新品種候補
1．課題の分類(作成平成8年1月)
2．新品種候補系統名　とうもろこし(サイレージ用)「HE9138」
3．場所名 道立十勝農試、北見農試、上川農試、農林水産省北海道農試

4．来歴および試験経過
1)来歴
とうもろこし(サイレージ用)「HE9138」は、フランスのリマグレイン社が育成した
単交配(テント×フリント、構成系統名は不明)の一代雑種である。1994年に0ECD登
録された。
2)導入および試験経過
平成3年、雪印種苗株式会社が導入し、平成4年、場外予備検定試験を行った。平成5〜
7年に、北海道立十勝農試、北見農試および上川農試においてとうもろこし(サイレージ用)品種比較試験を行った。さらに平成6〜7年に忠類村、遼軽町および士別市において同現地試験を行った。また、平成5〜7年には、農水省北海道農試において、すす紋病およびごま葉枯病に対する特性検定試験を行った。

5．特性(標準品種「ヘイゲンミノリ」(早生の晩))
1)熟期
絹糸抽出期は「ヘイゲンミノリ」並みで、「キタアサヒ」並みか1〜2日早い。収穫時熟
度は「ヘイゲンミノリ」および「キタアサヒ」並みである。総体の乾物率は「ヘイゲンミノリ」並みで「キタアサヒ」よりやや高い。熟期は早生の晩に属する。HRMは136日である。
2)耐倒伏性
「ヘイゲンミノリ」および「キタアサヒ」よりやや強い。
3)発芽および初期生育
発芽は「ヘイゲンミノリ」並みかやや遅く、「キタアサヒ」並みである。初期生育は「ヘ
イゲンミノリ」および「キタアサヒ」並みである。
4)収量性および乾物特性
乾総重およびTDN収量は「ヘイゲンミノリ」より多く、「キタアサヒ」と比較しても多
い。乾物中TDN割合は「ヘイゲンミノリ」並みで、「キタアサヒ」よりやや高い。
5)形態特性
桿長は「ヘイゲンミノリ」よりやや高く、「キタアサヒ」並みである。着雌穂高は「ヘイ
ゲンミノリ」より高く、「キタアサヒ」よりやや低い。
6)耐病性
すす紋病抵抗性は「ダイヘイゲン」並みかやや強く、「ヘイゲンミノリ」よりやや弱い。
ごま葉枯病抵抗性は「ダイヘイグン」および「ヘイゲンミノリ」より強い。

6.試験成績
1)病害抵抗性(特性検定試験、平成5〜7年北海道農試)
品種・系統名 項目年次 すす紋病 ごま葉枯病
H5.9.20 H6.9.3 H7.9.18 H5.8.30 H6.8.23
HE9138   2.7 3.5 3 1.7 2.7
ダイヘイゲン 3.3 3.3 3.2 3.8 3.8
ヘイゲンミノリ 2.2 3.3 2.8 2.7 3
ディア 2.2 4.3 3 2.7 3
注)Elliot&Jenkinsの指数(0:無〜5:甚)による。

2)形態調査(平成5〜7年)
試験場所 十勝農試 北見農試 上川農試
形質/品種名 H9138 ヘイゲンミノリ キタアサヒ HE9138 ヘイゲンミノリ キタアサヒ HE9138 ヘイゲンミノリ キタアサヒ
稈長(㎝) 249 237 257 227 216 229 243 228 241
着雌穂高(㎝) 102 89 112 95 79 101 101 92 110

