【指導参考事項】

1995260

成積概要書     (作成平成8年1月)

課題の分類:北海道 畜産鶏飼養技術 滝川畜試
研究課題名:鶏へのベタイン(ビートシュガー製造副産物)給与効果
        (養鶏に対するベタイン(ビートシュガー製造副産物)の給与効果に関する試験)
予算区分:受託
研究期間:平4〜6(1992−94)
担当科:道立滝川畜試研究部家きん科
協力・分担関係:なし

1.目的

 国産のベタイン製造プラントが生産を開始したことから、ベタインの養鶏における利用方法の開発を行う。養鶏飼料中のメチオニンにたいするベタインの代替について検討するとともに、ベタインが持つとされる発育の促進、代謝促進効果にともなう鶏体への過剰脂肪蓄積の抑制等の生理活性効果について産卵鶏および肉鶏における利用方法を検討する。

2.方法

 1)産卵鶏に対するベタインの給与
  試験鶏:シエバースタークロス288
  測定項目:産卵率、平均卵重、飼料摂取量、体重、卵殻破壊強度、内部卵質
  基礎飼料:CP16%、MF2,800kcal/㎏

(1)ベタインによるメチオニンの代替
処理区 基礎飼料中
メチオニン
添加物 供試羽数
対照区 0.27% DL-メチオニン0.06% 22羽×3反復
代替区 0.27% ベタイン0.06% 22羽×3反復
増給区 0.27% DL-メチオニン0.06%
+ベタイン0.03%
22羽×3反復

(2)産卵鶏用飼料にベタインを多量に添加したときの影響
処理区 基礎飼料中
メチオニン
添加物 供試羽数
対照区 0.27% 30羽×3反復
1%区 0.27% ベタイン1% 22羽×3反復
3%区 0.27% ベタイン3% 30羽×3反復

 2)肉用鶏に対するベタインの給与
  試験鶏:名古屋種×(軍鶏・ロードーアイランドレッド)「北海地鶏」
  測定項目:体重、飼料摂取量、解体部位重量、肉の理化学性状
  飼養:基礎飼料プロイラー後期用(CP19%ME3,250kcal/㎏)、飼育密度6.7羽/㎡
  処理区:(少量添加試験)対照区、ベタイン0.05%区、ベタイン0.10%区                         (多量添加試験)対照区、ベタイン1%区、ベタイン3%区

3.結果の概要

1)産卵鶏に対するベタインの給与
(1)産卵鶏用飼料におけるメチオニン代替の検討ベタイン代替区は産卵率、産卵日量、平均卵重において対照区を上回る成績を示したが、その差は有意ではなかった。飼料摂取量は代替区の方が多い傾向にあり、飼料要求率は同様であった(表1)。これらの結果から、ベタインは産卵鶏用配合飼料における単味添加のDLメチオニンを代替できると考えられた。

表1 産卵鶏用飼料にベタインを添加したときの産卵成績(30〜64週令)
処理区 産卵率 産卵日量 平均卵重 日摂取量 飼料要求率
対照区 88.60% 56.6g/日 63.9g 122.6g/日羽 2.17
代替区 88.9 57.3 64.5 124.2 2.17
増給区 87 55.2 63.4 121.6 2.21

(2)産卵鶏用飼料にベタインを多量に添加したときの影響

1%区と対照区では産卵成績に差はみられなかった。3%区では対照区および1%区より産卵日量・飼料要求率は成績が劣った(表2)。ハウユニット、卵殻強度についての差異はいずれの区間においてもみられなかった。

表2 産卵琴用飼料にベタインを多量に添加したときの産卵成績(22〜65週令)
処理区 産卵率(%) 産卵日量(g/日) 平均卵重(g) 日摂取量(g/日羽) 飼料要求率
対照区 88.3±1.4 53.2±0.9a 60.1±0.7 120.4±1.5 2.28±0.02a
1%区 87.3±0.4 52.9±O.4a 60.5±0.6 121.2±1.2 2.30±0.01a
3%区 85.0±1.3 50.3±1.1b 59.0±O.6 122.3±3.5 2.45±0.02b
平均値±標準偏差
異文字間に有意差(P<0.05)

2)肉用鶏に対するベタインの給与

少量添加試験では0.05%、0.10%とベタイン量が増加するほど体重が大きくなる傾向にあり、多量添加試験では1%、3%と増加した場合では逆に体重は小さくなる傾向を示したが、有意ではなかった(表3)。飼料要求率も少量添加試験では大きな差異はみられなかったものの、1%以上添加したときは飼料要求率の上昇傾向にあった。

表3ベタインを給与した北海地鶏(雌)の体重と飼料要求率
処理区 体重 飼料要求率
4週齢 7週齢 10週齢 14週齢 16週齢
少量添加 対照区 364g 732g 1,135g 1,605g 1,772g 3.48
0.05%区 365 697 1,109 1,590 1,790 3.51
0.10%区 382 729 1,145 1,639 1,832 3.47
多量添加 対照区 356 776 1,234 1,787 1,970 3.44
1%区 357 776 1,224 1,771 1,954 3.52
3%区 360 774 1,197 1,719 1,919 3.5

4.成果の活用面と留意点

 ベタインの給与は脂肪蓄積を抑制すると言われている。日本鶏のように本来脂肪の少ない鶏へのベタインの給与が、脂肪蓄積を抑制し、肉の食味を低下させると考えられるので、北海地鶏などへの給与は慎重に行なうこと。

5.残された間題とその対応

 腹腔内脂肪の抑制やストレスの緩和など、ベタインの持つ生理作用を有効に利用することが期待できるブロイラー用飼料での利用方法が未検討である。