【指導参考事項】

1995292

成績概要書     (作成平成8年1月)

課題の分類:
研究課題名:量販店との産直流通の実態と産地対応の方向
        (道産野菜の市場外移出の拡大と産地対応の方向)
予算区分:道費
研究期間:平5−7年度
担当科:中央農試経営部流通緩済科
担当者:
協力・分担関係:なし

1.目的

 小売段階の中心となっている量販店を取引相手とする野菜の市場外移出流通並びに価格形成や産地対応の実態を把握し、市場外移出の拡大条件や産地対応のあり方を解明する。

2.方法

 1)量販店の野菜販売、仕入れ動向に関する既存資料の整理、事例聞き取り調査
 2)道内の農協、青果業者に対する市場外取引のアンケート調査及ぴ聞き取り調査
 3)量販店との市場外取引の代表的産地における実態調査

3.結果の概要

1)量販店の野菜販売・仕入れ並びに市場外取引の動向平成3年以降の長期的な不況(バブル崩壊)の中で消費支出が伸び悩み、量販店間の競争が激しくなっており、販売・仕入れ体制の見直しと効率化が進められている。しかし「先取り」や「予約相対」等の市場仕入れの増加に伴って、需給動向と価格形成が分離して価格の乱高下が増幅し、小売り段階の価格安定との矛盾が強くなっている。そのため、「値頃」の安定価格で他店との差別化が図れるような産直取引が増えているが、量販店側おける産直への期待は、良質品の低位安定価格での安定的な供給、差別化商品開発や流通合理化のパートナーたり得る産地探しである。量販店の形態別には自前の集配センターを持つ総合スーパーや生協で産直が増えている。

2)農協、青果業者における移出野菜の市場外取引の動向移出野菜の市場外取引はばれいしょ、たまねぎの加工業者への販売が中心となってきており、依然としてこの傾向が強いが、量販店との市場外取引は増えつつある。出荷側と取引先から類別すると、主にスーパーを取引先とする①産地青果業者、②農協、③生産組合、農家及び④生協を主とする農協の4つに分けられる。量販店との直取引は①が主となっており、葉茎菜類などは農協よりも取引量が多い。農協の取り組みも広がりつつあるが、品目数や取扱い量からみて本格的な取り組みは数農協に過ぎない。取引先はスーパーが多いが、生協を主とするいくつかの農協では栽培法の協議や消費地との交流が行われている。

3)A農協における生協との市場外取引と産地対応の実態

①上川管内の先進的な野菜産地・A農協では生協側からの要請を契機に昭和50年代の後半から直取引を始めている。現在6生協(連合含む)との取引を行っており、品目数は10数品目に及ぴ、数品目は出荷量の20〜30のシェアとなっている。

②取引の方法は作付計画や作況をもとに春・夏に年間の取引契約が交わされ、これを目安に実際には週(金曜日)ごとに翌週のオーダーや価格の取り決めを行っている。代金精算や信用上から形式上はホクレンが仲介しており、契約不履行のペナルティは設けていない。価格水準は市場価格を基準にした週間値決めが主となっているが、貯蔵品目は月決めで、一部の品目には一定の上下限の価格帯が設定されている。

③市場外販売の価格水準はにんじんを除くほとんどの品目が市場向けの販売価格水準よりも高く(図1)、道産品の東京市場価格と比べても10〜100%高くなっており、販売総体の価格上昇に寄与している。また販売総体の価格変動はほとんどの品目が年次別にも月別にも東京市場よりも低くなっており、レタスの事例(図2)などからみても市場外取引が価格安定に果たす役割が大きい。このような市場外取引による価格引上げや価格安定は、良質品の安定供給が基盤になっているが、基幹品目のにんじんの割安な供給によるところも大きい。つまり、にんじんの市場向け販売価格は東京市場価格よりも著しく高いが、市場外販売価格は東京市場並み(パゲージ料を加えると下回る)の割安な価格水準となっている。この他市場外取引の経済的メリットとしては、販売手数料の低減があなどれない大きさとなっている。

④契約量は変動が少ないが、実際の出荷量は生協側の追加オーダー等によって相当大きく変動している。契約量の確保と同時に追加オーダーへの一定の対応が産地の力を示すことになり、契約量は変動を見込んで低めに設定する必要がある。また規格は中心(L)規格に集中しており、ロット確保の制約になると同時に残余の市場販売の規格構成をいびつにしている。出荷のピーク期対応を考慮すると市場外販売割合は低めに設定する必要があろう。以上、産地側が優位性を持った市場外取引の基盤として基幹品目の市場支配力が重要な役割を果たしており、市場外販売の割合を適切に設定して取引先の販売動向に柔軟に対応できる体制が大切である。産地間提携や農協合併などは以上の両面において産地対応を容易にすると考えられる。

4.成果の活用面と留意点

 生協を取引先とする事例が中心となっており、スーパー等の市場外取引の否定面が明らかになっていない点に留意する必要がある。

5.残された問題とその対応

 スーパーを取引先とする農協の市場外流通事例及び青果業者の取引事例の検討