【指導参考事項】

 成績概要書 (作成 平成8年1月)
研究課題名:とうもろこし(サイレージ用)新優良品種の栄養価と増収技術
予算区分:道費
担当科:新得畜試 生産技術部 草地科
研究期問:平成4〜7年
協力・分担関係:なし

1.目的
とうもろこしの新優良品種の栄養を査定するとともに、栽培法とその栄養価を査定することにより栄養収量の向上法を検討する。

2.方法
(1)とうもとこしの品種別栄養価
供試品種:道央地域:3540,P3732,,DK535,P3747,3790,キタアサヒ,3897,デイア,他
十勝地域:カーギル123,セリア,デイア,ドリーナ,エマ,AW611,他
(2)とうもろこしの生育時期別栄養価
供試品種:道央地域:エマ,P3747,3540,P3732, 十勝地域:エマ,デイア,
処理:時期別は6月下旬〜10月20日の間10日ごとに調査
熟度別は乳熟、黄熟初期、成熟の3段階とした。
(3)とうもろこしの栽植密度別栄養価と栄養収量
供試品種:道央地域:エマ,P3747,3540, 十勝地域:エマ,デイア
処理:栽植密度:4000,8000,12000,16000,24000,32000本/10a
(4)マルチ栽培とうもろこしの栄養価と栄養収量
供試品種:道央地域:デイア,3540,3472 十勝地域:セリア
処理:マルチの有無、
:栽植密度:4000,8000,12000,160OO本/10a
 

3.結果の概要
(1)とうもろこしの品種別栄養価
1)乾雌穂割合は47〜61%と品種による差が大きかった。
2)雌穂中の子実割合は78〜91%で、品種により10%以上の差があった。
3)消化試験によるホールクロップの実測TDNでは71〜74%で品種による差は少なく、品種の早晩性による差も見られなかった。雌穂のTDNは82〜89%であった。
4)茎葉の実測TDN値は51〜64%で品種による差が大きかった。この品種間差は茎葉中に含まれる不消化粧繊維含量が10〜15%、可消化NFE含量が21〜31%の違いが原因していた。
 
(2)とうもろこしの生育時期別栄養価
1)とうもろこし茎葉の生育時期別飼料成分は、粗蛋白含量の変化が大きく、3540で6月下旬の25%から10月下旬に4,5%まで低下した。
2)茎葉のTDN含量は早生種で乳熟期が61%、黄熟期が56%、完熟期では49%まで低下した。
3)ホールクロップのTDN含量は乳熟期が70%程度の値を示した。最も高かったのは黄熟期で73%であった。完熟期は66〜70%で黄熟期より低かった。
4)雌穂の栄養価は黄熟期が高く、乳熟期がやや低かった。黄熟期のTDN含量は88%程度であった。
 
(3)とうもろこしの栽植密別栄養価と栄養収量
1)栽植密度を高くすると、16000本までは収量が増加する傾向を示したが、その程度は品種、年次試験場所で異なった。
2)栽植密度を高くすると、乾雌穂割合、子実割合は低くなる傾向を示した。
3)十勝では栽植密度12000本/10a以上で倒伏がやや見られた。
 
(4)マルチ栽培とうもろこしの栄養価と栄養収量
1)道央地域とうもろこしのマルチ栽培を行うことにより、生育促進が図られ、収穫が10日ほど早まった。
2)マルチを行うことにより、道央地域でも収量が20〜30%程度高めることができた。
3)マルチを行うと、DCP,TDNはやや低下したが、栄養収量への影響はなかった。
4)マルチで栽植密度を慣行の2倍にすることにより、栄養収量は50〜70%程度高まった。
5)道央において、晩生種、マルチ、密植、多肥で乾物収量3t以上の収量を達成した。

表1 優良品種とうもろこしの栄養価(DM中%)
品種名 茎葉 ホールクロップ 雌穂
DCP TDN DCP TDN DCP TDN
ヒノデワセ 2.9 60.7 3.9 71.6 4.9 82
デイア 3.3 54.3 3.6 72 3.9 84.8
キタアサヒ 2.8 55.1 4.2 73.1 5.4 88.1
3790 3.4 56.8 4.3 73 5.1 86.8
P3732 3.6 55.1 4.5 73.7 5.3 89
3540 2.5 56.1 3.5 71.1 4.6 88.2
DK535 2.1 59.7 3.O 72.1 3.9 84.7
(熟期:黄熟初期)

表2茎葉の栄養価(DM中%)
品種名 栄養価
DCP TDN
エマ 5 59.2
リビア 3 62.4
AW611 5.9 58.2
ドリーナ 2.7 64.1
セリア 4.2 59.2
カーギル123 2.8 61.6
3897 3.7 61.6
(熟期:黄熟初期)

表3 とうもろこしの熟度別の栄養価
品種 デイア P3747
熟度 茎葉 ホールクロップ TDN収量
(㎏/10a)
茎葉 ホールクロップ TDN収量
(kg/10a)
DCP TDN DCP TDN DCP% TDN% DCP TDN
乳熟 5.5 60.8 5.9 69.7 939 2.7 61.5 3.3 70.3 877
黄熟 4.3 56.3 5.2 72.6 1332 1.9 58.8 3.4 73.2 1191
完熟 2.7 49.4 4.2 70 1232 2.8 55.4 2.2 65.7 1188

表4 マルチ栽培とうもろこしの栄養価と栄養収量(DCP,TDNはDM中%,収量は㎏/10a)
品種 デイア 3540
処理 密度 収穫日 DCP TDN TDN収量 収穫日 DCP TDN TDN収量
マルチ 4000 8.22 4 72.1 1208 110 9.04 3.7 73.6 1649 116
8000 3.9 73.9 1451 132 3.2 72.2 1739 122
12000 3.4 71.3 1655 150 2.2 70.4 1857 130
16000 3.6 72.2 1888 171 2.3 70.7 2141 150
慣行 4000 9.03 5.4 73 779 71 9.13 4.4 71.O 1209 85
8000 5.2 73.4 1101 100 3.3 72.6 1423 100
12000 4.4 75.2 1409 128 3.6 71.3 1666 117
16000 4.9 74.3 1573 143 3.8 72.9 1892 133

4.成果の活用面と留意点
栽植密度は品種の耐倒伏性を考慮する。
マルチ栽培および高密度栽培を行う場合は収量に応じた施肥を行うことが望ましい。

5.残された問題とその対応
耐倒伏性および茎葉の栄養価の高い品種開発。
黄熟中後期の栄養価査定