【指導参考事項】
1995266
成績概要書 (作成平成8年1月)
課題の分類: 研究課題名:チモシーおよびアカクローバ新品種の刈取りスケジュール別栄養収量と採食量 (牧草・とうもろこし新優良品種の栄養価特性の解明) 予算区分:道費 研究期間:平3−7年度 担当科:新得畜試生産技術部草地科 協力・分担関係:なし |
1.目的
チモシーおよびアカクローバ新品種について早刈りを中心とした刈取りスケジュール別に栄養収量と採食量を明らかにする。
2.方法
(1)TDN含量および自由採食量の推定
めん羊の飽食条件での消化試験によりTDN含量と自由採食量(DMI)を明らかにする。
1)TDN含量の推定
2)自由採食量の推定
3)1番草と再生草におけるTDN含量と自由採食量の関係
(2)刈り取りスケジュール別TDN収量と採食量
(1)で作成したTDN含量およびDMIの推定式を用い、刈取りスケジュール別TDN収量と採食量を明らかに する。
1)チモシー品種の刈敢りスケジュール別TDN収量と採食量
2)チモシー早生新品種の栄養価の比較
3)アカクローバ「ホクセキ」の刈取りスケジュール別TDN収量
3.結果の概要
(1)T&T法によるinvitro乾物消化率(IVDMD)を用いてTDN含量の推定式を作成した。
チモシーTDN(DM%)=0.99IVDMD=0.85n=18r=0.91s.e=2.39
マメ科TDN(DM%)=0.79IVDMD+8.68n=10r=0.94s.e=1.82
(2)0b(難消化性繊維分画)を指標としたチモシーのDMI推定式を作成した。推定値は乳牛によるDMIの相対的な評価に利用する。チモシーDMI(g/㎏0.75)=−1.28Ob+126.8n=24r=−0.91s.e=5.86
(3)めん羊による飽食条件下での消化試験では、同じTDN含量で2番草のDMIが1番草より低下するという傾向は認められなかった。
(4)チモシー「キリタップ」、「ノサップ」およびアカクローバ「ホクセキ」についての早刈りを中心とした刈取りスケジュールモデル別に、TDN収量を明らかにした、さらに、「ノサップ」と「キリタップ」について採食量を明らかにし、スケジュール別に草地の必要面積と濃厚飼料の必要量を「ノサップ」の出穂期刈りに対する指数で示した。草地面積指数と濃厚飼料指数は、各刈取りスケジュールにおいて牧草からの乾物摂取量を最大限高めたときに必要とされる草地面積とそのときに濃厚飼料がどの程度まで削減可能かを示すものである、。耐倒伏性に優れる品種を含むチモシー早生品種の成分含量およびIVDMDに、品種間で大きな差は認められなかったことから「ノサップ」の刈取りスケジュールは他の早生品種にも適用できる。
表1 チモシー「ノサップ」の刈取りスケジュール
刈取りスケジュール | TDN含量(DM%) | 年間 TDN収量 (㎏/10a) |
DMI指数 | 草地 面積 指数 |
濃厚 飼料 指数 |
||||||
1番草 | 2番草 | 3番草 | 1番 | 2番 | 3番 | 1番 | 2番 | 3番 | |||
穂ばらみ (6/12) |
40日 | 9/中旬 | 71 | 68 | 70 | 496 | 1.12 | 1.31 | 1.32 | 1.6 | 0.84 |
50日 | 〃 | 63 | 74 | 596 | 1.13 | 1.41 | 1.29 | 0.87 | |||
出穂始 (6/17) |
40日 | 10/中旬 | 68 | 67 | 71 | 572 | 1.02 | 1.27 | 1.35 | 1.26 | 0.96 |
50日 | 〃 | 62 | 72 | 678 | 1.07 | 1.37 | 1.02 | 0.96 | |||
出穂期 (6/22) |
40日 | 〃 | 65 | 64 | 71 | 628 | (59) | 1.14 | 1.31 | 1.05 | 1.03 |
50日 | 〃 | 64 | 73 | 659 | 1.07 | 1.27 | 1 | 1 |
表2チモシー「キリタッブ」の刈取りスケジュール
刈取りスケジュール | TDN含量(DM%) | 年間 TDN収量 (㎏/10a) |
DMI指数 | 草地 面積 指数 |
濃厚 飼料 指数 |
||||||
1番草 | 2番草 | 3番草 | 1番 | 2番 | 3番 | 1番 | 2番 | 3番 | |||
穂ばらみ (6/19) |
40日 | 10/中旬 | 69 | 67 | 70 | 654 | 1.14 | 1.24 | 1.28 | 1.16 | 0.8 |
50日 | 〃 | 65 | 71 | 673 | 1.1 | 1.37 | 1.11 | 0.87 | |||
出穂始 (6/28) |
40日 | 10/中旬 | 65 | 66 | 71 | 736 | 0.99 | 1.17 | 1.35 | 0.9 | 1.01 |
50日 | 〃 | 61 | 70 | 783 | 1.04 | 1.36 | 0.82 | 1.06 | |||
出穂期 (7/4) |
50日 | − | 64 | 56 | − | 697 | 0.92 | 0.93 | − | 0.78 | 1.25 |
60日 | − | 57 | − | 755 | 0.98 | − | 0.73 | 1.23 |
表3 アカクローバ「ホクセキ」の刈取りスケジュール
刈取りスケジュール | 乾物収量(kg/10a) | TDN含量(DM%) | 年間 TDN収量 (㎏/10a) |
|||||||
1番草 | 2番草 | 3番草 | 1番 | 2番 | 3番 | 年合計 | 1番 | 2番 | 3番 | |
6月12日 (穂ばらみ) |
40日 | 9/中旬 | 385 | 151 | 212 | 748 | 64 | 63 | 59 | 468 |
50日 | 〃 | 300 | 159 | 844 | 59 | 63 | 523 | |||
6月17日 (出穂始) |
40日 | 10/中旬 | 444 | 200 | 202 | 846 | 62 | 64 | 61 | 527 |
50日 | 〃 | 305 | 154 | 904 | 58 | 62 | 549 | |||
6月22日 (出穂期) |
40日 | 〃 | 465 | 201 | 156 | 822 | 61 | 60 | 62 | 500 |
50日 | 〃 | 286 | 143 | 894 | 57 | 61 | 534 |
4.成果の活用面と留意点
(1)経営形態により刈取りスケジュールを選択できる。
(2)チモシーの単播草地およびアカクローバとの混播草地に活用できる。
(3)早刈りした翌年は標準刈りに戻すこと。
(4)2番草刈取時期に高温旱ばつが予想されるときは、チモシーの3番草の再生が劣ることがあるので、2番 草40日刈りは避ける。
(5)本成績は十勝地域および牧草の生育の類似する地域に適用する。
5残された問題とその対応
(1)乳牛での採食量の評価
(2)マメ科(混播)牧草の採食量