【指導参考事項】

1995268

成績概要書     (作成平成8年1月)

課題の分類:草地栽培寒地型牧草B−1
        北海道
研究課題名:道央地域における芝草の用途別利用技術
       (農村緑地における芝草の用途別利用技術の確立)
予算区分:道単
研究期間:平4−7年度
担当:滝川畜試 研究部草地飼料作物科
    中央農試 畜産部畜産科
協力・分担関係:

1.目的

 芝草の利用実態を調査する中から利用上の問題点を明らかにする。そのうえで、各用途に適する寒地型芝草の草種・品種を選定するとともに、造成雑持管理法を検討する。

2.方法

 (1)芝草の実態調査
 (2)芝草用草種・品種の選定
 (3)芝草の造成維持管理法
  1)混播草種組合せ
  2)芝草の播種時期
  3)芝草の秋期播種時期
  4)芝草の最終刈取り時期
  5)N施肥量
  6)芝草の耐踏圧性

3.結果の概要

(1)芝草の利用実態調査道央地域91カ所の芝生利用状況を調査した。

1)鑑賞芝鑑賞芝は、半数以上が造園業者等に管理が委託され、おおむね良好に維持されていた。使用草種はケンタッキーブルーグラス(KB)が主体であった。

2)利用芝利用芝は、用途によって管理状態が異なった。キャンプ場は、耐踏圧性が強いとの理由でクリーピングレッドフェスク(CRF)が混播されていたが、全般に裸地が多く芝生の景観は良くなかった。公園等の芝生は、KBが主体で、造成後の管理により雑草が侵入したり裸地が広がったところがあった。また、特記すぺきこととして、地域によって越冬性に弱点のあるペレニアルライグラス(PB)が全道一律に利用されており、指導指針等の改善の必要があると考えられる、競技場や多目的広場の芝生は、密度も高く良好に管理されていた。

3)ゴルフ場ゴルフ場は、グリーンとその他で使用草種、管理法が異なっていた。使用草種はグリーンがベントグラス(BG)単一、フェアウエーやラフはKDが主体であった。刈取り回数は特にグリーンで多く、殺菌剤の使用頻度も高かった。芝生管理技術は最高水準にあったが、少ない技術情報に頼っていた。

4)保護芝保護芝は、のり面保護が主目的で、使用草種はトールフェスク(TF)が主体であった。高速道路のり面の一部に裸地割合が高く、土壌保全機能に不安のある所があった。雑草や灌木類ものり面植生のパートナーとして位置づけられていた。

(2)芝草の草種・品種の選定

1)KBは永続性が高く隙間のない芝生を作るが、さび病に強く、造成時の定着が早い品種を選ぶ必要がある。

2)PRは造成時の定着が早く、景観がよい芝生を作るが、草の伸びが早く刈取りの労力がかかるので、草の伸びが遅い品種を選ぶ。

3)CRFやチューイングフェスク(CF)は、きめの細かい芝生を作るが、経年化によって被度や密度が低下することがあるので、永続性の高い品種を運ぶ。

4)BGやコロニアルペントグラス(Col、BG)は、密度の高い美しい芝生が出来るが、菌核病や夏枯れに強い品種を選ぶ。

5)TFは、永続性が高く、環境ストレスにも強いが、芝生のきめが粗いことと刈取り断面が白く見える欠点があるので、草の伸びが遅く、葉幅の狭い品種を選ぶ。

6)鑑賞芝では、庭園芝はBG、家庭芝の場合観賞用として用い管理に手間をかけられる場合はBG、管理に手間をかけられない場合はKBを用いると良いと考えられる。

7)利用差では、公園ではKBやPR、キャンプ場や競技場ではTF、また景観の良い競技芝を作る場合はKBを用いると良いと考えられる。

(3)芝草の造成維持管理法

1)混播組み合わせ

①望ましい混播組み合わせとしてKB+PR、KB+BG、KB+Col、BGの3通りが挙げられたが、KB+Col、BGの組み合わ世は菌核病の罹病程度が大きいという問題があった。

②KB+BGの組み合わせはスタンドの確立がきわめて早く、密度が高いので早期から利用が可能である。播種重量割合はKB:BG=9:1程度が望ましいと考えられる。

③KB+PRの組み合わせはスタンドの確立がやや早い。KB:PR=7:3〜9:1の播種割合でKB割合の高い芝生が出来る。

2)播種時期、最終刈取時期、N施肥量、耐踏性

①芝草の播種時期は、KBは混播利用を前提として。8月中が適当と考えられる。

②芝草の最終刈取時期は、10月下旬では翌春の萌芽、草勢に影響があることが認められた。

③芝生を良好に維持するため、当面Nは10aたり8㎏程度施用するのが望ましい。

④CRFは、踏圧により裸地割合が顕著に増加し、耐踏性が弱い傾向が認められた。

主要成果の具体的数字
表1.各草種の長所、短所および品種選定のポイント
草種 長所 短所 品種選定のポイント
KB 永続性が高い隙間のない芝ができる。損傷回復が早い。 造成時の定着が遅い。さび病が発生する。 きび病に強い品種を選ぷ。定着の速い品種を選ぶ。
PR 造成時の定着が速い。遠くから見ると景観がよい。 道東では越冬できない。草の伸びが速い。 草の伸びが遅い品種を選ぶ。
CRF きめの細かい芝生ができる 被度、密度が低下しやすい。造成時の定着が遅い。 芝の被度、密度が高く永続性の高い品種を選ぷ。
CF きめの細かい芝生ができる。 季節によって芝生の隙間が目立つ。 芝の密度が高く永続性の高い品種を選ぶ。
BG 密度の高い美しい芝ができる。損傷回復が早い。 菌核病や夏枯れに弱く、管理に注意が必要となる 菌核病に強く、夏枯れに強い品種を遅ぷ。
Col.BG 密度の高い美しい芝ができる。 菌核病や夏枯れに弱く、管理に注意が必要となる 菌核病に強く、夏枯れに強い品種を遅ぷ。
TF 永続性が高く現境ストレスに強い。損傷回復が早い。 芝生のきめが粗い。刈取新面が白く見える。 草の伸びが遅く、葉幅が狭い品種を選ぶ。

表2.草種混播組み合わせの評価1)
  KB PR CRF CF BG Col.BG
KB   2) × 3)
PR     × ×
CRF      
CF         × ×
BG          
Col.BG            
1)
◎ スタンドの確立が早く永続性の高い均一な芝生を作る。
○ ◎と同じ事が言えるが菌核病の罹病程度の面で問題有り。
△ スタンドの確立が遅い、あるいは芝生がややパッチ状になる問題がありあまり望ましくない。
× スタンドの確立が遅い、あるいは芝生がパッチ状になるので混播には向かない。
2)KB+PRの場合KB:PR=7:3〜9:1の割合が望ましい
3)KB+BG、KB+Col.BGの場合KB:BG又はCol.BG=9:1以下が望ましい

4.成果の活用面と留意点
1.本成績は、道央・道南地域の芝草生産農家や芝生管理者が参考資料として活用できる。

5.残された問題点とその対応
1.造成維持管理法、除草剤使用法についてさらに詳細な検討が必要である。
2.地域に適する草種・品種を選定するため、指導指針等の見直しが必要である。