害状況を観察した。

(4)有効薬剤の探索と処理方法の検討:幼虫に対する各積薬剤の虫体浸漬法、土壌灌注法、鉢の底面皿からの薬液吸水法、粒剤の土壌混和法などにより有効薬剤の探索を試みた。

3.結果の概要

(1)1993年8月、北海道において植物検疫上の重要害虫に指定されているキンケクチプトゾウムシが発見された。現在までの発生状況は、桧山、胆振、石狩、空知、上川および十勝支庁管内の計20地点で確認され、広範囲に分布していることが明らかとなった(図−1)。

(2)発生地において成虫の食害痕(図−2)を認めた植物は27科64種、幼虫の寄生加害を認めた植物は14科19種であった。

(3)越冬は成虫および幼虫の両態で行われるが、主体は年齢〜老齢幼虫と考えられる。

(4)幼虫は草本や木本などの株元土中で、成虫は落糞層下や枯草の間などに埋もれて越冬する。

(5)年1世代の発生で、繁殖に好適な温度は20℃付近にあると推定された。

(6)越冬幼虫の蛹化は5月上旬〜6月上旬にかけて行われ、新成虫は5月中旬〜6月下旬に出現する。新成虫の産卵前期間は約50日を要するので、産卵は7月上旬から関始され、新世代の幼虫は7月中旬頃から発生する。

(7)新成虫の生存期間は著しく長く、多くの個体は2年にわたり生存を続ける。

(8)越冬した成虫は5月中旬頃から産卵を開始し、その幼虫は5月下旬頃から発生する。

(9)鉢植えのシクラメンやプリムラでは1株に数頭の幼虫が寄生すると根部はことごとく食害され、大きな被害を受ける。

(10)幼虫に対して、各種薬剤の殺虫効果と薬剤の処理方法について検討したが、体系的な防除法を確立するには至らなかった。

4.成果の活用面と留意点

(1)本種は流通ルートに乗りやすいシクラメン、リーガースベゴニアなど鉢植えの観賞植物およびインパチエンス、サルビアなどの花壇用植物で発見頻度が高いことから、人為的に分布地域を拡大させる恐れがある。したがって、花き類の移動に当たっては、成虫の食害痕または幼虫発生の有無を予め確認するなど、分散防止に努めることが大切である。

(2)本種の体系的な防除法は確立されておらず、また、登録農薬もないが、今後の防除対策の基礎的知見として有効薬剤および薬剤の処理方法は活用が可能である。

5.残された問題点とその対応

 (1)発生生態・生活環の解明
 (2)有効薬剤の探索と防除法の確立