【指導参考事項】
1995237
成績概要書 (作成 平成8年1月)
課題の分類 研究課題名:テンサイ主要病害虫に対するモニタリング手法の開発 1.テンサイ褐斑病 (発生予察地域活用技術確立事業) (環境保全型防除要否判断基準確立事業) 予算区分:植物防疫事業費 担当科:北海道病害虫防除所 予察課 研究期問:平4〜7年度 担当者:堀田治邦 協力・分担関係:十勝農試 研究部病虫科 北見農試 研究部病虫科 |
1.目的
てん菜の主要病害である褐斑病に対して発生量に対応した防除要否を判断する方法としてより簡便なモニタリング手法を開発し、発生予察に基づいた適期防除とその防除効果の向上を図る。
2.方法
(1)発生実態調査(平4〜6年)
(2)定点圃における発生と面的推移等の解析(平4〜7年)
(3)各種薬剤の残効期間の把握(平6〜7年)
(4)発病株率を用いたモニタリング手法の開発(平5〜7年)
3.結果の概要
(1)発生実態調査から、発生量は圃場単位で異なり、薬剤散布状況により変動した。
(2)定点圃における発生推移の解析から、発病株率の推移で急激な増加期が認められた。これは発病度の増加に先行して現れるため、モニタリング手法として有効と考えられた。
(3)発病株率の急増期では画的にも水平的に広がり、発病指数はほとんどが1のままであった(図1)。
(4)病斑数の推移を見ると、株内での初発は外葉から8〜12番目の葉で多かった。病斑の増加期ではその直前に降雨があることから、降雨は蔓延に大きく関与していた。
(5)薬剤の残効期間は各薬剤で異なり、残効がそれぞれ10日(3薬剤)、10〜15日(1薬剤)、15日(3薬剤)および20日程度(2薬剤)に分かれた(表1)。
(6)発病株率50%に達した日と最終発病度(9/30)では高い相関があった(図2)。9月1日以降に株率50%に達した場合は最終発病度が30を越えなかった。
(7)最終的な被害は最終発病度が30を越えないことを目標とし、防除開始の発病株率を設定した。その結果、平成5年は80%以下、6年は40%以下、7年は90%以下であった(図3)。多発年(平成6年)の値と実用性を考慮して、株率を50%に設定した。
(8)調査は50株を系統抽出法(10株×5ヵ所)で選定し、5日間隔で実施するのが望ましい。なお、発病株率が急激に増加する場合があるので注意する。
表1 薬剤の残効期間
残効(日) | 薬剤名(希釈倍数) | |
10 | マンゼブ(500)、銅(500)、ピリフェノックス(500) | |
10〜15 | カスガマイシン・銅(800) | |
15 | カスガマイシン(500)、ビデルタール(1000)、シプロコナゾール(3000) | |
20 | ジフェノコナゾール(3000)、テトラコナゾール(1500) |
4.成果の活用面と留意点
(1)本病の初発以降の発生動向を把握し、発病株率が50%に達した場合、速やかに薬剤散布を開始する。なお、調査は系統抽出法で50株(10株×5カ所)を選定し、調査間隔は5日とする。
(2)薬剤散布の選定に当たっては、その特性を留意し、薬剤の効果が持続するような散布体系を構築する。
(3)連作圃場では本病の初発が著しく早く、発病も急激に進展する場合が多いので、適用は難しい。
5.残された問題とその対応
(1)本病の発生に関与する気象条件の把握
(2)高精度な発生予測技術の開発
(3)より効果的な薬剤のローテーション