【指導参考事項】
1995263
成績概要書 (平成8年1月作成)
課題の分類: 研究課題名:集約放牧を組み入れたホルスタイン去勢牛の育成・肥育方式 予算区分:経常 研究期間:平5〜6年度 担当研究:北農試・草地部・放牧利研究室 担当者:池田哲也 落合一彦 三田村強(現東北農試) 須藤賢司 協力・分担関係:なし |
1.目的
従来の放牧育成より高増体の育成ができる集約放牧技術を組み込んだホルスタイン種去勢牛の育成・肥育方式について、増体量、肉質、経済性を検討し、放牧を取り入れた肥育体系の実用性を明らかにする。
2.方法
6ヶ月齢のホルスタイン去勢牛(34〜40頭)を12ヶ月齢までチモシー草地を主体とする草地で集約放牧により育成した(放牧育成区)。放牧終了後約1ヶ月間、試験区と別の放牧地で濃厚飼料への馴致を行った後、民間の肥育農場(鹿部町)で24ヶ月齢まで舎飼肥育を行い市場に出荷した(表4、5)。また、同じ農場での慣行の肥育を行った牛群(舎飼区)と飼料給与量、枝肉成績を比較検討した。
3.結果の概要
1)集約放牧による増体量は平均DG0.92㎏で、良好な発育が得られた(図)。
2)放牧育成区の舎飼肥育期のDGは1.24㎏で、舎飼区より高く、飼養期間を通してのDGは舎飼区とほとんど変わらなかった(表1、図)。
3)枝肉歩留、肉質等級「3」以上の割合は、舎飼区と差がなかったが、肉質等級は全国平均に比べ大幅に高く、良質の牛肉が生産された(表1)。
4)屠場における内臓の一部廃棄率は舎飼区に比べ低かった(表3)。
5)放牧育成区の給与飼料費は一頭当たり165千円で、舎飼区の207千円に比べ飼料費が20%節減できた(表3)。
表1 集約放牧を組入れた育成肥育方式による肥育成績
頭数 | 出荷月令 (月) |
DG1) (㎏/DAY) |
屠殺時 体重(㎏) |
枝肉重量 (㎏) |
枝肉歩留 (%) |
肉質等級3以上 割合(%) |
|
放牧育成区 | 112 | 24 | 1.1 | 810 | 448 | 55.4 | 57.5 |
舎飼区 | 40 | 24 | 1.06 | 835 | 470 | 56.5 | 60 |
全国平均2) | 22 | 1.07 | 748 | 4323) | 39.53) |
表2 放牧育成肥育による一頭当たりの給与飼料費の試算
育成期1) (放牧期) |
肥育期2) | 合計 | |
放牧育成区 | 215113) | 143,997 | 165,508 |
会飼区 | 63,030 | 144,528 | 207,558 |
全国平均 | I88,4884) |
表3 屠場における一部廃棄率(%)
廃棄率 | |
放牧育成区1) | 8 |
舎飼区2) | 25 |
表4 肥育期の平均給与飼料量
配合 | 製造 粕類 |
ケーン トップ |
|
放牧育成区 | 7 | 5.1 | 1.1 |
舎飼区 | 6.8 | 5.2 | 0.9 |
表5 各飼料のDCPおよびTDN含量
DCP | TDN | |
配合 | 1O.8 | 71.7 |
製造粕類 | 7.7 | 94.8 |
ケーントップ | 3.2 | 57.7 |
4.成果の活用面と留意点
①ホルスタイン去勢牛肥育において、放牧を取り入れた低コスト肉牛生産技術として有効
②放牧馴致期、肥育馴致期に増体を停滞させない飼養管理が必要。
5.残された問題点とその対応
①入牧時の月齢が6ヶ月齢外の牛への適用方法の開発を行う必要がある。また、黒毛和種等他品種についても実証的検討が望まれる。
②集約手放牧技術の経営的評価を早期に行い、その結果に基づく技術改良によりさらなる低コスト化が期待される。