成績概要書(作成平成8年1月)
課題の分類
研究課題名:ばれいしょの少肥・減農薬栽培向け適品種
予算区分:道単
担当科:根釧農試 研究部 馬鈴しょ科
研究期間:平成3-7年度
協力分担関係:

1.目的
1)有機農業研究の一環として窒素肥料の少肥栽培を行っても収量の低下が少なく、品質が向上する品種を検索する。2)ばれいしょ栽培において防除回数が最も多い疫病の、圃場抵抗性品種を利用した減防除栽培法を確立する。

2.方法         
1)少肥栽培。供試材料:「男爵薯」、平成3.4.5.6.7年。「ワセシロ」、同左。「メ
ークイン」、3.4年。「紅丸」、3.4.5年。「コナフブキ」、同左。前半3ヶ年の結果、「ワセシロ」の収量低下が最も少なかったため、後半2ヶ年同熟期の「男爵薯」を対照に2品種で試験した。
処理:窒素肥料 標準肥(8) 1/2N(4) 0N 肥(0)
耕種法:P2O5-K2O-Mgo=20-15-3.5(Kg/ 10a)。推肥 1.5t/10aを秋耕時に施用
区制:分割区法、3反復
2)減防除栽培。供試材料:罹病性品種、抵抗性主働遺伝子を有する品種および圃場抵抗性
と思われる以下の品種。男爵薯、ワセシロ、メークイン、kw83042-4、根育29号、根育27
号、kw85091-24、農林1号、サクラフブキ、マチルダ。前半3ヶ年は有望系統の検索、後
半2ヶ年は目的達成のため対照品種と「マチルダ」と根育29号」。
処理:完全防除(8〜10回)、減防除(2〜5回)、無防除 
区制:一区30株または20株、3反復

3.結界の概要
1)以下に減(1/2N肥)および無窒素(0N 肥)による影響を記す。
①萌芽期・開花期は変わらないが、無窒素により枯凋期が遅延する。茎長は生育初期から
劣る。
②てん粉価・チップスカラー値は向上する。
③減窒素による上いも重をみると早生品種.(男爵薯・ワセシロ)では、ONおよび1/2Nに
より30〜35%および15〜18%減収した。中晩生品種では0Nでほぼ早生品種並に減収
したが、1/2Nでは3〜20%減収し年次間差が大きかった。しかしでん粉価には大差がな
かった。
2)以下に減および無防除による影響を記す。
①疫病の無防除および減防除栽培では罹病程度に大きな品種間差がみられ罹病程度の大き
な品種では40〜70%減収したが、圃場抵抗性の強い品種では減収程度が小さかった。
②疫病強度圃場抵抗性品種(マチルダ)を用いると疫病の無防除栽培で実用栽培が可能である。

表 生育等調査結果(平成3〜7年の平均値)
品種 処理 萌芽期
(月日)
開花期
(月日)
茎長(㎝) 枯凋期
(月日)
蛋白(%)
(7月) (8月)
男爵薯
(5ヶ月)
01/2N
標準
6.17 7.22 21 35 9.29 1.6
6.16 7.2 30 41 9.23 1.6
6.16 7.2 33 46 9.26 1.8
ワセシロ
(5ヶ月)
01/2N
標準
6.16 7.19 30 53 9.29 1.05
6.15 7.19 37 55 9.24 1.5
6.16 7.2 40 63 9.23 1.76

表 収量等調査結果(平成3〜7年め平均値)
品種 処理 いも数
(個/株)
一個重
(g)
上いも重 てん粉価
(%)
てん粉重
(Kg/10a) 標準比(%) (Kg/10a) 標準比(%)
男爵薯
(5ケ年)
01/2N
標準
6.3 94 2,287 65 15.4 324 64
7.4 99 2,865 82 15.5 415 82
8.7 105 3,514 100 15.4 506 100
ワセシロ
(5ケ年)
01/2N
標準
5 143 2,744 70 17.1 437 74
5.7 153 3,328 85 16.8 526 89
6.4 159 3,903 100 16.3 594 100

表 減農薬栽培収量調査結果(平成7年)
品種 処理 一個重
(g)
上いも重
(kg/10a)
標準比
(%)
澱粉価
(%)
疫病罹病葉面積率
8月7日 8月14日 8月21日 8月28日 9月4日 9月11日
農林1号 79 2,585 56 14.3 20 60 80 100  
133 4,588 100 17.3 1 2 5 7 10 12
139 4,603 100 17.7 0 0 0 1 2 3
根育29号 88 4,419 95 15.7 0 0 0 0 1 2
89 4,716 102 15.9 10月23日*
85 4,641 100 15.8 10月26日*
マチルダ 93 4,163 111 15.4 10月20日*
88 4,025 107 15 10月22日*
91 3,761 100 15.7 10月23日*
 ・罹病度(罹病葉面積率)は1以下で推移した。日付は枯凋期を示す。

4.成果の活用面と留意
1)減窒素栽培ではある程度減収するが、てん粉価など品質に大差ないので、減収を覚悟すれば栽培は可能である。
2)「マチルダ」などの強度圃場抵抗性品種を用いれば実用栽培が可能である。そのときの上いも重は完全防除の90%以上は確保できる。

5.残された問題とその対応
シストセンチュウ抵抗性等、複合病虫害抵抗性品種の育成