【研究参考】

1995261

成績概要書     (作成平8年1月)

課題の分類:北海道畜産・草地畜産飼料滝川畜試
研究課題名:ホタテガイ副産物の豚における飼料価値
        (ホタテガイ副産物の処理・利用技術に関する研究開発ホタテガイ副産物の飼料化)
予算区分:道費(重点研究開発連携プロジェクト)
研究期間:平5〜7年度(1993−95)
担当科:滝川畜試研究部畜産資源開発科
協力・分担関係:中央水試、函館水試工業試験場、衛生研究所、中央農試

1.目的

 重金属を除去したホタテガイ副産物の飼料成分、肉豚での採食性、消化率および増体効果を明らかにし、飼料として有効利用を図るため検討する。

2.方法

(1)ホタテガイ副産物の化学組成および肉豚での栄養価値査定
 1)ホタテガイ副産物の化学組成
  材料:ホタテガイ中腸腺、軟体部1(秋産)、軟体部2(春産)
  調査項目:重金属除去処理過程における重量および化学組成変化
 2)ホタテガイ副産物の肉豚での栄養価値査定
  消化試験:去勢雄豚4頭(開始時平均体重22〜27㎏)4×4ラテン方格(育成配合飼料、CP55%魚粉   末、中腸腺・付着物または軟体部)飼料の給与量はほぼ摂取しつくす量とした。予備期5日、水期5日、全  糞採取法
  調査項目:採食量、消化率、栄養価(可消化粗蛋白質、可消化養分総量、可消化エネルギー)、        体重変化、血液性状

 

(2)ホタテガイ副産物の肉豚での肥育効果の判定
  魚粉末をホタテガイ軟体部で置き換えた飼料を調製し肉豚で比較する
  供試豚16頭(試験開始時体重30㎏、肥育終了時体重110㎏)
  調査項目:採食量、体重変化、健康状態、と体形質

3.結果の概要

(1)乾物中のカドミウム(Cd)がホタテガイの軟体部1で73ppm、軟体部2で31ppmあったが、酸による重金属除去処理したところいずれも1ppm以内となり、飼料の有書物質の指導基準値以下であった。

(2)原材料から水洗までの乾物回収率は軟体部1で83%、軟体部2で79%であった。

(3)乾物中の粗蛋白質は中腸腺で50.8%、軟体部1は59.5%、軟体部2は65.5%であった。

(4)ホタテガイ軟体部及び魚粉末について配合飼料の15〜30%を代替して給与したところ大差ない採食性を示した。中腸腺の乾物消化率は47.7%、軟体部1で53.1%と低かったが、生殖腺の割合が高かった軟体部2の乾物消化率は74.2%であった。

(5)乾物中の可消化粗蛋白質合有率は中腸腺で32.9%、軟体部1で41.4%、軟体部2で56.5%であった。

(6)配合飼料の魚粉末(配合割合2.3%)をホタテガイ軟体部と粗蛋白質量についておきかえても肥育豚の発育成績に有意差は認められなかった(5%水準)。

(7)屠殺解体成績および脂肪の融点でも魚粉区と大差なく、軟脂はなかった。

(8)ホタテ区と魚粉区の血液性状は両区で大差なかった。

表1 ホタテガイ軟体部1の重金属除去処理による乾物回収率と乾物中成分変化
区分 回収率 粗蛋白 粗脂肪 灰分 Na Mg Cd
% % % % % % % ppm
原材料 100 66.4 12 7.5 0.57 O.67 0.29 73.4
水洗1回 88 62 17.3 4.4 0.02 0.03 0.02 1.9
水洗3回 83 62.8 19.8 3.7 0.02 0.03 0.O1 0

表2 水洗後材料の部位別割合(乾物、%)
材料 中腸腺 生殖腺 その他
軟体1 42.8 17.5 39.7
軟体2 23.9 42.3 33.8
 注)その他は、外套膜など

表3 乾物摂取量(㎏/頭/日)と乾物消化率(%)
試験区 配合飼料 試験飼料 体重
100㎏当
消化率
軟体1 1.56 0.3 1.86 4.05 53.1
軟体2 1.69 0.32 2.01 4.29 74.2
魚粉末 1.65 0.3 1.95 4.1 62.6
配合飼料 2.03 2.03 4.24 84

表4 飼料成分と消化率(%)
供試飼料 水分 乾物中成分 消化率
粗蛋白 粗脂肪 NFE 粗繊維 灰分 DCP TDN 粗蛋白 粗脂肪
中腸腺 6.3 50.8 14.5 31.7 0.2 2.8 32.9 60.1 64.7 64
軟体1 4.5 59.5 12.1 17.9 0.4 10.1 41.4 59.2 69.6 62.7
軟体2 6.7 68.2 8.2 15.2 0.4 8 56.5 75.8 82.7 62.4
魚粉末 10.5 65.5 8.5 0.1 0.3 25.6 54.9 64.9 83.9 51.3

表5 発育成績
区分 ホタテ区 魚粉区
頭数(頭) 8'(7) 8
開始体重(㎏/頭) 43.2'(43.2) 43.2
終了体重(㎏/頭) 110.0'(110.1) 110.6
所要日数(日) 77'(74) 68
日増体重(g/日) 887'(916) 1000
飼料要求率 3.54'(3.48) 3.3
注)( )内数値は、脚弱豚を除いた値

表6 屠殺解体成績
区分 ホタテ区 魚粉区
絶食体重(㎏/頭) 109.7 110.2
枝肉歩留(%) 73.2 72.8
背腰長Ⅱ(㎝) 74.5 75.6
背脂肪厚(平均)(㎜) 26.4 27.3
融点 背脂肪外層(℃) 29.7 31
背脂肪内層(℃) 36.5 37.8
腎周囲脂肪(℃) 44 42.3

4.成果の活用面と留意点

(1)処理軟体部の給与限界が明かでないので、飼料への混合割合は粗蛋白質換算で魚粉の混合割合程度にとどめ、多量混合しない。

(2)処理軟体部は、重金属含有率が飼料の有害物質の指導基準より低いことを保証したものを用いる。

5.残された問題とその対応

(1)処理軟体部の給与限界について明らかになっていないので、地域産学官共同事業で検討する予定である。

(2)処理軟体部を飼料として製造販売するときには、飼料安全法による雛における安全性テストと届出が必要である。