3)生育・収量調査
試験場所 品種・
系統名		 発芽期
(月日)		 初期生育 絹糸
抽出期
(月日)		 倒伏(%) 収穫時熟度 不稔個
体割合%		 収量(㎏/10a) 総体乾
物率%		 乾雌穂
重割合%		 乾物中
TDM%
乾総重 TDN3〕 同左比%
十勝農試 H9138 5.25 1.7 8.9 0.3 糊後-黄初 0.6 1348 962 115 26.2 48.1 71.1
ヘイケ'ンミノリ 5.24 1.7 8.8 0.1 糊後-黄初 0.6 1157 839 100 25.5 52.4 72.2
キタアサヒ 5.25 1.7 8.9 2.3 糊後-黄初 2.2 1278 899 107 25.5 44.2 70
デイア 5.26 2.4 8.7 0 糊後-黄初 0 1234 885 105 26.1 49.7 71.5
北見農試 H9138 6.4 2.7 8.16 0 糊中 1.1 1423 1003 116 26 44.6 70.1
ヘイゲンミノリ 6.3 1.9 8.15 3.3 糊中 4.3 1219 866 100 26.8 47.2 70.9
キタアサヒ 6.3 2.2 8.16 0.3 糊中 7.2 1249 874 101 25.1 42.7 69.6
デイア 6.4 2.4 8.14 1.9 糊中 0 1309 928 107 25.5 46.4 70.6
上川農試
(士別)		 H9138 5.3 2.8 8.9 0 黄中-後 0 1493 1070 125 29.7 50.3 71.7
ヘイゲンミノリ 5.28 2.8 8.8 0 糊後-黄初 3.8 1233 855 100 25.7 41.5 69.3
キタアサヒ 5.29 2.8 8.1 0 黄中 8.8 1332 924 108 26.6 41.6 69.4
デイア 6.2 3.5 8.6 0 糊後 0 1367 955 112 26.4 43.5 69.9
上川農試
(比布)		 E9138 5.28 2.2 7.26 0 黄後 1.7 1844 1326 120 29.8 51.5 72
ヘイゲンミノリ 5.28 2.4 7.26 1.9 黄後 2.3 1560 1106 100 27.1 48 71.1
キタアサヒ 5.28 2.4 7.26 3.6 黄後 5.3 1572 1116 101 28.9 48.3 71.1
デイア 5.28 2.4 7.25 2.3 黄中-後 0 1660 1173 106 26.9 46.6 70.8
忠類村 H9138 6.4 1.7 8.14 0 糊後 0.9 1321 937 112 27.5 47 70.6
ヘイゲンミノリ 6.4 1.2 8.14 2.9 糊後 5.9 1181 839 100 27.9 47.4 70.9
キタアサヒ 6.4 1.4 8.16 6.2 糊後 2.5 1293 907 108 28.3 4.3 70.1
デイア 6.5 1.6 8.13 2 糊後 0.9 1327 950 113 28.1 48.7 71.3
遠軽町 E9138 6.5 - 8.8 0 黄中 5 1478 1027 113 24.7 42 69.5
ヘイゲンミノリ 6.5 - 8.7 0 黄中 15 1300 911 100 24.8 44.4 70.1
キタアサヒ 6.5 - 8.8 0 黄初 10 1341 914 100 24.7 37.2 68.2
デイア 6.6 - 8.6 0 黄初 3.8 1322 927 102 24.3 44.5 70.1
士別市 E9138 6.5 2 8.4 3.8 黄初-中 0 1546 1100 113 26.4 48.6 71.2
ヘイゲンミノリ 6.5 2 8.5 12.3 黄中-後 12.5 1417 970 100 24.3 39.2 68.8
キタアサヒ 6.5 2 8.6 44.6 黄初-中 10 1515 1042 107 25.1 39.5 68.8
注１)試験年次は、十勝農試および北見農試は平成5〜7年、上川農試(士別)は平成5年、上川農試(比布)は平成6〜7年、忠類村、遠軽町および士別市は平成6〜7年である。
2)初期生育は指数(1:良〜5:否)で示す。
3)TDNの算出は、新得方式(TDN=乾茎葉重x0,582+乾雌穂重xO.85)による。
4)上川農試の「ヘイゲンミノリ」、「テ'イア」の収穫期は、「E9138」、「キタアサヒ」と異なる。

7．配布しうる種子量
平成8年度40t
平成9年度以降60t

8．普及対象地域および普及見込み面積
十勝中部、網走内陸および道央北部地域
2700ha