【指導参考事項】
1995255
成績概要書 (作成平成8年1月)
課題の分類: 研究課題名:肉用牛の肉質推定のための超音波診断装置の利用法 (超音波測定装置利用による肉用牛の肉質推定法に関する試験) 予算区分:共同研究(民間等) 研究期間:平4〜6年度 担当科:新得畜試家畜部肉牛飼養科肉牛育種科 ホクレン農業協同組合連合会 協力・分担関係:中央農試専技室 |
1.目的
生体のままで肉用牛の肉質を知るために、超音波診断装置を使って生体の組織様相を確認する手法を肉用牛に対して適用し、牛の資質や飼養管理の良否の判断に活用する方法を検討した。
2.方法
(1)超音波診断方法および精度の検討解析しやすい超音波画像が得られる診断機器の感度条件を検索した。また、黒毛和肥育牛56頭の出荷前1か月以内の超音波診断値と枝肉測定値を比校して、超音波診断の精度について検討した。
(2)肉質推定の活用方法の検討黒毛和種去勢肥育牛18頭の皮下脂肪厚と脂肪交雑の経時的な変化を超音波診断によって調べ、この数値から将来の枝肉の状態を予測する可能性を探った。また、十勝管内の農家の黒毛和種繁殖雌牛31頭のBMS№を超音波診断で調べて、その産子の枝肉のBMS№と比較し雌牛の能力推定の可能性を検討した。さらに、肉牛農家における活用事例について検討した。
3.結果の概要
(1)−1)機器の操作と肉質推定法超音波診断機器の感度を輝度40〜60、近距離感度15〜20、遠距離感度1.5〜2.0の範囲で調節することによって、解析しやすい画像が得られた。BMS№の判定の目安として表1の基準を設定した。
(1)−2)超音波診断の推定精度超音波診断値と枝肉測定値の相関係数は表2に示したとおりであり、胸最長筋断面積、皮下脂肪厚、筋間脂肪厚、BMS№で有意な正の相関があった(P<0.05)。
(2)−1)肥育過程における肉質推定法16か月齢以後の皮下脂肪の超音波診断値と出荷後の枝肉の皮下脂肪厚とには有意な相関があり(表3)、過肥牛のチェックに超音波診断を利用できるものと考えられた。また、20か月齢以後のBMS№の超音波診断値と枝肉のBMS№の相関は有意であり(表4)、肥育中期以降における超音波診断によって、出荷後の枝肉の脂肪交雑の状態を予測できると考えられた。
(2)−2)繁殖雌牛に対する利用方法繁殖雌牛の超音波診断によるBMS№の判定値とその産子である肥育牛の枝肉のBMS№の相関係数は0.40(5%水準で有意)であり、超音波診断結果を雌牛の能力評価に利用できる可能性があると考えられた。
表1. 脂肪交雑の判断基準
BMSNo. | |||
1 | 3 | 5 | 8以上 |
僧帽筋、胸最長筋の中央部に輝点が認められず、黒く映る。 | 僧帽筋、広背筋の部分が中程度に白く輝き、胸最長筋内にもまばらに輝点がある。胸最長筋の輪郭は確認できる。 | 胸最長筋内にまんべんなく白い輝点があり、胸最長筋下部の境界線がやや判別し難い。 | 胸最長筋の輪郭が確認し難い。胸最長筋の下が黒く影のように映る。 |
表2. 超音波診断値と枝肉測定値の相関係数
相関係数 | ||
胸最長筋断面積 | 0.506 | * |
皮下脂肪厚 | 0.755 | * |
筋間脂肪厚 | 0.415 | * |
バラ部厚 | 0.25 | |
BMSNo. | 0.589 | * |
表3. 皮下脂肪厚の超音波診断値と枝肉測定値の相関係数
月齢(月) | 相関係数 | |
16 | 0.54 | * |
18 | 0.73 | ** |
20 | 0.74 | ** |
22 | 0.72 | ** |
24 | 0.7 | ** |
26 | 0.68 | ** |
28 | 0.9 | ** |
30 | 0.91 | ** |
表4. BMSNo.の超音波診断値と枝肉測定値の相関係数
月齢(月) | 相関係数 | |
20 | 0.69 | ** |
22 | 0.71 | ** |
24 | 0.91 | ** |
26 | 0.82 | ** |
28 | 0.76 | ** |
30 | 0.91 | ** |
表5. BMSNo.ごとの産子の頭数(頭)
母牛の BMSNo. |
産子のBMSNo. | ||||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
1 | 1 | 1 | 1 | ||||||
2 | 1 | 1 | 2 | 2 | |||||
3 | 2 | 4 | 3 | 1 | |||||
4 | 1 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 | |||
5 | 1 | 1 |
4.成果の活用面と留意点
(1)超音波画像の読み取りには熟練が必要であり、実施に当たっては訓練をつんだ技術者の配置が必要である。
(2)的確な診断結果を得るためには、期間をおいて2回以上の超音波診断を行うことが望ましい。
(3)出荷直前期などの脂肪付着の多い牛では鮮明な超音波画像を得ることが難しいので、超音波診断は注意して行う必要がある。
5.残された問題とその対応
(1)画像解析装置等を用いた、超音波画像解析の簡易化技術。
(2)繁殖雄牛の超音波診断値と育種値の関連の検討。